二人の行先とその理由
「おい。学校に行ってどうするんだよ。」
柊に後ろから問いかけた。
柊の歩くスピードは速くて、とてもじゃないけどついていけない。
「つーか私服のままじゃ入れないし・・・」
すると突然柊は方向転換した。僕が少し戸惑っていると、
「私の父。柊幸彦の名前を出せばよろしいでしょう。」
そう言ってまた歩き出した。
柊幸彦は自身の父から受け継いだ小さな会社を、わずか30年で大企業にしたことで有名だ。
柊が入学する時には屋内プールを作るための資金を出すほど金持ち、そして親馬鹿である。
「で?言ってどうするんだ?」
僕は同じ質問をもう一度投げかけた。
「奈々の部活、今日活動日でしょう。その方たちに奈々の事聞いてみようと思いまして。」
—そうだ
はっと思い出した。
加月は演劇部所属で、朗読がとても上手だった。
たまに国語の教科書を読んでくれるが、声の使い分け、感情の込め方、声のトーン。素人の僕からでもうまいと思った。そう言うと「当たり前だよ~」とけらけら笑う。
そんなことを思い出して思った。そして口に出す。
「あいつ文化祭前に死んじまったな。」
「・・・・・うん・・・」
柊も僕の口調に合わせてか静かに頷いた。
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