暇
昼食と結果報告の為に店を訪れると、
開口一番に、君は暇なのか、と訊かれた。
「まあ部活もバイトもやってないので、
暇と言えば暇ですね。
それよりも、
店長さんのお陰でテストで
いつもよりいい点が取れましたよ!
ありがとうございます」
けれど彼はそんなことには
興味もなさげに曖昧な返事をする。
「そうか、良かったな」
「ところで君はこれからも
店に通い続けるつもりなのか?」
それは遠回しに長居することを
揶揄しているんだろうか。
彼の真意は分からないまま、答えるしかなかった。
「はい、そうですね。
この店が気に入りましたから」
「そんなに通い続けていると金が底を付くだろう」
「大丈夫ですよ、ちゃんとやりくりしてます」
「いや、でも――」
「そんなに」
長居されるのが迷惑ですか?
そう言おうとしたはずの僕の声は、
彼の言葉でかき消されてしまう。
「そこまでこの店が好きなら、ここで働くといい。
ここでバイトとして働くつもりはないか?」
なんて、不器用な人なんだろう。
僕の答えなんて決まりきっている。
「はい、喜んで!」
そして、形式的に一応は
履歴書のようなものを書かされた。
その他に、
印鑑や親の同意などが必要になってくるので、
正式には明日から採用らしい。
僕の親なら、反対はしないと思うけれど。
社会勉強にもなるし、
学費の何割か貯金しておけと言われそうだ。
家にその話を持ち帰ると、
両親はやはり賛成してくれた。
いっそのこと、
家事全般こなせるようになってこいとまで
言われてしまった。
僕の予想をある意味上回った。
母は強い、色んな意味で。
翌七月十四日、僕は印鑑の代わりに、
シャチハタを持参していった。
印鑑を無くすと大変だから、
シヤチハタを持って行きなさいと言われたんだ。
バイトにはそれくらいのもので十分らしい。
そして、バイトの採用の紙に捺印し、
本採用となった。




