一番に望むこと
背中越しに彼の照れ隠しが伝わってきて、
僕は足取りを軽くして、帰路に就いた。
彼が電車通学だからと、駅まで一緒に帰り、
改札口で彼を見送った。
手を振ってみると、
僅かながら彼も手を振り返してくれたのが、
いたく喜ばしかった。
しかしながら、
僕はあることが気にかかっていたんだ。
彼らのあの表情を見て、色々と思うところがあった。
それと、思い出したことも。
悩みの種を解決するべく、
僕はまたあの店へ自転車を走らせる。
例に漏れず、
僕はこの日も店の扉をノックして、入店した。
当然のように、
右から二番目の席にどっしりと腰掛ける。
すると彼は、
僕の心の内を覗くように、優しく囁きかけてくれて。
「どうした、何かあったのか?」
僕が話を聞いてほしそうな
雰囲気を醸していたかは兎も角、置いておくとする。
待ってましたと言わんばかりに、
僕は今日の一連の出来事をざっくりと説明し、
さらに、彼らについて
気になったことを話してみた。
どんな当意即妙な返答が為されるかと思えば、
これまた至極抽象的な返答だった。
しかし、彼が最初に会ったときに
言っていたことからすれば、
何もおかしいことはない。
彼は、願いを叶えることの手助けならできる、
と言い、それに、
何か言動について強要されることはなかった。
どれだけ酷い言葉を連ねても、
君自身で考えるべきだと、大切なことは何か。
――と。
一途に、僕に考えさせることだけを望んで、
意志を尊重し続けてきたんだ。
「それは君が今後どうしたいかだな。
君の意志如何で、答えも変わってくる。
君が一番に望むことはなんだ?」




