その手を差し伸べられたなら。
彼らとは完全に分かり合えたとは言えないだろう。
それでも、
公衆の面前で話をつけることによって
抑止効果がはたらくだろう。
彼らが暗い道を歩くことは一応阻止できた。
そして、僕には新たな友達ができたんだ。
今回も危機に乗り込み、助けてくれた鈴木紫苑くん。
それと、彼の幼なじみで、
彼の情報源である怖いクラスメートくんもとい、
宮田浩輔くん。
鈴木くんが彼を紹介してくれたんだ。
今はゆっくりと誼を結んでいる最中である。
一連の出来事が終結し、
僕は軽やかな気分で帰路に就いた。
部屋に足を踏み入れると、
――ここまで言わずもがなではあるが、
一応言葉にしておく。
鉢植えに実が二つ成っていた。
多分、甘夏だろう。
ナツダイダイの改良種、
別名、甘夏蜜柑、甘夏柑という。
オレンジ色も、白色の花も、
同じ種類の実をつけていた。
明日、この鉢を店に持って行こう。
けれど、学校に持って行っては、
逐一管理ができないし、
無くしてしまう……のは嫌だった。
僕に勇気を与えてくれて、
僕の望む道へと導いてくれた
大切な種と鉢植えだから。
よし、一度家に帰ってから
店に向かうことにしよう。
そうすればお金も余裕を持たせた
額を持っていける。
二つもあるから、彼に調理してもらおうかな。
――自分を知るにはいいものだよ。
彼はそう言っていたから。
今日まで一連の出来事を通じて思うんだ、
対人関係を築くにはまず、
自分のことを知るべきだって。
自身を知らずして、他人の痛みは分かるまい。
僕は少しでもマシな人間になりたい。
目の前の現実から逃げずに立ち向かうんだ、
大切なものを失わない為に。
悩んでいたら、相談に乗ってあげよう。
疲れているように見えたら、励ましてあげる。
そうして本当に困っているときに、
先の道を照らしてあげるんだ。
大事なものを見失わない為に、
思い病んでしまわぬように、
もう戻れなくなってしまう前に、
その手を差し伸べられたなら。




