やっと王宮に着いた
ガタゴトガタゴト
石畳の上を馬車が走る。
そして馬車は王宮の前までやって来た。
「止まれ!」
門を守る騎士が怪訝な目をしてこちらを見たが、馬車に付いているグランケルト王国の紋章が見えたらしくあからさまに態度を変えた。
「失礼、どうぞこちらへ」
ああ、これでやっと食事とベッドにありつける。
やっと川の水と生の魚でお腹を膨らませ、馬車の中で眠る生活とはおさらばである。
宝飾品などは全部侍女が管理していたので、馬車の中にはお金になりそうな物や野営に利用できそうな物がなにもなかったのだ。
あの後、私は取り敢えず馬車を走らせて道なりにコルト王国の王都がある方向へと向かった。
だって自国の方向は襲撃者たちが走って行った方向だったから仕方が無い。
道中では一度だけ親切な人たちに出会った。
身なりも汚いし話もあまり通じなかったけど、その人たちは私に王宮までの道を教えてくれたし今腰に下げている剣もくれた。
ともかく一応は無事に目的地にたどり着けた。
騎士は私を少し広い場所に案内するとノックをして馬車の扉を開いた。
「他の方々は?」
馬車の中が空っぽであることを確認した騎士が、御者台にいる私に問いかけた。
護衛の近衛騎士や御者、更に自国の護衛や侍女も全員逃げてしまったので、その後どうしているのかは知らない。
説明する気力もなかったので私はゆっくり首を振って答えた。
「分かった、ここで待っていてくれ。上に確認を取る」
しばらく待っていると先ほどの騎士が来て私を小部屋に案内してくれた。
王女の為に用意された部屋としてはとても小さいが天蓋付きのベッドに机も置いてある。
しかし、天蓋に付いているはしごや上に置いている予備の布団のような物はなにに使うのでしょうか?
まあ今はそんなことはどうでも良い。
「おやすみなさい」
私は背負った荷物や腰の物もそのままにベッドに倒れ込み深い眠りに落ちた。