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~回想2~
「加月・・・」
やっとそれだけ絞り出して言いながらも僕はメモを後ろに隠そうとした。
「みせて。それ。隠さなくていいから。」
そう言われて隠そうとした手が止まる。
数秒の間。
結局のところ、僕が根負けした。
そっと手を差し出す。
「・・・やっぱり二階堂さんからのだったか。」
長い髪は少し茶色く、おとぎ話の姫のような顔からは想像のつかない低くてクールな口調。
一度だけ聞いたことのある彼女の声はもう少し高くて口調も可愛らしかったような・・・
そう思っていると彼女に「何?」と怪訝な顔を向けられた。
その一言でふっと我に返る。あぶない。見つめてた。
僕が先程思った疑問をぶつけると意外なことに笑い声が帰ってきた。
「あっははは。あんな肉食系女子の前で俺が本性出すわけがないだろ。あーおかしい。」
しばらく笑うと突然「あ、横隔膜が痛てぇ」と笑いをひっこめた。そして
「このこと誰にも言うなよ。」
メモをひったくって歩いていく。
ずいぶんな笑い上戸らしい。と先程見たメモを忘れて微笑んでいた。