繋いでいたかったから
ころころしたそれは丸くて、とても軽量で、
透き通るような夕日の色をしていた。
大きさは梅干しの種ぐらいなのに、
種というよりはビー玉みたいだ。
僕が種をまじまじ観察していると、
彼はある問いかけをしてくる。
「ちなみに君、鉢と土は持っているかい?」
唐突な問いに戸惑いながらも僕は反応を返す。
「いいえ、持ってませんけど……」
「それなら、うちのものを買うといい。
種を育てるには持ってこいのものが揃っている。
華美ではないが、
部屋に置きやすい素朴なデザインだ。
種とセットなら安くしよう」
なんとなく、そんな予感はしていた。
この人、商売熱心だなあ。
会話の主導権を握られたせいか、
自分のリズムを狂わされてしまう。
そう聞けば、嫌なように聞こえるかもしれない。
「はい。
どこにあるんですか、見せてください」
ただ、僕はもう少し、
この人と会話をしていたいと思うんだ。
「あ、あぁ。
分かった、こっちに来い。
色々あるからじっくり選ぶといい」
僕のいきなりな積極性に驚いたのか、
引き気味にも見えるが、微笑んでいた。
その笑顔に魅せられて、自然と僕の心も和んだ。
それから彼は熱心に僕の鉢選びに付き合ってくれて、
概ね二十分かけて鉢を選んだ。
鳥と桜がモチーフの雅なデザインのもので、
白と緑とピンクが美しい色合いを見せている。
――と彼は熱弁してくれた。
他にもいいものはあったけれど、
この鉢は彼と雰囲気が似ていると思えたんだ。
この縁を忘れないよう、繋いでいたかったから。
そんなことは口にはできないけれど。
大人な彼に僕の内情を悟られないように、
質問を投げかけてみる。
「そう言えば、
実がなったら食べられるんですか?」
彼は一瞬、
渋い顔をしたような気がしたけれど、
ぱっと表情を作り替え、笑って見せた。
「食べられるが、店に一つか二つ、
返すわけだし、足りないと思うぞ。
もし食べるなら、うちに持ってこい、
格安で調理してやるから。
くれぐれも、勝手に食べるんじゃないぞ」
冗談めかしにそういう彼の言葉が胸に残っていた。




