『心の種』
ああそうだ、
最初はただそれだけだったんだね。
思いを口にすると、
眠っていた感情が呼び起こされていく。
「つまり君は、勇気がほしいんだな?」
彼は僕の言葉の中から思いを拾って、
端的に心情を指摘する。
僕は驚くくらい素直に思いを語っていく。
「はい、そうです。
周りの機嫌を窺ってばかりいては、
ダメなんです。
しっかり、
自分の意見を口にしなくちゃいけないですから」
彼はそっと、僕に手を差し伸べてくれる。
甘やかしすぎはしない言葉に、
僕は耳を傾けて。
「そうか……
君の願いを直接叶えることはできないが、
その手助けはできる。
どうする?
選ぶも選ばないも君次第だよ」
願いを叶える「手助け」だと言った
その言葉に心惹かれた。
他人にその全てを委ねて叶えてしまえば、
願いを叶えた責任も、成功も、
自分のものではないように思えるから、
願いは自分で叶えるべきだ。
けれど、全てを抱える必要もないはずだ、
「押し付ける」ことはいけなくても、
「助け」を求めることは間違っていない。
人は一人では生きられないし、
同時に孤独である、
多分そういうことを僕は言いたいんだ。
「力を、貸してください。
彼にちゃんと謝りたいです。
お願いします」
彼はふっと笑みを浮かべると、
「了解した。少し待っていろ」と男らしい捨て台詞を残すと、店
の奥でごそごそと物音を立て、何かを探していた。
お目当てのものを見つけたらしい彼は、
すぐさま戻ってきて、
手にしているそれを僕に見せる。
「君にこれを売ろう。
これは『種』だ。
心を育てる種だよ。
種が育つごとに、育てた本人の心も成長する、
種は心を映し出す。
つまり、この種を枯らしてしまうと、
心も枯れ、またその逆も然り。
君は、それでも、この『種』を欲するのか?」
脅すような言葉の割に、
それほどまでに怖く感じられないのは、
僕が楽観的なのか、それとも……。
しかし怖いのは、
このまま成長できずにいることだ。
「はい、欲します」




