人望の無い国王陛下と政略結婚
今、コルト王国は荒れている。
「現在明確に敵対の姿勢を取っている者はおりませんが、裏ではかなりの数の貴族が結託しているようです」
「そんなことは分かっている。その貴族達が結託している証拠や信頼性の高い情報は無いのか!」
「申し訳ございません」
前国王が崩御されてから三年、私が即位してから国内の問題は悪化の一途をたどっている。
「グランケルト王国の王女との婚約が叶えば我らの地盤も盤石となります。それまで隙を見せず現状では守りに徹するより他にはございますまい」
王女との婚約を望むのは大国の後ろ盾を得るためである。
将来的にグランケルト王国からの干渉を受けるかもしれない危険な賭ではあるが、私には母上の弟であるルブラル侯爵以外の有力な後ろ盾がない。
現在の情勢では国内の有力貴族と婚姻しても、逆に裏切られる危険を考慮しなければならないほどだ。
すでにグランケルト王国には婚約を求める正式な使者を送り、今は返書を持ち帰った使者の到着を待っているところだ。
一国の王女との婚約が簡単に成立するとは思ってはいないが、多少の譲歩をしてでも早急に話をまとめなければならない。
「陛下、オレビアル伯爵が到着しました」
「よし通せ」
謁見の間に入ってきた伯爵はなんともいえたい表情でグランケルト国王からの親書を私に差し出した。
伯爵の表情が気になるが今は内容を確認し今後の行動方針を検討するのが先だ。
これは本気か・・・?
私は署名と封蝋を再確認する。
だが偽造された物である可能性はないようだ。
「オレビアル伯爵よ、卿はこの内容を知っているのか?」
「”国境付近の鉱山の帰属権を放棄するのであれば第三王女のアフロディーテ王女との結婚を認める”とグランケルト国王から口頭で聞いております」
伯爵が口にした内容は親書の中身と同じ意味の言葉だった。
国境の山々には鉄や銅などの鉱石が埋まっていることが分かってはいるものの現状ではそれらの開発をすることはとても出来ない状態だ。
金や銀の鉱山ではないし、この内容であれば交換条件としては問題ない。
それにアフロディーテという名前の女性の肖像画はどこかで見た記憶がある。
確かかなり豊満な肉体の美女であったと記憶している。
別に変な意味は無い。
美女であった方が貴族や国民からの受けが良いと思っただけだ。
私は側近達と協議をして、その日のうちに返書をしたためた。