よければその話、聞かせてくれないか?
両手を合わせて、僕は行儀の言葉を口にする。
「いただきます」
受け取ったスプーンでそっとムースを掬い、
ドキドキしながら口まで運ぶ。
「んっ! ?」
口の中に入れると、
なめらかな舌触りと控えめでありながら
濃厚な味わいで僕の舌を喜ばせる。
ムースはすごく、
さっぱりしているのに優しい甘さを感じられる。
くどくなくて、柔らかすぎず、固すぎず、絶妙な食感だ。
一口に言って、
スイーツが好きになりそうなほど美味しかった。
ちらり、彼の方へ目を遣ると、
満足げな笑みを浮かべてこちらを
じっと見つめている彼と目が合う。
感想を求めているようなその目に、
僕は呟くように言葉した。
「とても、美味しい、です……」
スイーツに対するイメージが
変わるくらいの衝撃を受けた。
「そうか、気に入ってもらえて嬉しい。
それは、私の手づくりなんだ」
彼は子どものように
あどけない笑みを僕に向けたんだ。
「こんなに美味しいスイーツをつくれるだなんて、
すごいですね。
尊敬します。
これなら、何度でも食べたくなりますから……
僕、なんか」
何もできない、
そう続けてしまいそうになるのだけは必死に堪えた。
既に手遅れかもかもしれないが。
「僕、なんか」なんて、
重々しくて面倒な奴だと思われてしまっただろうか。
しかし、僕の不安連鎖思考は
どうやら杞憂に終わったようだ。
彼は不敵な笑みを浮かべ、
穏やかに聞こえる声音で僕に語りかける。
「何か、思い悩んでいることがあるようだな。
今は客もいないことだし、
よければその話、聞かせてくれないか?
誰かに話すだけでも楽になるかもしれない、
気軽に話してみてくれ」




