第0話 遺言
たとえ、どんな栄光を世界に知らしめた存在でも、この世の生命は必ず死ななければなりません。
決して、かつての英人達を侮辱している訳ではありません。むしろ、そういった証拠を確固たるものにするために死ぬ。そう捉えてもらったらいいです。
そう、すべては「過ぎ去った過ち」なのですから。
別にこれから哲学的なことをしようと言う訳ではありません。
あなたの話をしているのです。
これからあなたは死ぬことを許されません。
それは、私たち生命に与えられた当然たる権利を剥奪されたと言うことです。
どんなにあなたが苦しんでも、どんな風にあなたが憤ろうとも、どう思ってあなたが嘆いても、どうやってあなたが信じようとも、どうしようもないくらいに誰かを愛しても、あなたは死ぬことはできないのです。
残念なことに、私はあなたを助ける術がありません。
だからこそ、私はあなたに助言します。
これから、あなたがどうやって生きていけばいいのか。どうやって苦しまないでいいのか。どんな風に思えばいいのか。どうして嘆くのか。どうして信じるのか。どうしてそんなにも愛してしまったのか。
すべての疑問に応えることはできませんが、あなたがもし何かにつまずいたとき、転んだとき、立ち止まったとき、悩んだとき、どうしようもないとき、私があなたの疑問に応えましょう。
あくまで助言なので鵜呑みにせずじっくり考えなさい。
そして、最後にひとつ。
――世界を憎みなさい。
さらばだ、かつて彼女が愛した世界よ。
これから死ぬ私から、これから産まれるあなたへ