『いじめ』なんて格好悪いこと
「ねぇ」
たった一言で彼らを振り向かせ、その後は、
「黒田くん、水山くん、高野くん、
ちょっと話があるんだけど、いい?」
これだけのことを言うのに
多くの酸素を消費してしまった、
大事なことはまだ始まってすらいないのに。
既に精神力が半分を切っていそうだ、
こんな状態でこの先やっていけるのかと
途方に暮れそうになるが、
ここで諦めたら元も子もない。
ただの意気地なしに逆戻りだ。
今は彼らの返答を待つほかない。
彼らは少しして、お互いの顔を見合わせ、
苦渋の表情を浮かべてみせる。
視線で言葉を交わし終えると、
リーダー格である黒田くんから返事の言葉が発された。
「わかった」
たった一言の中に
どんな意味が込められたのかは知り得ない。
ただ、歓迎されたものではないことだけは確かだ。
だからこそ、最初に一番嫌なことを言うね。
こんなことを言うのは、緊張してしまうよ。
「みんなに、『いじめ』を止めてほしいんだ。
そんな卑怯で外道なことはもう終わりにしようよ」
途端に、彼らの僕を見る目が変わった。
罪悪感に満ちた目から、
怒りを宿している目に移る。
これでいい、
怒りの矛先は僕に向くべきだったんだ。
「ずっとみんなのやってることは
間違ってるって分かってたのに、
言えなくてごめん。
それと、あのとき声をかけてくれたこと、
ずっと感謝してるよ、すごく嬉しかった。
だから、そんなみんなに
『いじめ』なんて格好悪いこと、
してほしくないんだ」
静まり返る空気の中、黒田くんだけが声を発する。




