腐らせるも咲かせるも君次第
意志が揺れないように、
僕は彼の目を見据える。
彼は僕の覚悟を確かめるように、
二秒間、僕の目を見つめてきた。
こんな顔立ちの整った人に
見つめられると緊張してしまう、
中性的な美形ならなおさらだ。
しかしここで引いては自分自身に
「意気地なし」のレッテルを貼ってしまう。
だから僕も同じように彼を見つめ返した。
瞳に映る自身の姿を確かめるほどに、見据えた。
彼は、ふぅっと息を吐くと、
さきほどまでの突き刺すような緊迫した表情から、
ほどよく気の抜けた柔い表情に変わった。
「よし、それならお代の支払い方と
種の扱い方について説明するぞ。
種一つで、五百円だ。
種が育ち、実がなれば二つ、種でもいい、
それを最低一つは返却してほしい。
もし育たなかった場合は料金は返さない。
けれど、実を二つ返した場合には料金は返金する」
それで商売は成り立つのかと考えてしまうけれど、
今は他人のことより自分のことを優先すべきだ。
「何が育つんですか?」
「それは君次第だよ。
苺や、桃、胡桃、ブルーベリーなど果物が多い。
腐らせるも咲かせるも君次第、怖くなったかな?」
何度も彼は僕を脅かすようなことを口にする。
けれど、それに臆したりはしない。
「いいえ。
これ五百円です、どうぞ」
僕は鞄の中からすぐに一枚の硬貨を取り出し、差し出す。
「毎度あり。
それじゃあ種を、どうぞ」
彼が大きな瓶から『種』と呼ばれるものを
一粒取り出し、僕の手のひらにそっと乗せられる。
「ありがとうございます」




