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弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
序章 ~始まりの空~
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下校後

てくてく。

そんな効果音が聞こえそうな感じで、優は帰り道を歩く。

余談ではあるが、優は身長が158cmしかない。そして、顔は女の子っぽく、一人称もボクで、声も声変わりをしてもやや低くなっただけで、綺麗な高い声のままである。

そんなわけで、前の席の女子との初会話が「ボクっ子?なんで男の子の制服着てるの?」だったりした。その時に負った傷は未だに優の心に刺さっている。多分一生モノだろう。


優は、今日の夕食のカレーのためにスーパーに寄った。

買い物かごの中にポイポイと必要な具材を放り込んでいく。

すでに手馴れた作業であった。

両親のいない星原家では、優が全ての家事を担っている。

なぜ両親がいないかはおいおい語るとして、なぜ花音が料理をしないかについてであるが……。


「料理って楽しいわね!」


そう言って笑う花音の作ったホワイトシチューは、すでにホワイトなんていう言葉は跡形もなく、ポコポコと泡の出ている紫色の液体の中に所々真っ黒な具の入ったシチューらしき何か。

その何かからは、世界を狙える腕前と言って差し支えないほどの腕前の味がしたそうだ。

そんなわけで、花音は料理が作れないわけである。


買い物を済ませ、また家へと歩く優。

その様子を近所のおばさん達が、愛おしそうに見守っている。

その視線には気づかないまま、家にたどり着いた優。

家の中に入り、部屋着に着替えたところでピンポーンとインターホンが鳴る。

急いで一階に降りてドアを開け、そこに置いてある青い荷物ケースを確認する。

その上に書かれている[ここに指で触れてください]の文字に従い、手馴れた動作でポチッと触る。

すると、荷物ケースのロックが解かれて、荷物ケースが自動的に開く。

中には白い箱に青い線で文字の描かれた箱が入っており、それを手に取る優。

荷物を手に取ると、その青い荷物ケースは電子ボイスで、「ご利用ありがとうございました。」としゃべると、家の前に止まっている車の中に走っていった。

それを見届け、優は箱を持ちつつ、家に入るのだった。


優は、荷物をリビングの机の上に置き、白いエプロンをつけて夕食を作り始める。

ちょうどカレーが完成し、テーブルに並べ始めたところでガチャっと鍵の開く音がした。

それに続いて、ドアを開く音が聞こえて、花音の足音が聞こえた。


「たっだいまー!」


花音の元気な声が優の耳に届く。


「おかえり。今日もお疲れ様。」


そう言って花音に微笑みかけつつ、ドアに近寄る優。

花音の後ろについてきた女の子が、声を上げる。


「お、お邪魔します!」


そう言って少し緊張したような感じで家の中に入ってくる少女。


「そんな事言わなくてもいいのに。普通にただいまでいいんだよ。さーちゃん。」


「ゆーくぅぅぅぅん!」


「え!?さーちゃん!?」


優の言葉を無視して、少女は思いっきり優に抱きつく。

そして、抱きついたまま頬ずりを始める。


「ゆーくんゆーくんゆーくん!あ〜、ゆーくんのにおいだ〜!」


「さ、さーちゃん!?ちょっと待って!ストップ!ストップ!!」


そう言われても止まる気配を一切見せず、ぎゅっと抱きついたまま頬ずりを続けて、匂いをかぐ少女、久城咲(くじょうさき)

優のたった1人の友達である。






「先ほどは本当に申し訳ありませんでした。久しぶりのゆーくんに興奮してしまいました。」


「で、本音は?」


「滅茶苦茶気持ちよかったです!ご馳走様でした!……ハッ!?私は何を!?」


「ベタなボケはしなくていいから。久しぶりだね。さーちゃん。」


そう言って咲に笑いかける優。

その笑みを見て頬を染める咲。


「まったく。ゆーくんってば、ますます可愛くなって。これじゃ、私が理性を抑えるのがますます困難になるじゃん。」


「さーちゃん。それって普通は男がいうセリフなんだと思うんだけど?」


「細かいことは気にせず行こうよ。あ、カレー食べてもいい?」


そう言いつつ席に着く咲。

ちなみに、花音は匂いが我慢出来なかったのか外着のまま食べ始めている。


「どうぞ召し上がれ。さすがにさーちゃんのお母さんの味には負けるけど、自信はあるから。」


「私はママのカレーよりもゆーくんのカレーの方が好きだよ?」


「ありがと。そう言ってもらえると嬉しいよ。」


そう言って笑い合う優と咲であった。

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