戦いとその後
ゲジット帝国が信奉するエレギア教は一神教であり、人間は神が地上を統治するために創造した神の子であるとされている。
だから他の神はエレギア教からすれば神ではなく悪魔であり、それらを信奉する人間は人間ではなく悪魔の子とされた。
奴隷とは神の子である人間に奉仕させることにより、悪魔に染められた魂を浄化しているのだそうだ。
酷い詭弁である。
「ディー、得物はそれでいいのかい?」
帝国軍との決戦を前に一応の確認をする。
「はい、ベルトお兄・・ベルト様、後宮に飾ってあった農具なのですけど軽くて手になじみますの」
それは農具ではなくハルバードだよ。
それに、ワシのバルディッシュより大きいから軽いはずはないと思うよ。
まあ普通に扱えてるみたいだから大丈夫か・・・。
「よし、行こうかディー」
「はい、ベルト様」
今回の作戦は東の貴族の集団を短期に瓦解させて、敵全体の崩壊を誘う。
帝国から見て異教徒である東の領地の兵士は、一応は東の貴族たちの指揮下にあるものの、帝国からは奴隷に近い扱いを受けているためにかなり士気が低い。
領主や指揮官さえ叩いてしまえば簡単に瓦解するほどにだ。
今ここにいるのは騎兵が五十騎のみで、全体が十万を超えている今回の会戦では戦力外として無視される程度である。
それを利用して後背に回り込む
まずはワシとディーで敵右翼の本陣に突撃した。
極限まで身体強化と硬度強化をすると短時間ではあるが体は槍をはじきその武器は人を木の葉のように吹き飛ばす。
魔力の多いワシとディーだけが出来る理不尽なほどの能力である。
「お前達、私を守れ、ぐはっつ」
無駄に装飾華美な鎧を着た男たちが、ディーの一撃を受けて空に舞い飛んだ。
そして敵陣の反対側へ突破した後に旋回して戦場を離脱する。
「ベルト様、疲れました・・・」
ディーは身体強化の加減が分からなかったようでかなり疲れた様子だ。
敵右翼は崩壊しつつある。
もう大局は決したので我々はこのまま帰還するだけだ。
「よく頑張った。帰ったら勲功一番としてハチミツ入りのお菓子を用意しよう」
「やったー!ハチミツだ!」
(我々はお二人の後を走り抜けただけで、出番が全く無かったな・・・)
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ゲジット帝国は強硬派の皇帝がこの戦いで戦死し、穏健派の皇帝が即位したようだ。
コルト王国は今回の戦争で大きく国力を減らし、グランケルト王国の庇護国となった。
将来的には併合する予定だ。
まあそんな小さな事よりディーとの結婚式の方が緊急かつ重要な案件だ。
「ディー、寒くはないか。お腹を冷やしてはいけないよ」
「ベルト様は心配性ですのね」
ディーの体型が変わる前に根回しを終わらせなければ。
国王陛下やハイデマリン子爵には”まさか五歳の時から目を付けていたんじゃないよね”とか”主は胸派ですか”などと言われたが、今は機嫌が良いのですべてを許そう。
結果的にワシはディーが成人するまで待ったし、ディーの体なら胸でも尻でも愛せるので彼らの発言は事実無根である。




