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救援と救援?

王宮の周囲は反乱勢力に包囲されていたが、その戦力は十全とは言えずこの計画が急遽実行されたものであることがうかがえた。

そのおかげで守備隊に中央から明確な指令がない状態でも、なんとか持ち堪えることが出来た。

救援に駆けつけたルブラル侯爵が率いる軍が敵を追い払い、王宮は一時的な平穏を取り戻した。


「陛下、お加減はいかがですか」

「ルブラル侯爵、よく戻ってきてくれた」

私はまだ起き上がることは出来ないが、多少の時間であれば話をするくらいのことは出来るようになった。

「陛下のご期待に添えず申し訳ございません」

確かに現状はあまり芳しくない。

王宮を包囲していた東の貴族たちの軍は蹴散らしたが、今の中央の状態を知って説得に成功したはずの北と南の貴族の一部が私から距離を置いている。

東に寝返ったわけでは無いが色々な理由を付けて王宮への救援を渋っていた。

実際に東と領地を接している貴族たちは、いつ自領が攻撃されるかもしれないので致し方ない部分もあるにはある。

だが王家と西の貴族たちの戦力では国境を越えたゲジット帝国軍と東の貴族の連合軍には太刀打ちできない。

必ずどこからかの援軍が必要な状態だ。

本来は王妃の祖国であり同一の神を信じるグランケルト王国に救援を求めれば良いのだが、そもそも王女は行方不明のままであり、身代わりの彼女も王宮が襲撃されてから行方が分からない状態である。

一縷の望みを抱きグランケルト王国に救援を要請はしている。

現在は防御のための堀や城壁の強化と食料の備蓄を行っている。

敵の全体兵力は我が方を圧倒しており、こちらから打って出るのは勝算が薄い為だ。


そして一ヶ月が過ぎた。


私は剣を持って戦うことは出来ないが、指揮所で指示を出すことぐらいは出来る程度に回復した。

それと嬉しい誤算が二つあった。

一つ目は東の貴族の一部が夫人と子息を王宮や縁者の元へ避難させ、自身は徹底抗戦の構えを取り敵の侵攻を足止めしてくれている。

おかげで敵は未だに王宮へは到達していない。

この戦いに勝利した暁にはその功績に厚く報いようと思う。

そして二つ目はアフロディーテ王女の兄であり、新しく即位したグランケルトの王が派遣した援軍が到着したことだ。

かの国の王都までは早馬でも一ヶ月の距離であることを考えれば、先発の騎兵だけとはいえ到着しているのは異常な進軍速度である。

だが王女の行方が分からない現状では手放しで喜ぶことは出来ない。

すべてはこれからおこなわれる遠征軍指揮官との会談にかかっている。

なんとしてでも王女の件は帝国の謀略であるということにせねば。

「コルトの王よ、お初にお目にかかる。グランケルト王国で公爵位を授かるベルト・グランシェンと申す」

遠征軍指揮官の男は私を鋭く睨みながら頭を下げることなくそう言った。

王に対してあまりに無礼な態度ではあるが、ここでそれを表情に出すことは出来ない。

あくまで彼は隣国の貴族であり、その麾下の兵力は帝国と東の貴族の連合軍に対して有効であるとの判断からだ。

決して彼の顔が怖いとかいう理由ではない。

しかしこの男の武名はいくつか知っているが納得の貫禄だ。

だが、三十歳前後の年齢という部分は嘘だろ・・・

「グランシェン殿、遠路よりの来援に感謝の言葉も無い。早速で申し訳ないのだがあちらで帝国にへの対策について協議したい」

私の言葉に彼は更に目を鋭くする。

「先にアフロディーテ様の行方につい伺おう」

王女の案件を解決することなく我らの味方をするつもりなどないということか。

「残念ながら有力な情報は得られていません。詳細についてはあちらで協議しましょう」

私は笑みを貼り付けて彼を席に誘った。

「いや結構、行方についての有力な情報がないのであれば、捜索魔法を使用するので最初にアフロディーテ様が住んでいた場所か残留魔力が残っていると思われる場所に案内してほしい」

あの魔法は触媒が高価な割に大体の方角しか分からない。

それを惜しげもなく使うとは、王女はグランケルト王国で大切にされていたのだな。

まあ離宮はあれ以来、魔法で封鎖したままであるし王女の残留魔力も残って・・・るわけないだろうが!

あそこにいたのは王女ではなく王女付の侍女だ。

どうする・・・


色々考えたが結局どうしようもなかった。

私は公爵を連れて遠回りで離宮へと赴く。

あの侍女が王女が使っていた衣服や装飾品を持ち込んでいれば、それらに残留魔力が残っている可能性はある。

だがそれはどこにある?

私も離宮の玄関ホールまでしか入ったことはないし、あの侍女がどこになにを置いているかなど知らぬ。

離宮を含めこの国の建物の基本的間取りはほぼ同一であるから、とりあえずは離宮の主人のための部屋に案内してそれから考えよう。

最悪は王女を襲撃したゲジット帝国の奴らが破壊したとか持ち去ったとか言えば良い。

そうだ、すべてはゲジット帝国のせいだ。

いや、襲撃者は帝国ではなく裏切った近衛騎士隊の一部だった。

あれ、これ詰んでねえか?

結局妙案が浮かぶこともなく離宮に到着してしまった。

宮廷魔法士が手際よく離宮の封印を解いた。

ついに開いてしまった・・・

「ではまいりましょうか」

ああ、もうどうにでもなれ!

「コルトの王よ、お待ち願いたい」

護衛と共に中に入ろうとした私を公爵が呼び止めた。

「なにかな、グランシェン殿・・・」

ただでさえあれな顔なんだから急に話しかけないで欲しい。

「コルトの王はお気づきのようだが、捜索魔法は微弱な残留魔力を利用するものだ。一緒に来るのであれば魔力の放出は抑えられたい」

え、なにそれ・・・いや私はまったくなにも気づいていないよ?

だが護衛と魔法士には理解できたようで、皆は魔力放出を抑えることが出来ないと答えている。

単純に言えば、誰しも無意識のうちに体内の魔力を外に放出しているらしい。

それが微弱な残留魔力と混ざると捜索魔法の精度が下がるらしい。

ああ、分かった。

私はそもそも極端に体内魔力量が少ない。

だから放出量も微々たるものなのだろう。

それは良いとして、それだと離宮には入れるのは私だけ?

私は悲壮感を漂わせながら離宮へと続く通用門をくぐった。

そしてさらなる失態に気づく。

しまった、離宮の庭が畑になっていることは当然知っていたが、どうせ誰も近寄らせるつもりもなかったのですっかり忘れていた。

「随分と個性的な庭園ですな」

「・・・そうかもしれませんな」

他にどう答えたら良いというのだ。

言い訳をすれば色々な面で瀬戸際に立たされていたので、細かいところに注意を払う余裕がなかったのだ。

だが、公爵の声は怒ったり嫌みを言っているようには聞こえない。

それどころか若干嬉しそうでもあった。

まあそれも、そうあってほしいという私の願望がそのように感じさせているだけかもしれないが。

とにかく目的を果たす事だけ考えよう。

今は公爵は王女を探す為に捜索魔法の媒介として利用できるものを探している。

侍女が王女が身につけていたドレスか装飾品を持ち込んでいれば良いのだが。

”どうか何か入っていますように”

私は神に祈りながら離宮の主人のための部屋を開いた・・・がそこにはなにもなかった。

一応はそれなりの調度品が備え付けてあったのだがクローゼットは空で寝台には毛布の一枚すらない。

拙い・・・これは王女の残留魔力どころか魔力そのものが全く無いんじゃない・・・。

「これはどういうことか説明していただけるのでしょうな」

ああ、今度は分かるぞ。

この声は明らかに怒っている。

「すまぬ、離宮に勤めていた者たちは襲撃された時に皆死亡しており当時の詳しい状況は何一つ分かっていない。王女の遺体は確認されていないので襲撃者たちに連れ去られたのは間違いないと思われる。王女の所持品については襲撃者が燃やしたのか持ち去ったのか、この現状については我々も全く分かっていないのだ」

当然だが彼の怒気が更に深まった。

こんな嘘がばれないはずがない。

万事休すか・・・

「まあ、お兄様お久しぶりです」

その声に振り向くと簡素な衣服をまとった女性がとても嬉しそうな笑顔で立っていた。

ここは魔術で封鎖していたはず。

「おまえは誰だ?」

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