雨宿り
怪しい色をしていた雲から、
滴がポツポツと零れ始めたかと思うと、
篠突く雨が降れり、僕の道を閉ざした。
僕の声をかき消してくれた雨は、
そのことを反省するどころか、
もういっそ、開き直る勢いで地面を叩きつけていく。
行き場のなくなった僕の言葉と、
それを待っていた彼の二つの陰
――晴れてないから、陰は見えないけれど。
とり敢えずは店の軒下に一時避難することにしたけれど、
どうするべきだろうかこの状況は。
これ以上雨が強くならないうちに
すぐにでも帰るべきだろうが、
生憎僕は今、傘を持ち合わせていなかった。
今の僕に選択肢は一つしかない。
彼の誘いを断り、帰ることだ。
けれど、一度雨によって
タイミングを逃してしまったため、
切り出しにくいものがある。
そんな皮肉をこめて空を睨みつけてみるが、
相変わらず雨は降り続ける。
それどころか、
さっきよりも勢いを増して降ってきた。
きっと彼らはしたり顔でこの僕を見下ろしながら、
嘲笑しているに違いない。
断る勇気もなく、
度胸もなくて情けない僕のことを。
そうして僕がああだ、
こうだと悩んでいるうちに、
彼は先に答えを出したようだった。
「大丈夫かい、よければ雨宿りしていってくれ。
勿論、お代は取らないから安心してくれていい」
大人な彼には僕の内心なんかお見通しらしい。
なんて、僕の言動から察すれば、
簡単に予測できそうなものなのか。
大人な対応をしてくれた彼に
僕はなんて返事をするべきか、また悩み込む。
選択肢は二つしかないから、悩むというよりは、
迷っていると言った方が近い。
断るか、好意を受け入れるか、のどちらかしかない
――あれ、なんかデジャヴのような……?
いや、気にしたら負けだ、
何に負けるのかは分からないが。
しかし、無償で他人の好意に
甘えるということには抵抗がある。
『ただほど怖いものはない』と昔の人が言ったように、
本当に「ただ」で済むはずがないだろう。
「ただ」にはリスクが付き物なのだから。




