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王女の身代わり(前編)

あれから一ヶ月が過ぎた。

対外的には王女が襲撃に遭ったことは公表したが、無事に王宮に到着したという事にしている。

本当は襲撃されたこと自体を秘匿したかったのだが、護衛に付いていた近衛騎士たちが酒場で自らの失態を触れ回ったのだ。

彼らは今、離宮の警護という役目を与えて隔離している。

これ以上余計なことを喋られたら適わん。

現在は王女の身の安全を確保するという理由を付けて、すべての面会を拒否し結婚式も叔父上のほか信頼できる数名で行い王女の代役には細身の側近を女装させ顔は厚めのベールで隠して参加させた。

もう二度とあんな気持ち悪いことはごめんだ。


「配下の者たちに捜索させていますが未だに有力な情報は得られていません。グランケルト王国との国境山脈の関所を通過した形跡はないので王女が既に王国へ帰ったということは無いはずです」

つまり王女の捜索はなにも進展していないということだな。

「”アフロディーテ王妃は実は襲撃の際に亡くなられたのではないか”と言う噂が現在王宮内に流れております。お披露目などを全くしなかったのですから疑われても仕方がありません。そろそろ一度くらいは王妃を行事に参加させないと収拾がつかなくなります」

そんなことは言われるまでも無く分かっていることだ。

「行方不明の王女をどうやったら参加させられるというのだ。身代わりを立てるにしても秘密保持と容姿の問題をどうする」

「陛下、私に良い案がございます。現在離宮に居るグランケルト王国から来た王女の専属侍女に身代わりをさせれば情報を知るものが増えることはありません。それと容姿で問題になるのは顔だけですからベールを被せておけば良いのではないかと愚考いたします」

側近のビットルの言にも一理ある。

アフロディーテ王女の侍女であれば立ち振る舞いは問題ないだろうし、元々王女と面識があるものは我が国には居ないので顔さえ隠してしまえばばれる可能性は低い。

それに王女と全く面識のない者が身代わりを務めるのは難しい。

「ふむ、そうだな・・・よし、其方が直接赴いて事に当たれ」



数日が経ち、私は夜会に出るため離宮に王妃を迎えに行く。

王妃の身代わりの件は側近のビットルにすべて任せており彼女とは初めての対面となる。

それに離宮の中に入るのも初めてだ。

王女は私とともに王宮に住む予定だったので元々この離宮を使う予定は無く、この件の関係者を隔離するために、かなり昔から封鎖されていたここを急遽使えるようにしたのだ。

護衛を門の外で待たせて離宮に入ると奇妙な光景が広がっていた。

庭に畑が出来ていたからだ。

この離宮に住んでいるのは王女付の侍女が一人だけで、門の警備をしているのは王女を護衛していた近衛騎士と馬車の対応をした衛士長とその部下たちだが門から中には入らないように命じてある。

つまりこの畑は侍女が作ったのだろう。

王女付の侍女であれば、ある程度は上位の貴族令嬢だろうと考えていたが、そうであればこんな畑は作らないだろう。

王女の身代わりとしておかしくない程度の教養があるのだろうか?

いや、出自がどうあれ今日は私の隣で座っているだけだ。

何とかなるだろう。

言いようのない不安はあるものの今更後には引けない。

私は身代わりの侍女の元へと向かった。


扉を開けるとそこに彼女はいた。

「お初にお目にかかります。アフロディーテ・グランケルトにございます」

なかなかのものだ。

彼女はアフロディーテ王女になりきっている。

側近の報告では彼女の顔はアフロディーテ王女とはまるで似ておらず、どちらかというと不美人に該当すると聞いているが、ベールを被っている今はそんなことは気にならない。

良いくびれだ・・・

危うく口からこぼれそうになった言葉を辛うじて押さえ込む。

「う、うむ、なかなか堂に入っているでは無いか。だがアフロディーテは予の妃なのだからアフロディーテ・コルトだな」

「申し訳ございません」

受け答え等もしっかりしているし、これなら今日の身代わりくらいは大丈夫だろう。

「よい、いきなりのことで難しいであろう事は理解している。今日は基本黙って頷いておけ、何か問われても曖昧に返事をしておけばよい。其方は私の隣に座っているだけでよいのだ。決して余計なことはせぬように」

私は腕を差し出し、彼女をエスコートして会場へと向かう。

横を歩く彼女をチラリと横目で見た。

正面から見たときに気づいてはいたが彼女はエロい。

胸元は無防備に解放されており、横から見ると中まで見えてしまいそうだ。

女性の魅力は腰のくびれだと思っているが胸も悪くないのでは無いかと少しだけ考えてしまった。

そう思った瞬間に彼女は組んでいる私の腕に胸を押しつけてきた。

なにが目的だ。

私が横目で見ていたことに気づいていたのか。

一瞬だけ動揺したがそれだけだ。

私はくびれが好きなのであって胸ごときに惑わされたりはせぬ。

だがくびれを形成する一要因として胸の存在を否定するものではない。


端的に述べると夜会は成功裏に終わった。

当面は彼女に身代わりをさせていれば何とかなるだろう。

だがアフロディーテ王女の安全を確保するためと言う理由だけで、いつまでも茶会などを拒否する訳にもいかない。

彼女が表に出ることが増えれば、いずれはグランケルト王国に王女が別人であることが露見してしまう可能性が高い。

頭が痛い問題だ。

これ以上国内が混乱すれば東のゲジット帝国が侵略してくる可能性がある。

その答えは出ること無く四ヶ月が過ぎた。

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