オレンジ色の花
つまりこの瓶を僕に貸してくれたのは、
彼の利益の為だったというわけだ。
それでも助けられたことには変わらないし、
彼のつくった美味しいお菓子が食べられるならいいや。
「はい、ありがとうございます。
お言葉に甘えて、いただきます」
合掌の合図と共に、
僕はマドレーヌを手に取り、思い切りかぶりつく。
「うぅん、美味しいっ!」
栗のほのかな甘さとマドレーヌ
全体から広がる油脂の加減が丁度いい。
しっとりねっとりした食感も美味しさの一つだ。
あまりにも美味しかったもので、
皿に乗せられていた四つのマドレーヌをぺろり、
と平らげてしまう。
彼はそんな僕のいい食べっぷりを見て、
茶化してきた。
「君は、甘いものが苦手だったんじゃ、
なかったのかい?」
彼は口元を覆い、必死に笑いを噛み殺していた。
それから暫くして、僕は店を後にする。
家に帰ると、今夜のおかずは鶏のからあげで、
僕はご飯を二杯もおかわりした。
そのせいで、風呂から上がるまでの間、
胃の膨張感に襲われていた。
ようやくそれも治まり、部屋に戻ると、
窓辺のある変化に視線が吸い寄せられる。
胸を高鳴らせて、鉢に顔を近づけた。
「あ、やっぱり。咲いてる……!」
オレンジ色の花がそっと咲いている。
周りの葉を邪魔することなく、
寧ろ、背景と一体化するように
優しく笑っていた。
このとき僕は、
自分の知らないうちに
蕾がついていたことを知ったんだ。
その一輪の花を愛でていると、
もう一つ、小さな蕾がついていることに気づいた。
今日見た液体の色は琥珀色をしていた、
つまり、今咲いている花の方だろう。
だとするなら、これは一体。
どんな思いを秘めた花なのかな。
週明けの月曜日に、ちゃんとけじめをつけよう。
いじめも終わらせて、
彼らとのいざこざも終わらせてしまうんだ。
だってこれは、僕と彼らとの問題なんだから。
六月十三日、つまるところ、翌週の月曜日のこと。
僕は本音をぶちまけた。
昼休憩、クラスメートの多くの視線が集まる中、
僕は彼らに声を掛ける。




