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弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
2章 ~怒りを抱く少年に、笑う悪魔~
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第二章 第七話 ~本戦開始~

「さて、予選がすべて終了したところで、トーナメント組み合わせの発表っす!」


興奮冷めやらぬ観客たちが、実況席のイブキの声を待つ。

長いタメを作った後、イブキはマイクに口を近づける。


「それでは、いきますよ〜!


第一試合 レイン選手VSフィーネ選手

第二試合 ロウ選手VSギン選手

第三試合 アアアア選手VSシャケ選手

第四試合 カノン選手VSテオ選手

第五試合 ゼツエイ選手VSナン選手

第六試合 ユウ選手VSサードレイ選手

第七試合 コーネリア選手VSトビタチ選手

第八試合 ベニツバキ選手VSマジンガー選手


以上です!

レイン選手とフィーネ選手は、このあとすぐ控え室に入って準備をお願いします!開始時刻は……」


イブキの声は、観客の歓声によってかき消された。




□■□■□■□■□■□■□■□




観客席でたくさんの歓声があがっている頃、ユウとサキはコロシアムの近くの公園を散歩していた。

人がコロシアムに集中しているおかげか、公園には人通りが少ない。


「ゆーくん、あれ見て!コイがいるよ!」


池を指さして楽しそうに笑うサキを見て、ユウも釣られて微笑む。


「まるで、本当に生きてるみたいだね」


「うん。……きっと、本当に生きてるんだよ。このコイも、あそこのハトも、木も、NPCも。現実と、何一つ変わらないんだよ」


「……そう、だね」


その事は、テイマーという特異なクラスであるユウが一番理解していた。

ランも、ライムも、ディーさんも、立派な生き物だと。

僕らに襲いかかってくるモンスターも、プレイヤーも、何一つ変わらない、と。


「……僕らと何一つ、変わらない。モンスターも、NPCも、プレイヤーも」


「うん」


ユウの呟きにサキは頷く。

そのうなずきと共に、ユウの左手と自分の右手を重ねて。


「えっ、ちょっ、さーちゃん?」


「……ダメ、かな?」


いきなり手を繋がれて戸惑うユウに、頬を赤く染めながらサキは尋ねる。

その尋ね方も、態度も、やはり現実と寸分違わない。


「……ダメじゃないよ」


弱々しい力で重ねられたサキの手を、柔らかくユウの手が包む。


「えへへ……」


嬉しそうに笑うサキと、少し恥ずかしそうに空いている手で頬をかくユウ。

ゆっくりと、速度を合わせて歩き出す。

初々しいその二人のやりとりを、周りの人々は微笑ましく、または砂糖を吐きそうな顔で見守っていた。




□■□■□■□■□■□■□■□




試合開始のゴングが鳴り響き、会場の喧騒が一気に静まり返る。

開始の音を聞いて、ゆっくりと目を開く少年。


「……レインさん、だっけ?」


「うん?どうしたんだい?破壊神君」


「うん、あのね……」


対戦相手と目を合わせ、少年はニコリと笑い。


「君じゃ相手にならないから、降伏(リザイン)してくれないかな?」


そう言い放った。

レインというプレイヤーは、いわゆる最前線攻略プレイヤーである。

このゲーム内において、屈指のプレイヤーなのは予選を勝ち上がってきたことにより明らか。

そんなプレイヤーに向け、フィーネが行った降伏勧告は。


「……舐めてんじゃねーぞ、クソガキが」


温厚と知られているレインを豹変させることしかできなかった。


「……残念。君じゃあさ、」


フィーネは本当に残念そうな顔をして。


「簡単に、壊れちゃうでしょ?」


禍々しく脈動し続ける赤黒い大剣を呼び出した。




□■□■□■□■□■□■□■□




散歩を終え、帰ってきたユウは違和感を覚えた。

奇妙なほど、会場が静まり返っているのだ。


「あーあ、つまんないの」


その言葉が鼓膜を揺さぶった瞬間、首筋に冷たいモノが当てられる感覚がした。

本能的に察知してしまった。

“コレには勝てないと。”


「あ、君……」


そして、その声の主もユウに気がついてしまった。

そう、再び出会ってしまったのだ、彼らは。


「久しぶりだね!あの時よりも強くなった?」


少年の無邪気な声に、思わず震えてしまう。

同じくらいの背丈、人懐っこそうな笑みを浮かべているにも関わらず。

本能の警笛はなり止むことを知らない。


「…………ぅ、」


「?」


僕の返答を待っているんだ、と。

返答次第によっては殺される、と。

その事がどうしようもなく怖くて。

左手を、サキの右手と繋がってる左手を強く握った。


握ってしまった。


ユウの恐怖が、彼女(サキ)に伝わってしまったのだ。


「……そうだね」


ならば、彼女のすることなんて、わかりきったも同然だろう。


「君よりも、ずっと強くなったよ」


そう、サキは言い切った。

有無を言わさぬ強い瞳でフィーネを見て。


「……さーちゃん」


その言葉を聞いて、何故か震えが止まった。

そして同時に、自分の情けなさに歯噛みした。

無性に苛立った。

だから、だから。

あんな事を言ってしまったのだろう。


「……フィーネ君」


「……ん?なんだい?」


同じ目線で、瞳と瞳をしっかり合わせて。

少年(ユウ)は、ハッキリとこう言った。


「トーナメント、勝ち上がってこい。僕が、君を」


フィーネの口角が上がるのが、ハッキリとわかった。

そして、フィーネの目に炎が宿る幻覚が見えた。


「全力をもって、叩き潰す!」


こうして、少年とフィーネの間に、約束ができた。

普段の彼ならこんな事は絶対、言わなかっただろう。

言えなかっただろう。

だが、何故かこの時は。

サキが隣にいた、この時だけは。

……フィーネに屈しちゃいけない気がしたのだろう。

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