清涼感のある香り
「はい、どうぞ。開いていますよ」
扉の向こうから清々しい彼の声が届く。
歓迎されている気分になる爽やかな声音に、
僕は扉を勢いよく開け、
にっこり笑顔で言ってみせる。
「こんにちはっ!」
「!? ……やあ、こんにちは。
また来たんだね。
おいで、
今日も暑いからマスカットティーを淹れてやろう」
慣れた様子で彼はカウンターに来るよう、促す。
まだ二度目なんだけれどな、
店に入ったのはこれで二度目だ。
しかし彼は、
僕が相談を持ち込んできたことにも
気づいているんではないだろうか。
毅然たる彼の態度は僕にそんなことを思わせる。
カウンターの右端から二番目の椅子を引き、
そこに腰掛ける。
マスカットティーを待ちながら、
どんな風に話を切りだそう、
どんな返答が帰ってくるかと胸を躍らせていた。
「お待たせ、今日はこれも食べてみてくれ。
桃のゼリーだ。
試作品なんだ、感想を聞いてみたい」
トレイに乗せられたそれは、
マスカットティーの隣で可憐な色を魅せている。
普通に可愛らしくて、
女子が好きそうなスイーツだった。
「ありがとうございます。
い、いただきます」
甘いものは苦手って言ったことあるから、
甘さは控えめだと思うけど、ちょっと怖い。
感想が欲しいとのことだし、
前にお世話になったうえに、
これからさらに迷惑かけるから、
これぐらいのことはしないといけない。
気合いを入れて、スプーンでそれを掬い取り、口元に運ぶ。
口に近づけてみると、
僅かに清涼感のある香りが鼻先を潜った。
もしかしてこれは……
ふとあるものが思い浮かんだ僕は、
それを口に含む。
「あ、やっぱり。
これ、ちょっとだけですけど、
ミント入ってますよね。
すっきりした甘さで美味しいです」
彼はぱあぁっと笑顔を咲かせ、
カウンターから乗り出す勢いで熱弁する。




