正統派イケメン
彼は適度にスーツを着崩しているが、
それが上手く堅苦しさをなくしていて、
由野さんとは別種類のイケメンだった。
由野さんが陰のあるミステリアスイケメンなら、
彼は正当派イケメンといったところだろうか。
「一人です」
「では、
カウンターとテーブルのどちらになさいますか?」
さきほど、一組の客が帰ったばかりで、
どちらにも対応ができる。
「カウンターで、お願いします」
彼はどこか、疲れているように見えた。
何か、嫌なことでもあったのだろうか。
そういうときにこそ、彼女の料理を食べるべきだ。
昨日、賄いを食べさせてもらったが、
こちらも笑顔になるほど美味しかった。
「それでは、お好きな場所にお座りください」
そう促すと彼は、
右端の壁に寄りかかるようにして腰掛けた。
「メニューをどうぞ。
ご注文が決まりましたら、またお呼びください」
そう言って、僕は一端彼から離れた。
また別のお客が会計を済ませたので、
後片付けに向かったんだ。
それから間もなく声を掛けられ、
彼はハンバーグ定食を注文した。
注文がくるまでの間、彼は何をするでもなく、
じっと座って待っていた。
定食が出来上がり、それを運ぶと、
彼の表情が少しだけ和らいだ。
食べ物は気持ちを軽くしてくれる。
それに、由野さんの料理は
匂いだけでもお腹が空いてしまう。
「ぐぅぅう」
本当にお腹の虫が鳴ってしまった。
お客がまだいるのに、恥ずかしい。
すると、それに気づいた
由野さんが声をかけてくれた。
「佐藤、腹が空いているなら、
休憩を取ってもいいぞ。
今、そんなに人もいないから大丈夫だ。
もう賄いは用意した方がいいか?」
「はい、お願いします」




