「おにい、ありがとね」
「おにい、ありがとね」
頬をほんのり桃色に色づけながら、
はにかみ笑いを浮かべている。
さっきの作ったような笑みと違い、
少し照れくさそうに呟くような声だった。
あざといから天然に切り替わり、
僕の脳はついて行かない。
全くこれだから憎めないと思う反面、
なずはやっぱり可愛いからと
甘やかしてしまうシスコンの兄の姿がそこにはあった。
リビングに入るなり、
母に小言を言われそうになったところを、
なずがお土産を用いて、上手くフォローしてくれた。
さすが妹は母の扱いが上手いようだ。
よし、また今度お菓子を買ってきてやろう、
おそらくこういうところがシスコンなんだろうな。
自覚しながらもやめられないのは、
なずの魔性の妹力のせいだと思っておこう。
そうしてなんとか夕食にありつけ、
食後のデザートとしてマフィンを食べることにした。
「そういや父さんは?」
玄関に靴は見当たらなかったし、
食事のときもいなかった。
それより、
今さらになって気づいたことに驚きを感じる。
父の存在感うっす。
僕の問いに、母は溜息を吐きながら答えた。
「残業だって。
まあ多分、飲み会でしょうけど」
呆れたように愚痴を零す母は、
大方その証拠を何度か目撃しているのだろう。
「お父さんに連絡しておくね」
隣でなずがスマホを取り出し、
父へLINKの文章を打っている。
お父さん、早く帰ってきてね(絵文字)、
思春期目前の我が娘にこんな可愛い
LINKを送られたら堪らないだろう。
即刻帰宅するかもしれない、土産を片手に。
それに、
「お父さん、何買ってきてくれるかなぁ」




