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うちの執事(セバスチャン)が無能すぎる2  作者: 原雷火
甘い宝石は罠の味ですわね
9/11

あら? なにが半分ですの?

王立警備隊の馬車に揺られて、わたくしたちは再び、昨日も訪れたサントレノ通りにやってきましたわ。


狙われた宝飾品店――カルティナは通りの一番北の端にあって、外観は石造りの小さな教会の聖堂のようでしたの。


予告状騒ぎでお店は休業。怪盗が現れるのは今夜0時ということだけど、早朝から警備隊員でごった返していますわね。


「ちょっと道を開けてくれないか?」


ドミニク警部が言うと、ざざっと人混みが半分に割れて店の入り口へと続く道ができあがりましたわ。


「さあどうぞお二人とも。まずは中へ」


中折れ帽を手にしてそっと一礼するドミニク警部に導かれて、わたくしとセバスチャンはカルティナの店内に入りましたの。


見上げると天窓から朝日が射し込んで、なんだか宝飾品店なのに妙に神々しいですわね。


「天窓とは不用心ですのね」


セバスチャンも見上げてから、小さく頷きましたわ。


「取っ手やハンドルの類いがありませんから、きっとはめ殺しですね。あれを破って中に入れば宝石を盗み放題です」


と、言ったところでドミニク警部が「チッチッチ」と、立てた人差し指をリズミカルに揺らしましたの。


「高さ十メートル。周囲にハシゴなどの類い無し。そして、あの天窓のガラスには仕掛けがしてあるのだよ。もし割れるようなことがあれば、防犯ベルが鳴り響いて宿直の人間だけでなく、王立警備隊の詰め所にも連絡が行くことになっている。しかもこの建物の鍵が内側からすべて自動で掛かるという寸法だ。建物自体が檻となって、すぐにも警備隊員が飛んでくる。北側の詰め所はほれ、あの通り目と鼻の先だからな」


鼻高々で自慢げにドミニク警部は言いましたわ。確認しにカルティナの玄関を出てみれば、すぐのところに警備隊詰め所がありましたの。


まあ、天窓を破って中に入った時にロープでも垂らしていれば脱出もできるでしょうけれど、その時点で警報が鳴るなら、怪盗も仕事を断念して逃げ出しますわよね。


セバスチャンが溜息混じりに警部を見つめましたわ。


「ですが警部殿、怪盗紳士は鍵の一つも壊さず侵入するというではありませんか? はたして天窓を破るでしょうか?」


「そうなのだ。だが今回の奴は今までとは違う。このような予告状まで出したのだからな!」


ドミニク警部はコートのポケットから一枚のカードを取り出して、わたくしとセバスチャンに突きつけてみせましたわ。


青いカードに黒猫のようなマークがアクセントでつけられていて、なんだか小洒落ていますのね。ちなみに書かれている文字はタイプライターで印字されたものだから、筆跡をたどるのは無理そうですわ。


予告状にはこう書かれていましたの。


「今夜0時、カルティナの至宝『ブルーサファイア』を頂戴に参上する……ですって。まさか、宝石をそのまま展示などしていませんわよね? どこに隠したのかしら?」


「お嬢様、どうやら『ブルーサファイア』は逃げも隠れもしないようです」


スッと、セバスチャンがショールームの真ん中あたりを指差しましたわ。


近づいてみると、ひときわ大きなショーケースに、怪盗紳士が狙うという青い宝石が飾られていましたの。


天窓から射し込んだ光を反射して、まるで深い海のような蒼さをしていますわ。とっても神秘的で、つい見入ってしまう美しさ。

けど……よろしいのかしら?


「地下の金庫にしまったりいたしませんの?」


ドミニク警部が髭を撫でて笑いながら首を横に振りましたわ。


「残念だがマドモアゼル。この建物の下は下水道でね。そういったものは無いのだよ」


「あら、ではニセモノと交換するのはいかがかしら?」


これにも警部は首を左右に振りましたわ。


「腕利きのガラス職人にニセモノを作らせるには、今からではあまりに時間が足りなくてね」


「それならいっそ、どこか別の場所に隠してしまえばよろしいのに」


今度はセバスチャンがわたくしに言いましたわ。


「下手に動かせばかえって怪盗紳士の思うつぼかもしれませんよ。予告状を出すことで、宝石を店から運び出させるということも考えられますし」


ドミニク警部がぐいっと胸を張りましたわ。


「はっはっは! いかに怪盗紳士といえど、我々が見張っているのだから盗み出すことは不可能なのだよ! むしろ今回は飛んで火に入る夏の虫! とはいえ怪盗紳士がどこから侵入するかもわからない。そこでお二人には怪盗紳士がいかにして侵入してくるかを、推察していただきたいというわけだ」


もし失敗して、ブルーサファイアが盗まれてしまったらドミニク警部は責任を取れますのかしら?


なんだか協力するのがとっても不安になってきましたわ。


と、独り心配していると、セバスチャンの気配がわたくしのそばからいつのまにか消えていましたの。いつのまにか店の窓際に行って……何をしているのかしら?


鉄格子のついた大きな窓から採光用の小窓まで、隅々を確認してセバスチャンは戻ってきましたわね。


「警部殿、この建物の裏口はどちらでしょう? 少し見せてもらってもよろしいですか」


「カウンターの奥だが、執事殿は裏口が怪しいと? まさか怪盗紳士は裏口から入ってくるというのか!?」


「さあ、どうでしょう。私は執事として戸締まりがきちんと成されているかどうか、ただ確認しているだけですから」


平然と言ってのけるセバスチャンですけれど、メゾネットの毎晩の戸締まりはわたくしが行っていますわよ。


じっとセバスチャンを見つめると、セバスチャンったら目配せでわたくしを口止めしましたわ。


まったくもう、仕方ありませんわね。執事なのに戸締まりをしたことがないだなんて、警部には言えませんものね。


一通り裏口側も調べ終えて、セバスチャンはわたくしの元に戻ってきましたわ。


「鍵に問題はありません。どの窓も扉も施錠は完璧です」


わたくしはその顔をビシッと指さして言ってやりましたわ。


「そもそも怪盗紳士は鍵も壊さず侵入するのでしょう? どうやったかはわかりませんけれど、ちゃんとドアや窓に鍵が掛かるかを調べたところで、いったいどうなりますの?」


セバスチャンは長い指で自分の顎を軽く挟むようにして「ああ、それもそうですねお嬢様。さすが、探偵小説大好きっ子の名は伊達ではありません」って、気づいてましたの!? わたくしのプライベートな情報を警部に聞こえる声の大きさで……ううぅ……警部の視線がミーハーを見るような生暖かいものに変化した気がしますわ。


「では、そろそろおいとまいたしましょう。私もお嬢様も警備や捜査については素人ですから。余計なことを警部殿に申し上げて、混乱を招くわけにはまいりませんし」


わたくしとしても、警部のお力になれる気がしませんわ。


「セバスチャンの言う通り、捜査について証言などの協力こそ惜しみませんけれども、プロの警部にもわからない怪盗紳士の侵入方法についてなんて、とんと見当もつきませんし……お力にはなれそうにありませんわ」


あまり見当違いなことを言って、自分の顔が熱く真っ赤になるのにも懲りましたし、セバスチャンときたら懐中時計を片手に「この時間ならカフェのモーニングにぴったりですねお嬢様」って……先ほど途中まで支度した朝食は、この分ですとお昼ごはんに格上げですわね。


会釈をして背を向けたセバスチャン――だけど、警部が突然、背後からぐいっと腕を伸ばして、肩を掴んでしまいましたの。


「待ちたまえ。余計なことを……ということは、なにかあるのではないかね?」


セバスチャンはそっと肩にかかった手を払って、警部に向き直りましたわ。


ああ、なんでしょう一触即発とでもいうのかしら?


にらみ合う二人。訪れた沈黙。気まずさばかりが濃くなる空気。


あわわわどどどどうしましょう!?


焦りの余り、つい、声をあげてしまいましたわ。


「き、きっと予告状は手の込んだ悪戯ですわ! 今夜はなにも起こりませんわよ! なぜなら、これまで怪盗紳士は予告状を出していなかったのですもの!」


セバスチャンが言えないなら、わたくしが代わりに……なんて、無理でしたわね。


言いながら顔がカッカしっぱなしですわ。ああもう、今の意見は到底見当違いでしょうけれど、わたくしの考えつくことなんて、これくらいが限度ですのよ。


警部は目をまん丸くして、ぽかーんと口を開けっぱなしになりましたわ。


そんな警部に、セバスチャンは目を細め口元を緩ませて、そっと囁くように言いましたの。


「そうですね。お嬢様はお優しいが故に、だれも傷つかない悪戯と言葉を濁されましたが、本当はこう言いたかったのです。もし自分が怪盗紳士なら、予告状は陽動に利用する……と」


警部の顔が真顔に戻りましたわ。


「陽動……だと!?」


「ええ。どの店かまではわかりませんが、今夜狙われるのは、このカルティナではないのかもしれません」


ドミニク警部は「うぅ~」とうめくような声を出すと、中折れ帽を目深にかぶり直して、ブツブツと呟いてから、若い制服警備隊員を呼び寄せましたわ。


「御用でしょうか警部殿!」


「予告状に怪盗紳士による陽動の可能性が出て来た。管轄区域内の全制服警備員をかき集めて、今すぐ宝飾品店すべてに配備だ!」


「そ、それは無理です警部殿! このサントレノ通りだけでいくつの宝飾品店があるとお思いですか?」


「32軒だ」


「他の管区に応援を頼んでも、とうてい全てはまかないきれません!」


警部の顔がすっかり険しくなってしまいましたわね。


それにセバスチャンの言ったことはあくまで仮説ですし、裏を掻いてやっぱりカルティナなんてこともあるかもしれませんし。そもそも、わたくしが言ったみたいな空気になっていることもおかしいのですけれど……。


ドミニク警部は中折れ帽を脱いで、頭をくしゃくしゃとかきむしりだしましたわ。


「せめて三軒……いや五件ほどでいいから標的を絞れれば……」


そういえば……あら? たしか昨日、セバスチャンが被害に遭った宝飾品店のことを話していましたけれど、たしか同じ保険に加入している宝飾品店が他にもう一つありましたわよね。


「ヴィオーラ……」


なんとなく覚えていた名前を口にしたら、今度はドミニク警部がわたくしに向かってズンズン距離を詰めてきましたわ。


「マドモアゼル今、なんと?」


「ええと、たしかヴィオーラですわよね。これまで被害に遭ったドヴァン、アルディーニ、メレーリオに加えて、今回予告状が送られたこのカルティナと……他にもう一軒、同じ保険に加入している宝飾品店だが、そんな名前だったような気がしますの」


警部はいきなり、わたくしの目の前に跪いて両手で包むように手を握ってきましたわ。


「おお! なんということだ。欠けていたパズルのピースが次々とはまっていく! 感謝しますぞマドモアゼル!」


そのままわたくしの手の甲に、そっと口づけをしてから警部は立ち上がると、制服警備員に指示を飛ばしましたわ。


「警備を二班に分ける。A班はこのままカルティナの警備を。B班は至急ヴィオーラに向かってくれたまえ。それと貴様は班編制を終え次第、ヴィオーラがアドモス保険商会に加入しているのか、裏付け調査を頼むぞ」


先ほど呼んだ若い制服警備員に命じて、警部は満足そうに髭を撫でましたわ。


「これで完璧だ。ヴィオーラには『ブルーサファイア』と同格と言われている『紫陽花水晶』がある。どちらも怪盗紳士が狙うに相応しい……それに保険会社が同じという共通点も加味すれば、ヴィオーラが狙われる可能性は充分!」


え、ええと……もしかして、わたくし余計なことを言ってしまったのかしら?


セバスチャンがそっと警部に一礼しましたわ。


「それでは失礼いたします。お嬢様をこれ以上腹ぺこのままにしては、執事の沽券に関わりますので」


「お腹を空かせているのはセバスチャンの方でしょう?」


と、言った途端にわたくしのお腹が「きゅううう」っと鳴きましたの。なんて空気の読めないお腹の虫なのかしら!?


恥ずかしい! 天窓から射し込む太陽の光に溶けて消えてしまいたいですわ。


警部はもう一度、わたくしに向き直って敬礼しつつ、口を開きましたの。


「今回は捜査協力、感謝いたしますぞ。しかし捜査資料には充分に目を通していたつもりでしたが、まるで急所を撃ち抜くがごとき見事な推察……恐れ入った。まずは怪盗紳士の逮捕に我らが全力を尽くします。必ずや奴を捕縛し、その仮面の下の顔を衆目にさらしてやりましょう!」


鼻息荒く意気込むのはよろしいのだけれど、大丈夫なのかしら? わたくしの言ったことにはなんの裏付けもありませんのに。


「おっと、心配はご無用。何があろうともマドモアゼルに責の及ぶことはありませんので! 難事件に出くわしましたら、その時はまたぜひお知恵をお借りしたい!」


こ、こここ困りますわ。けど、警部は勝手に納得してしまいましたし、これで良かったのかもしれませんわね。


「それでは参りましょうお嬢様」


セバスチャンに促され、制服警備員に見送られて、わたくしたちはカルティナの外に出ましたわ。


用意された帰りの馬車には乗らず、そのまま朝から店を開けているサントレノ通りのカフェに腰を落ち着けることにしましたの。


席に着いてモーニングを頼んでしばらく、セバスチャンが目を細めて呟きましたわ。


「これで半分……まあ、上々ですね」


「あら? なにが半分ですの?」


「ええと……卵です。このカフェのモーニングは卵を二つ使うのですが、今朝はどうにも私の胃腸の調子が優れないので、半分をお嬢様に召し上がっていただければと思いまして」


「あら、珍しいですわね。熱でもあるのかしら?」


そういえば今朝は早起きまでして、セバスチャンったら珍しいことだらけですわ。


明日は雪じゃなくて槍の雨でも降るのかしら?



翌朝の王都は大騒動でしたわ。といっても異常気象に見舞われたりはしませんでしたけど。


朝刊の一面は“組織ぐるみの大がかりな詐欺事件”についてのニュースで溢れていましたの。


ドミニク警部の言った通り、怪盗紳士の正体が白日の下にさらされましたわ。


というか、怪盗紳士なんていなかったというのが、真実だなんて驚きましたけれど。


なんでも保険を運営している商会までグルで、窃盗の自作自演をしていたみたいですの。


被害にあったドヴァンもアルディーニもメレーリオも、盗まれたと言っていますけれど、消えたのは犯行前日にすり替えられた、精巧に作られたガラス細工だったんですって。


本物の宝石はといえば、裏で宝石好きな貴族――アドモス商会が裏でこっそり買い上げていたのだとか。宝石を正規のルートで売ればかかる税金を誤魔化していたなんて、やることがせこいですわね。


レプリカを用意した腕の立つガラス細工職人ももちろん共犯で、近々王都から地方に逃げるつもりだったのだとか。

まさかあのお店だなんて……作った人間はきちんと王立警備隊に捕まったみたいですけれど、ガラスのシュガーポットには罪はありませんから、これからも使っていくつもりですわ。一応、セバスチャンと一緒に選んだ思い出の品でもあるわけですし……。


他にもニュースは色々ありましたけれど、大まかにはこんな感じかしら。


怪盗紳士はすべて、それぞれの店の人間による自作自演でしたの。怪我人も出なければ窓ガラスの一枚も割られないのは、内部犯なのだから当然ですわよね。


犯人役がつける怪盗の仮面も押収されたのだけれど、それは東洋のノウメンというものに似ていて、見る人間のその時の感情でまったく違った表情に見えるのだとか、不思議なお面ですわ。


そういえばセバスチャンも黙って考え事をしている時には、憂うように見えたり怒っているように見えたり……人間の認識なんて、その時の主観でコロコロ変わってしまうものかもしれませんわね。


そして、この組織的な犯行は、順番的に次はヴィオーラで怪盗騒動を起こす予定だったみたいですの。


ヴィオーラの「紫陽花水晶」のレプリカも押収されたのだけれど、順番の最後となるカルティナの「ブルーサファイア」のレプリカは準備がまだだったのだとか。


なのに、昨晩――忽然と本物の「ブルーサファイア」が消えてしまったみたい。

カルティナの従業員はそう証言していますけれど、悪いとわかっていながら犯罪に加担していた人たちの言葉なんて、信じられませんわ。


さてと……一通り新聞にも目を通しましたし、本日も起こしに行きますわよ。


くるくるっと紙の束をまとめて、寝ぼすけ執事を倒す聖剣よろしく、今朝も成敗してさしあげますわ!



朝食の間、わたくしは今朝の朝刊のニュースをかいつまんでセバスチャンに教えてあげましたわ。けど、あんまり興味がないみたい。普段よりもセバスチャンの目の下のクマは大きいですし、食べながらあくびばっかり……。


「ちゃんと聞いていますの? なんでもドミニク警部宛に、様々な証拠が送りつけられたんですって。いったい誰の仕業なのか、王都警備隊の特別捜査班が調べているそうですけれど、保険会社の帳簿やらなにやらは、全部盗みだしでもしないと表に出ないものだとかで……」


「ええ……お嬢様の手作りの朝食は大変美味しかったです。ごちそう……ふああぁ……さまでした」


全然噛み合いませんわね。


「仕方ありませんわ。すぐに目が覚めるよう、濃い紅茶を淹れて差し上げましてよ」


「おっと、お嬢様。紅茶でしたら私が入れますとも」


急に眠気が吹き飛んだような顔をして、セバスチャンったらどうしたのかしら?


「寝ぼけているあなたにティーセットを扱わせるわけにはいきませんわ」


わたくしはすぐに自分で紅茶の準備をしましたわ。


「お嬢様。紅茶にお砂糖は不要です。たまにはお嬢様もそのままの味わいを楽しんでみてはいかがでしょう?」


「頭がすぐに回るよう、濃くて甘い紅茶にしますわよ」


戸棚からガラスのシュガーポットを出してみると……あら? 色とりどりの宝石糖の真ん中に……青い宝石糖が混ざり込んでいますわ。


青は買わなかったのに、気づきませんでしたわね。


それにしても……とっても神秘的な輝きですわ。どこかでこの色を見たような気がしますけれど……。


いつの間にか、セバスチャンがわたくしの背後にぴたりと立って、そっと囁くように言いましたわ。


「ああ、お嬢様。青の宝石糖が入っているじゃありませんか。私はこの色が好きなのです。が、紅茶に淹れては色を変えてしまいかねないので……」


ガラスポットから青の宝石糖をつまみあげて、セバスチャンは口に入れてしまいましたわ。


「ああもう、お行儀の悪い……それでよく執事が務まりますわね」


「ひふへひひはひはひはおひょうはは」


「口にものを入れたまま喋るのは、ますますお行儀が悪いですわよ」


セバスチャンは眉尻を下げて、それきり黙り込んでしまいましたわ。


まったく、今日もいつもと変わらず困った執事セバスチャンですわね。

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