何も
結局彼らは何も変わっていない、
僕がたった一回いじめを妨害したところで何も、だ。
心なしか彼らの言動に
落胆してしまっている自分がいる。
分かっていて、知っていたはずなのに、
どうして今さらショックを受けているんだろう。
そんな奴らじゃない、
そんな人たちじゃなかったと思いたかったんだ。
いや、思っていたんだ。だからこそ僕は、
「……イヤだ」
「んぁああ! ?」
一人の怒号が狭いトイレ内に五月蝿く響き渡る。
その雰囲気の荒さに思わず、
身体を震わせてしまうが、
ガタガタと震える右腕を左手で抑えつけ、
怒りに狂う彼の目を見据えて、またも言う。
「そんなことしない、しないよ。
僕は鈴木くんをいじめたりなんかしないし、
彼と友達になるんだ」
「はぁあ?」
何言っちゃってんの、
とでも言わんばかりに嘲りの表情で僕を見る彼、
それでも僕は構わない。
「だから、嫌だよ」
それだけ言い残し、トイレを後にしようとするが、
それは監視役の彼が許さない。
一触即発の雰囲気の中、
どうやってこの場から
逃げ出そうかと思案に耽っていると、
助け船が降りてきた。
「うぉっ」
扉前に立っていた一人が扉に体当たりされ、
出口に光が差す。
そこに現れた救世主は、
怖いクラスメートくんだった。
勢いよく扉を開けたらしい、
その勢いで一人は吹っ飛ばされたようだが、
非力だなあ。
僕はその隙に、ひょいと脱兎し、
すれ違い様怖いクラスメートくんに小さく会釈した。
彼のお陰でなんとかなった。
この後の報復を考えると恐ろしいが、
そんなことよりも今無事だったことに感謝だ。
これ以降、暫くの間、無視が続いたが、
僕はそれよりも気がかりがあった。
鈴木くんは大丈夫だろうか。
僕の気がかりは見事的中し、
金曜日、僕はその現場にまたもや直面することとなった。




