根本的原因
僕は彼の話を必死に拾おうとしたが、
複雑なうえにやや抽象的な話であった故、
途中で思考回路がショートしてしまった。
頭を抱えている僕に気づき、
彼は話の論点を戻してくれた。
「すまないね。
つい、説教じみたことを言ってしまった。
これでは、
さきほど言ったことと矛盾してしまう」
自嘲気味に彼はククッと笑い声を上げた。
それはそこはかとなく
痛々しさを感じさせるものだった。
「ヒント、だったな
――君には、その『いじめ』の
根本的原因が分かっていないようだ。
根本的原因について、
一度じっくり考えてみるといい。
いや、考えなくとも、
答えは向こうからやってくるかもしれないな。
まあまずは、
君はいじめの原因について知るべきだ。
教えられるのはこれくらいかな。
もう日も暮れてきた頃だ、そろそろ帰りなさい」
彼はそう言って、僕を店から追い出そうとする。
「え、でも、まだお金払ってないですし」
「あれはどちらもサービスで提供したものだ、
代金は取らないよ。
さあ、だから帰るんだ」
そう言われても、
一円も支払わずに店を後にするのは心苦しい。
また、「ただほど怖いものはない」という
日本人特有の考えのせいでもある。
僕も引かず、代金を払うと駄々をこねていると、
僕の執拗さに負けた(というより呆れた)
彼が店の奥から可愛らしい包みを取り出してきて、
僕に差し出してきた。
「これは甘さが控えめな、
ハーブと紅茶など何種類かのクッキーの詰め合わせだ。
これを売ってやるから、代金はこれだけでいい」
僕は要求を受け入れてもらえ、
さらに彼の美味しいお菓子がまた食べられると、
気を好くした。
「はい! いくらですか?」
現金なガキである。
「二百円だ」
財布から百円を二枚取り出し、彼の手に乗せる。
「はい、どうぞ」
「毎度あり」




