閑話・離宮襲撃犯は○○
「二階の奥の部屋はほこりが積もっていて人の気配はまるでなかったです。他の部屋もくまなく探しましたがアフロディーテ王妃はおろか人っ子一人居ません」
「一階もニワトリが居た以外は同じです」
「隊長、どうします?」
「くそっ、またしても逃げられたか」
しかし、ここは本当に後宮か?
庭は一面畑で侍女もいなけりゃ美術品どころか家具すらほとんど無い。
建物の裏手には女物の服やあれが干してあったので、確かに誰かはここに住んでいるのだろうが、おそらくこの後宮は偽物でアフロディーテ王妃は別の場所に住んでいるのだろう。
俺たちは偽情報に踊らされたという訳か。
「作戦は失敗だ。直ちに撤退する」
陽動でおびき出した王宮の警備兵や国王派の連中がそろそろ戻ってくる頃だ。
引き際は間違えてはいけない。
俺は部下たちに撤退を命じながら報告用に洗濯物から持ち運びやすい三角の布地を三枚拝借した。
この布の生地は王妃では無く最下級の貴族か裕福な平民が使うような生地だ。
上層部への物的証拠として一枚を書面と一緒に提出するつもりだ。
撤退中に俺たち王妃誘拐部隊は国王暗殺部隊と合流した。
あちらは国王に深手を負わせることは出来たがとどめは刺せなかったらしい。
俺は同志に布を渡してこちらの状況を伝えた。
「ほう、王妃の身代わりとして離宮に監禁されている下民の女の存在か・・・そそるな」
さすが同志だ。
彼はどんなときでも俺の最高の理解者である。
国王暗殺と王妃誘拐の計画は達成することは出来なかったが、それでも指揮系統は混乱しているはずだ。
ゲジット帝国に協力してもらい、遙か昔に廃止された奴隷制を復活させて俺たちの理想郷を築くのだ。
そのために力ずくで王位を奪う。




