「彼女」2
ふと単純な疑問が生じた。
単な好奇心が口から零れ落ちただけの言葉だったんだ。
「由野さんって、歳はいくつなんですか?」
僕はけして、
誘導尋問なんて大層なことを行おうとしたのではない。
由野さんが口を滑らせて、ボロ、
『本性』それもほんの一部の姿を見せたにすぎないんだ。
「失礼だな、
女性に歳を訊いてはいけないと習わなかったのか……あ」
「え」
「…………」
寸秒の沈黙が流れ、そして。
「ぅぇええええ!?」
「し、失礼だな。
私はれっきとした女性だぞ」
彼、もとい、由野さんは開き直り出した。
確かに、女性を男性だと認識していて、
女性だと言われて驚くのは
失礼だというのは分かっている。
だがしかし、
彼女の場合はそれに適用されないはずだ。
「だって、由野さん、
思いっ切り男装してるじゃないですか!」
中性的だとか、イケメンだとかそういう以前に、
彼は男装をしている。
男性なら普通の店員ではあるが、女性なら、
ギャルソンを着ているのは男装になるだろう。
それに……密かに彼女の
シャツのボタン付近に目を当ててみる。
うん、仕方ないよなぁ。
「おい佐藤、今、
とても失礼なことを考えていなかったか。
それも、侮辱に値する程度のことを。
まあいい、
どれだけ言っても納得しなさそうだからな。
少し待っていろ、
その間はテーブルとカウンターを
アルコールスプレーで除菌しておいてくれ。
すぐに戻ってくる」
スプレーボトルと布巾を手渡すと、
彼女は颯爽と店の奥に姿を眩ました。
よし、仕事するか。
約五分後、
カウンターとテーブルの除菌を終えた頃に
彼女は別人のような姿で店内に戻ってきた。
何なら、同一人物かさえも疑わしい。
「待たせたな、佐藤」
しかし、その彼女から滲み出る
爽やかイケメンなオーラと、
透徹な声は確かに
由野さんであることを保証してくれた。




