ギャルソンを着た彼
心配なのか、好奇心なのか、
僕は正面の窓からこっそり顔を覗かせた。
思った通り店内には客は一人もいないようだ、
けれど店員らしき人物を一人確認する。
ギャルソンを着た彼は、
食器を拭いている最中だった。
外から覗き見ている最中だというのも忘れて、
僕はうっかり彼に見とれてしまっていた。
中性的な顔立ちとしなやかな
手の動きは慣れたものだったが、
その動作はどこか艶めかしい。
男性だと認識しているはずなのに、
それを疑ってしまうような艶っぽい雰囲気を纏っている。
観察する如く、
あまりに長い間見つめてしまっていたせいか、
店内にいる彼と目が合ってしまう。
「あっ」
咄嗟に顔ごと逸らすが、もう遅い。
彼は僕を見るなり、扉の方へ駆けていく。
内側から扉が開かれた店内は素朴な造りになっていた。
テーブルが五つ、
それぞれに椅子が三つずつ配置されている、
何の変哲もない喫茶店のようだ。
けれど、その何でもないような空間は
懐かしさをそこはかとなく感じさせるものだった。
彼の声がなければ、
そのまま足を踏み入れていたかもしれないくらいに。
「よければ入ってみないかい?」
言葉遣いが男らしい割に、
声は想像していたよりも高く、優しい声音をしていた。
そして僕はここであることに気づく。
そういや今日は財布、
忘れていたんだった……あぁっ。
あんなにガン見しておいて、
財布忘れていることに気づかないとか間抜けだ。
とり敢えず、断ろう。
「ご、ごめ――」




