すべて○○がやったことです
北方の蛮族討伐を祝う式典も終わり、その日の王城の様子は普段と全く変わりはなかった。
ただ、北方討伐に参加した騎士や兵士たちが城内や城下町で大きな顔をしてかっ歩していたくらいだ。
さすがにあれだけの大戦果を上げて、三番目の近衛騎士団に昇格した部隊の騎士たちが、少しくらい羽目を外す程度のことは皆が容認していた。
異変は正午の鐘が奇妙な音を立てて鳴り響いたときに起こった。
王宮で侍女たちに自慢話をしている騎士や王都でただ酔っ払って騒いでいた騎士が一斉に宰相一派の貴族を捕縛及び同貴族の館を襲撃してこれを制圧した。
王都に緊張が走ったがこれらの行為は国王陛下の署名が入った司法の正式な命令書による行為だった。
”北方討伐時の物資横流しに関し、ベルト・グランシェン公爵に捜査と捕縛に関する全権を与える”
なんとも曖昧で拡大解釈が可能な命令書だ。
こうして国王陛下が真っ昼間から後宮で致しちゃってる間にすべてが終わっていた。
「グランシェン公爵、これはどういうことだ!」
「陛下の命に従い犯罪者どもを捕縛しただけにございます」
まあその命令書は憲兵総監を買収して他の書類に紛れ込ませたのではあるが、内容を確認せず署名したのが悪いのだよ。
「その命令は撤回する。速やかに宰相たちを解放せよ」
「「「「「・・・」」」」」
国王の命令にもかかわらず謁見の間にいる者たちは誰一人としてその場を動こうとはしない。
「御意、速やかに宰相一派の貴族の当主は斬首、子弟で恭順を示す者以外は斬首、それ以外も適切な対象を致します。ご安心ください」
「なにを言っているのだ!予は解放せよと言っている!」
「「「「「・・・」」」」」
無駄なことだ。
この場にいるものは既に脅迫や買収が終わっているし、現状で国王と王太子のどちらについた方が良いかは皆が理解している。
誰しも自分が可愛い、貴様の声は誰にも届かぬよ。
「御意、憲兵総監よ、陛下のお言葉は聞こえておったな」
ワシが声をかけると憲兵総監は震える声で答えた。
「はっ!今日中に国王陛下に反逆者どもの首をお届けいたします」
「な、なにを言っているのだ・・・」
国王の顔が赤から青に変わった。
やっとこの馬鹿にも状況が理解できたようだ。
「陛下、信頼していた宰相に裏切られてさぞ消沈の事とお察しいたします。しばらく後宮でごゆるりとお過ごしを、政務は王太子殿下がおられますし、我々も微力ながら誠心誠意助力させていただきますのでご安心くだされ」
しばらくして、国王陛下の退位と王太子殿下の即位の儀が執り行われた。




