第二章 第二話 ~ユウの本質?~
題名 初イベントとアップデートのお知らせ
本文
・初イベント 《第一回PVP大会》
昨日お知らせした通り、近日中にイベントが開催されます。
開催場所は第十の街の闘技場になりました。
開催日時は決定次第告知いたしますので、もうしばらくお待ちください。
詳しくはhttp://**********をご覧ください。
皆様のご参加、お待ちしております。
・アップデートについて
内容
レベルキャップの開放
新エリア《王都》の開放
新エリア《慈しみの湖畔》の開放
新エリア《レイヴォルフ活火山》の開放
新エリア《死神佇む炭鉱》の開放
新エリア《旧王都》の開放
新エリア《王城》の開放
上位クラスの開放
新スキルの開放
ギルドシステムの開放
いくつかの不具合修正
いくつかの敵モンスターの能力値を大幅修正
いくつかのスキルの威力を情報修正など
詳しくはhttp://**********をご覧ください
これからも、アヴァロンゲートオンラインをよろしくお願いします。
そこまで読み終えて、僕は息を吐いた。
とりあえず、気になることは多いが、今はPVPイベントのことを考えるべきだろう。
もしかしたらアップデートの方が先に来るかもしれないが、その時はその時だ。
そう思いつつ、いつもの集合場所である第一の街の酒場まで歩く。
どうやら視線は集めずに済んでいるようだ。
というよりも、みんな迫っているイベントのことに夢中で、あまり周りを気にしていないのかもしれない。
「ん?」
酒場の前までたどり着くと、何故か人だかりが出来ていた。
何事だろう?と思って近づいていってみる。
「もう!いい加減にしてください!」
もう少し前に行こうとしたところで、さーちゃんの怒声が飛んだ。
周りが呆然としている間に、ゆっくりと間を縫って進んでいく。
「そ、そんなに嫌がらなくてもいいじゃないか。君にとっても、悪い話じゃ……」
「だから、興味無いんです!」
「いや、話くらいは……」
「結構です!」
なんとか間を縫って、先頭まで出てみると、金髪の妙に違和感の残るイケメンの男性が、さーちゃんに笑顔で話しかけ続けているところだった。
しかし、さーちゃんはきっぱり断り続けている。
……姉さん、遅刻してるっぽいな。
「少しくらい、いいじゃないか」
「だから、いらないと言ってるんです!どうしても私と話したいなら、カノンちゃんを倒してから勧誘しに来てください!それでも絶対入りませんけど!」
「……へぇ?じゃあ、あのいつも君の隣にいる、小生意気な騎士モドキのクソ女を倒せばいいんだね?よし、分かったよ」
ふむ。あの人、姉さんに勝つつもりなんだ。きっとすごい実力の持ち主なんだろうなー。
……ところで、小生意気な騎士モドキのクソ女って誰のことを言ったのかな?
「ガッ!?……ぎ、ざま……!な……にを…………!」
「ゆーくん!?」
「ん?どしたの?さーちゃん。」
僕は片手で金髪の首を絞めあげつつ、さーちゃんに笑顔を向ける。
「いつの間に来てたの?」
「さっき来たところだよ。ところで、この人は?」
「……ゆ……るざ……なぃ!」
首を絞めあげられながらも抵抗をやめない金髪さん。
でも、そろそろ意識が遠のいてきはじめている頃なので、力が徐々に抜けていっている。
「しつこくギルドに入らないか?って勧誘してきたの…………ゆーくん、殺っちゃっていいよ。」
「分かった。じゃあ殺っちゃうね。」
そう言って、首を絞める力を一段と強める。
ディーさんを呼び出してもいいけれど、こんな奴に彼の力を使うのは礼節にかけるだろう。
「ぁ!ぁ!」
慌てて僕の腕をタップし出すがもう遅い。
「とりあえず、姉さんをクソ女扱いした罪は、支払ってもらうね。」
にこやかな笑みを浮かべ、金髪にそう告げると同時に、金髪の腕がだらりと垂れた。
手を離すと、床に崩れ落ちて、白目を向いて倒れている。
「……で。」
未だに目の前で起こったことについていけていないのか、硬直したままの人だかりに冷たい声音でこう告げた。
「次は誰が殺られたいですか?」
「……バカじゃないの?」
「バカだな」
「バカですね」
「すいません……」
そんなわけで、正座でお説教を受けてるなうです。
いやね?ちょっと衝動的に殺っちゃったというか、なんというか……
ちなみに、首を絞めたからと言って現実世界で息ができなくなったりする訳では無いので、こちらの世界から現実世界の人間を殺せるわけじゃない。
さっきだって一時的に酸欠→気絶にさせただけだし。
「……まあ、今回はあたしが遅れたのも悪かったわ。あんたに、罪がないとは言わないけれど、反省はしているようだし、今回はこれで許してあげる」
「……はい」
うーん、実はあんまり悪いことをした気分にはなってないんだけどなー。
姉さんを侮辱するとか万死に値するし。容赦なく殺しに行くし。
「……さて、じゃあ、特訓を始めましょうか」
「よし!いくぜ、カノン!」
いつものように張り切って立ち上がったギンさんを、手で静止する姉さん。
「今回はギン、あんたの出番じゃないわ」
「えぇ……せっかく張り切ってたのによぉー。……んで、誰の番なんだ?」
「ユウ」
「……ん?何?」
名前を呼ばれて、少し遅れて反応する僕。
姉さんはいつもの意地悪い笑みを浮かべて、口を開いた。
「あんた、私と戦いなさい。そして、勝ちなさい。」
「……は?」
予想外の言葉に、思わず固まる。
え?僕が、戦う?姉さんと?僕が、勝つ?姉さんに?
「……いやいやいや!無理だよ!?」
「そうだぜ、カノン。いくら何でもユウとお前じゃ実力差が……」
「その差を埋めるための特訓よ。それにユウ、あんたなら勝てるでしょう?私に」
「…………無理だよ?何言ってるの?」
無理に決まってるじゃないですかー。やだー。
「大丈夫よ。私も本気を出したりなんてしないから」
そう言って、座っている僕に黒剣の切っ先を向ける姉さん。
「ま、一度やってみなさい。別に負けても構わないから」
「負け確の勝負を挑めと言われても……」
そういいながら、渋々ディーさんを呼び出す。
『そろそろ詠唱をして欲しいものだな!』
「やだよ、あんな恥ずかしい詠唱」
『何を言うか!あれは由緒正しき……』
「さ、始めるわよ」
「はーい」
『やっぱり我の扱いが酷いと思うのだが。酷いと思うのだがっ!』
気のせいですよ、ディーさん。
立ち上がって、いつも通り白い鎧を身に纏う。
「いい?ユウ、勝ちに来なさいよ?」
「だから、無理だと思うけど……」
「あんたならやれるわよ。……ギン、この子のこと、よく見ておきなさい」
「お、おう?」
何を期待してるんだろうか、姉さんは。
うーん、まあ、やれるだけやってみますか。
大剣を両手で握り、姉さんを見る。
ふむ、この感じからして……
「ギン、合図を」
「お、おう。んじゃ、試合開…」
始、の声で姉さんが駆け出す。
そして、少し屈んで下から斬りあげようと黒剣を下から上げてくる。
うん、“予想通り”。
黒剣に大剣を当てて、攻撃を防ぎながら姉さんの次の手段を考える。
姉さんならこのまま引き下がるわけがないよね。
あ、やっぱり“予想通り”踏み込んできた。
なら、崩しますか。
そう頭で考えつつ、一歩踏み込んだ姉さんに、大剣を振り下ろす。
至近距離から大剣の振り下ろしたとしても、姉さんなら絶対に避けてくる。
なら、次はその地点を予測しよう。
姉さんは右利き。でも僕がここまで考えてることを気づいていないはずもないし、何より。
今、少し迷ってる。
なら、左だな。
そう思って、空振った大剣を左に振るために、足元を少し強めに踏みしめる。
「ッ!」
姉さんの短い悲鳴とともに、HPバーが少しだけ削れる。
うん、当たった当たった。
とは言っても、流石の反応速度だね。あの状態から直撃を避けるなんて、並大抵のことじゃできない。
「姉さん、やっぱり凄いね」
「……あんたね、この状況じゃ、それは嫌味にしか聞こえないわよ?」
「え?なんで?避けたじゃん」
「あたしに当てられることがどれだけ大変なことか、少しは理解しなさいよ……」
そうぼやきつつも、また黒剣を構え直す姉さん。
「……ユウ、今度は攻めてきなさい」
「…………うーん、まあ、分かったよ」
大剣を握り直して、姉さんを見つめる。
うーん、警戒されてるなー。
どうやったら意表を突けるかな?
『……ユウ殿、先程から疑問だったのだが、何故貴殿は動きを予測できるのだ?』
え?なんでって言われても。
見慣れてるもん。
『……は?』
いや、だからさ。
“見慣れてるんだってば”。
『…………ユウ殿、カノン殿と戦ったのは、これが初めてであろう?』
うん、そうだよ。
でも、あれだけ近くで見てれば、動きの癖くらいわかるよ。
性格も分かりきってるし、動きの予測くらい簡単に出来るよ。
……あれ?これを使えば、攻めきれるのかな?
よし、やってみよう。
『ゆ、ユウ殿?何をする気だ?』
うん?避け方を予測するだけだよ?
「んじゃ、行くね、姉さん」
ここで姉さんの意表を突くなら……
「《聖なる剣》」
大剣を自然に振り下ろすと、光が一瞬で集まって、切っ先から放出される。
予測外の攻撃に、姉さんは思わず硬直している。
うん、やっぱりだ。
タメ無しで打てること、姉さんに伝え忘れてたからね。
こんな形で使うのは悪いかもだけど、忘れてたものは仕方ないね。
「っ〜!」
紙一重でなんとか回避した姉さんは、体勢を思わず崩してしまう。
よし、一気に畳み掛けよう。
近づいて、大剣で崩れた姉さんの体を斬りあげる。
回避不可能のその攻撃を避けることは叶わず、斬りあげによって姉さんの身体は宙を舞う。
宙を待っている間は、さすがの姉さんも回避はできない。
そう思って跳躍し、姉さんに向けて大剣を振り下ろす。
僕が全体重を乗せて振り下ろした斬撃を、黒剣でなんとか防ぎつつ、姉さんは地面へと落下する。
「ぐっ!?」
地面に落ちればこちらのものと言わんばかりに、バク転で後ろへ下がる姉さん。
それを追いかけ、バク転の着地地点に大剣を横薙ぎに振るう。
「舐めんなっ!」
その声ととも、横薙ぎが止められる。
即座に体勢を立て直しきった姉さんが、黒剣を無理やり当てたのだ。
「流石だね、でも……」
しかし、それは悪手だ。なぜなら……
「それも予測してたよ」
「っ!」
止められた大剣に、全力で力を込める。
ディーさんによって上げられた筋力が、姉さんの華奢な体を吹っ飛ばした。
「もっかい、《聖なる剣》」
即座に呟きつつ、大剣を振り下ろす。
なんとか吹っ飛ばされたところから立ち上がろうとした姉さんを、《聖なる剣》の光が襲う。
直後、大きな音と土煙が発生し、視界が悪くなる。
「これで倒せたら楽でいいんだけどね……」
そう呟きつつ、姉さんの吹っ飛ばされた方向を見る。
「ま、そうだよね」
土煙が収まると、黒剣を振り下ろして息を荒らげている姉さんがいた。
「……ふふっ」
「どうしたの?姉さん」
「いや、まさか最初に本気を出すのが……」
纏う気配が明らかに変わったのを機敏に感じとる。
……これは、まずいかもしれない。
「あんただとは思わなかっただけよ!」
その声とともに、姉さんの手に持っていた黒剣に亀裂が入る。
いや、亀裂が入るというよりもあれは……
『魔力回路、であるな』
ということは、もしかしてあれって……
『魔剣、であろうな』
……絶対、あの気配からしてヤバイよね?
『うむ』
「……思う存分暴れなさい、《龍殺しの魔剣》」
そのつぶやきと同時に、姉さんの魔剣から、漆黒の龍が飛び出した。
その姿は、強欲龍にとてもよく似ていて。
思わず固まってしまった僕らを、漆黒の龍のブレスが包み込んだ。




