「鈴木くん!」
火曜日から金曜日までの毎日、
僕は鈴木くんに挨拶をしている。
そうするだけでは、
何が変わるというわけでもないけれど、
意思表示と願掛けを掛けていた。
最近彼らは鈴木くんに構っている様子もなく、
彼へのいじめに飽きたのだと思い込んでいたんだ。
しかし、その考えは誤りだった。
その証拠に、
彼らは僕すらも知らないところで彼を執拗に、
陰湿にいじめを続けていた。
そして翌週、テスト四日目のこと。
僕はロッカーに翌日のテスト科目の
教科書類を置き忘れてしまった。
それを取りに行き、
ついでにトイレを済ませようと
一階の男子トイレに立ち寄ったんだ。
そこで、彼らが鈴木くんを押さえつけて
嫌がらせをしようとしている現場を垣間見てしまった。
彼は一人に両腕を掴まれ、
もう一人には足を押さえつけられている。
そして、もう一人が彼の前にしゃがみ込み、
今にも手を掛けようとしていた。
僕が今一番為すべきことは別のことなんだけども、
考えずにはいられないものがあった。
この構図はどう見ても、
外道な男がか弱い女子を強姦しようとしている
ようにしか見えなかった。
僕が言うのもおかしいかもしれないが、
彼はしなやかな体のラインで、
ほっそりした体つきだから、
座った状態のシルエットだけなら女の子にも見える。
と、そんなことはどうでもよかった、
何よりも先に、彼を助けるべきだ。
再び、引き戸の取っ手に手をかける。
扉を開けるなり、僕は彼の元へ駆け寄った。
「鈴木くん!」
声をかけると、彼は朧げな目で僕を捉える。
僕の存在に気づいた彼は目を見張り、
こちらを見つめてきた。
「佐藤……?」
僕がここにいることに驚いているのだろう、
無理もない。
以前の僕は陰からしか
助けられない弱虫だったんだ。
正面からすっ飛んでくるなんて、
思いもしなかったはずだ。
当然だよ、
僕だってまだ身体が震えているから。




