第二章 プロローグ
ゆっくりと息を吸い込み、僕は俯かせていた視線を上げた。
瞳に映るのはいつもと変わらない人懐っこい笑みを浮かべたナン君。
ただ、放つ気配はそれとは全く別で、闘志をひしひしと感じる。
「ようやく顔を上げたな、ユウ」
「……ナン君、僕、決めたよ」
目の前に立っている最高の友達を見据えて、僕は微笑んだ。
「君がどんな目的を持っているとしても」
黒い紋章が刻まれた左手を前に向ける。
最初から、迷う必要なんてなかった。
僕はまだ、倒したい人がいる。
ナン君は、勝ちたい理由がある。
なら、引く理由なんてなかった。
「僕は全力をもって、君を倒すよ」
たとえ、その結果に最高の好敵手を無くしたとしても。
たとえ、ナン君が僕に負けて、何かを失うとしても。
たとえ、その結果で彼が僕を恨むとしても。
「友達として、僕は君に負けるわけにはいかないんだ」
ナン君に向けてそう言うと、彼はため息を吐いた。
「……はぁ。まあ、折れてくれるとは思ってなかったけどな」
そう言って、彼は“いつもとは違う水色の刀”の柄に手を当てる。
「…………後悔すんなよ」
そう呟いた途端、雰囲気が変動した。
剥き出しだった闘志は、鋭く冷たい殺気となり、僕に突き刺さる。
「行こう、ディーさん」
『……承知!』
ディーさんの声に応じて、紋章が光り輝く。
光と共に、いつもの大剣ではなく、所々に金色の装飾が施された純白の美しい槍が、僕の手元に出現する。
「いつもの大剣はどうしたんだ?ユウ」
「ナン君と戦うのに、いつもの大剣じゃ相性が悪いからね」
「……それで俺に勝てるとでも?」
「…………試してみる?」
微笑みながらそう返すと、ナン君はさらに纏う雰囲気を鋭くした。
本当にいつもとは全然違うナン君の雰囲気に気おされつつも、槍を強く握る。
「……さあ、始めようぜ、ユウ」
「うん、始めようか、ナン君」
僕らは武器を構えながらそう言い合う。
「……行くぞ!」
ナン君の声に応じて、僕は駆け出した。
二章開始です!
…………この内容に行き着くまでに4話ほど使ってしまう気がしていますが、頑張ります!




