俺のイチャイチャがラブラブしなさ過ぎて困る件2
獣○について解説してるのは……おそらくなろう史上初じゃないかなあ(苦笑)
「獣○………?」
聞き覚えのない単語に、野分は自然とスキルを使用した。
それはスキル『比翼連理』による知識の共有。
ワダヤマヒロシを通して、地球の知識をも知りうる『古竜』野分。
グーグル先生よろしく無意識に検索して……その結果に、野分は悲鳴を上げていた。
地球で言うセーフティサーチの機能はついていない『比翼連理』……それはどんなにドギツイ知識でさえ、検出してしまうのだ。
契約対象が『知っている』知識であれば。
『(に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛
に゛、゛に゛、゛日゛本゛と゛言゛う゛異゛世゛界゛は゛…゛…゛ど゛れ゛だ゛け゛倒゛錯゛し゛て゛い゛る゛の゛じ゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!゛!゛
ヒ゛、゛ヒ゛、゛ヒ゛ト゛と゛動゛物゛が゛…゛…ま゛ぐ゛わ゛っ゛て゛お゛る゛ぞ゛お゛お゛お゛お゛お゛お゛!゛!゛!゛)』
三点リーダーや感嘆符や句読点どころか濁点付きの文字にまで濁点をつけるという斬新な表現で動揺して見せる野分。
赤黒かったドラゴンの顔が、さらに紅潮していた……ただし血の気が引いていないのは、意外とオキライではないようだった。
その反応に全てを察したワダヤマヒロシは、慌てて突っ込む。
「あっ……てめえ!! なんてものを検索しやがる!?
言っとくがそれは知識として知ってるだけだからな!!
まかり間違っても、実際にやったことはねえよ!!!
(……まあ人間相手もそうなんですが……)」
獣○。
それは画像や動画を問わず、またどのような規模や形態のアダルトコーナーにも、必ず一定数割いてあるジャンルである。
その歴史も古く、昨今ネットにあふれる成人向け動画のその起源である家庭用ビデオ、さらにその起源であるDVDやビデオテープがない時代に全盛期を迎えた成人向け映画でさえも見つけることができる。
それどころか、大航海時代の船員は『それ』用に豚などの家畜を積んでいたこともあるし、航海中に捕まえたイルカやジュゴンなどの小型海洋哺乳類やエイなどに『それ』を仕掛けることもあったという。
……逆に、未開の原住民相手に仕掛ける時も『それ』の感覚であっただろう。
余談ではあるが、かくして、本来人間同士の接触では感染しないはずの性感染症も、世界にバラ巻かれることとなった。
恐ろしきかな、獣○。
それは、かつてこの大陸の西部を支配下に置いていた古竜でさえも赤面させてしまうほどであった。
『(ど、ど、道理で……人間の姿でいくら迫っても、主が応じないはずじゃ……。
ど、ど、ドラゴンの姿の方が、良かったというのか……?
しかしそれでは……ドラゴンとしての則と尊厳が………)』
「だから、違うわ!!
それに、肉食系キャラのお前がそんな真面目なこと言ってんじゃねえ!!
俺は至ってノーマルですぅぅぅ!!!」
野分の問いかけに全力で応えるワダヤマヒロシ……ただしそれには二次元限定、と言う注釈が付く。
「ううう……本当じゃな……?
では……こちらの姿なら大丈夫なんじゃな……?
ちゃんと、人の姿なら愛せるという事なのじゃな……?」
と……ふいに野分が、ドラゴンの姿から人の姿に戻る。
その瞬間から……すでにワダヤマヒロシの視線は、おっぱいに突き刺さっていた。 悲しいサガである。
「お、おう。 ま、まあな……ん?」
野分の必死な問いかけに動揺しながら応じるワダヤマヒロシ……なにか若干、誘導されたような気がしていた。
ニヤリ……野分の口角が、若干上がっていた。
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「ふはははは!! 言質は取ったぞ、主よ!!
では早速、始めようではないか!!!」
そう言いながらすぽぽぽぽーんと着衣をぬぐ野分。
相変わらず潔すぎる脱ぎっぷりであった。
それに視線を泳がせながら、それでもきっちりおっぱいを盗み見ながら、ワダヤマヒロシは大げさにため息をついて見せる。
「はあ……だから。
……これ言うのも久々な気はするな。 けどあえて言わせてもらおう。
俺はフィギア観賞する気はねえんだよ!!
確かに俺はオタク……しかし、フィギアにだけは手を出さなかったんだ!!
手を出したら……いつか絶対、脱がしちゃうのは分かり切ってたから!!
確かに俺はオタク……しかし、人の道を外れることは、出来なかったんだよ!!
そこだけは、手は出さなかったんだよ!!!」
魂の咆哮を見せるワダヤマヒロシさんであった。
人とは時に……妙なこだわりを見せるものである。
しかし。
応じる野分は、頭の上に疑問符を浮かべるのみであった。
「良くはわからんが……要するに、サイズの問題なのじゃな?
我がもう少し、大きければよいのじゃな?」
確認するように、静かに問いかける野分。
応じてワダヤマヒロシは、「お、おおう……」と答える。
その言葉に……野分の口角が、一瞬さらに高くなった。
それがふいに苦笑に変わる。
「全く……男と言うのは、どうしようもない生物じゃな。
大きいのがいいとか、小さいのがいいとか……下らぬことにこだわりおって。
と言うか……女の尊厳を何だと思っておるのか」
「いや、それ、パーツの話だよね?
ここで問題なのは、全体だから。
まあ確かに人によって、大女が良いとか、太ったほうがいいとか、育ってないのがい…げふんげふん。
と、ともかく、そう言う嗜好は人によって違うとは思うけど……物理的に一致しないのは、残酷な結果しか想像できねえよ。
何度も言うけど、俺は串刺しの刑の死刑執行人にはなりたくねえからな!?」
「ふふん……まあ良い。
では主よ……主のその懸念、解決してやる」
「はあ? どうやって?」
「忘れたか?
そもそも、じゃ。
我々はどうやって会話しておる?
主はどうやってこの世界の言語を身につけ、我はどうやって日本語を身につけた?」
「そりゃお前……スキル『主従の宣誓』だろ?
今じゃ何だか『比翼連理』って名前に変わってるけど……それで知識を共有してるからじゃないか」
「……ふむ。
そこまで思い出しておいて、気付かんとは……まあ、そこも主のカワイイ所なのじゃがのう!!」
むふーと鼻の穴を膨らませ、野分はワダヤマヒロシの顔を見上げた。
そして。
野分は……いつも通り、自信に満ちた満面の笑みを浮かべながら、叫ぶのであった。
「こうすればよいのじゃ。
……スキル『比翼連理』より引用!!
スキル『星の巨人』!!」
瞬間、野分の言葉に愕然とするワダヤマヒロシの目の前で……野分は、爆発するような勢いでその身体を巨大化させてゆく。
一瞬でその身長を、一八メートルに変化させていた。
おっぱい丸出しの、その姿で。
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「ほほっ!
この状態だと、我は主より背が高いようじゃのう!!」
腰に手をあてた状態で、全裸のまま『星の巨人』化した野分はまじまじと、座ったままのワダヤマヒロシを見下ろしていた。
「…………」
応じるワダヤマヒロシは、絶句である。
完全に、絶句である。
思考は止まり……下手をすれば、呼吸まで止まっている。
彼の全思考と生命活動を止めたのは……生おっぱい。
それも、巨乳と言って差し支えないレベルの美乳。
そして、虚乳ではない。
それがリアルタイムで、無料で、合法で、モニタ越しではなくて、手を伸ばせば届く距離で、ワダヤマヒロシの目の前にある。
ワダヤマヒロシのすべての神経が、それに吸いつけられていた。
ワダヤマヒロシは……いつの間にか身体を小刻みに震わせていた。
もし宗教家が神に会ったら……こういう状態になるのかもしれない。
だが……ワダヤマヒロシが目の前にしているのは、野分その人であった。
「ふふ……主のそのような反応は初めて見るな。
主、触っても、よいのじゃぞ?」
「ふ、ふぁい!?」
微かに微笑みながらの野分の言葉に、ワダヤマヒロシの身体が大きく揺れる……数センチぐらいは飛び上がったかもしれない。
童貞=人生……じゃなかった。
童貞=年齢のワダヤマヒロシにそれは、刺激が強すぎる状況だった。
例えるなら、スポーツを始めたばかりの子供が現役プロ選手に出会ったようなもの。
もはや、そのスポーツどころの話ではない。
出会った奇跡自体に身動きが取れなくなってしまっていたのだった。
手を伸ばせば『それ』がある、と言う状況。
なのに、それが信じられない。
……ずいぶんきれいな解説をしてしまったが……まあ、童貞フリーズということだ。
そもそも『それ』を目指してきたワダヤマヒロシの異世界行。
『それ』に囲まれるために来たワダヤマヒロシの異世界行。
そして『それ』を目の前にしてワダヤマヒロシは……生まれたての小動物のように震えていた。
「ああ、もう。 じれったいのう、主よ」
そう言いながら野分は、ぐいと前に進んでワダヤマヒロシの両手を取った。
そして……その両手の甲に、それぞれ口づけする。
湿った音……好意以外の何物でもない、本気の口づけだ。
「の、野分っ……。 ……?」
それを理解した瞬間、野分に飛びかかろうとするワダヤマヒロシだったが……それを野分に制された。
野分が、掴んだままの両掌を放さなかったからだ。
「ふふ……主よ。 大事な話がある」
「ひゃっ、ひゃい!」
優しい笑顔を浮かべながら言う野分……それに、心臓を掴まれたような様子でワダヤマヒロシが応じる。
それにもう一度微笑を浮かべながら……野分は、優しく呟く。
「我のMPが……切れそうじゃ」
「………へ?」
ワダヤマヒロシが間抜けな答えを返している……まさにその瞬間。
ぱちーん、という音が聞こえそうなくらいの……まさに伸び切ったゴムが急に元に戻るくらいの勢いで、野分の身体が元に戻っていた。
元のフィギアサイズ……一八メートルから、一八〇センチの大きさに。
「いやあ、すまんな、主よ。
今日はMPを使いすぎたからのう。
完全な状態なら……あと一、二分は『星の巨人』になれると思うが」
ニコニコ笑顔を見せながら言う野分。
対して身長一七メートルのワダヤマヒロシは……そのまましばらく動かなかった。
無駄にスキル『巨人の咆哮』を使うのは……この数分後であった。
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