表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
1章 ~銀色の兄妹~
37/47

間章 ~とある日の約束~

起きたら僕の机の上に服が置かれていた。

それと一緒に、「デート頑張りなさいよ!」と書かれた紙も置いてあった。


「……だから、余計なお世話だってば。」


そう呟きつつ、内心ため息を吐く。

……勝手に姉が僕の部屋に入っていたことも、携帯を覗かれていたことも、服を漁られていたことも、気にしない。

気にしちゃいけないだろう。


「……着ますか。」


姉のファッションセンスがいいことは分かってるし、わざわざ選び直す必要も無いので大人しく着る。

……別に、僕のファッションセンスがひどいとか、そういうわけじゃないからね?

…………男性用の服を、幼い頃からあまり着せられなかったせいで、ちょっと疎いだけであって、決してひどいわけじゃ……


誰もいないのに言い訳しながら服を着て、鏡の前に立つ。

……よし。行きますか。


今日は姉さんは朝からカラオケに行くと言っていたので、家には誰もいない。

誰もいなくても、キチンとこれは言っておくべきだろう。


「行ってきます。」


無人の家に鍵をかけて、僕は歩き出した。










「……うーん、ちょっと早すぎたかな?」


待ち合わせ場所に着いたのは約束の時間の40分前。

周りの人も待ち合わせをしていたようで、腕を組んだりして歩くカップルが目立つ。

……うーん。


「……デート、だよね……。」


姉さんが勝手に決めた、「何でもひとつ言うことを聞く」という約束で、今僕はここにいる。

ちなみに、約束の内容は「買い物に付き合って」というものだった。

女の子からのこのお願いは、やはりデートと考えていいんじゃないだろうか?

……いや、さーちゃんの場合、男避けとして僕を呼ぶ可能性もあるよね。

あとは荷物持ち。

……そっか、別に普通じゃないか。

僕はこう考えることにした。

幼なじみと買い物なんて、別に普通だろう。相手が同性だろうと異性だろうと、それはあまり変わらない……はずだ。

幼なじみなんだから、頼みやすいだろうし。

……きっとそうだ。そうだと考えよう。


「……うん。そうだよね。」


「どうしたの?ゆーくん?」


「いや、これはデートじゃないよねっていう判断を下していただけだよ。……ッ!?」


い、いつの間に後ろに立っていたんだろ……さーちゃん……。

思わずいつもの流れで話してしまった……。


「……ゆーくん、おはよう。」


……なんか、こころなしか不機嫌な気がするんだけど、なんでだろ?


「うん、おはよ、さーちゃん。」


そう返すも、やっぱり不機嫌そうだ。

……なんでだろ?

まあ、せっかく二人で外出できるわけだし、機嫌は良くしておいた方がいいよね。

えーと、こういう時は服を褒めるべき……だったよね?


「……今日のさーちゃん、すごく……かわいい、ね?」


……なんか、恥ずかしいな、このセリフ。

世の中のリア充の皆様はこのセリフを即座に言えるから凄いと思う。リア充、凄い。

その言葉に耳まで真っ赤にして、さーちゃんは僕を見つめる。


「……あり、がと。……嬉しい。」


最後の呟きに、思わずキュンとしてしまった。

……こういう反応も、可愛いと思ってしまう。


「ゆーくんも、かっこいいよ!」


「ありがと、さーちゃん。」


姉さんのファッションセンスが健在で安心した。


「……それじゃ、行こっか?」


僕がそう微笑みかけると、さーちゃんは笑顔になって頷いてくれた。


「……手、繋ぐ?」


そう聞いてみる。

一応、はぐれたりしたらまずいし、人は多いし、彼氏だと思わせておけばナンパとかされないだろうし!

他意は無い。……無いよ?

さーちゃんは、僕の言葉にポカンとしたけれど、すぐにまた頬を朱に染めて、頷く。


「……今日のゆーくんは、すごく、積極的だね?」


「別に。そんなことない。いつも通りだよ。」


「ふふっ。そうだね。」


さーちゃんは少し笑って、ゆっくりと僕の左手に右手を重ねる。

手の温かさに少しドキドキしたけれど、表には出さないでゆっくりと歩き出す。

歩き出した僕にあわせて、さーちゃんも隣で歩いてくれる。

僕らは二人とも顔を真っ赤にして、歩き出すのだった。










まず、僕らは服屋さんへ向かった。

……手を繋いで歩いていたからか、案の定カップルと間違えられた。

店員さんの優雅かつ強引な接客で、するするとあっという間にお店に引き込まれて試着室までさーちゃんは連れ込まれていった。


「……すごく、居づらい。」


「なんでお前いるの?」みたいな視線は刺さらないけれど、どこか「ほほえま〜♪」みたいな視線が突き刺さっている気がする。

試着室の前の椅子に座って、さーちゃんの着替えを待つ。

……居づらい。居心地が悪い……。


「……ゆ、ゆーくん。」


試着室のカーテンからすこしだけ顔を出すさーちゃん。

……なんか、その仕草だけですごく可愛い。


「なに?さーちゃん?」


「あ、あのね……ゆーくんの、見たままの感想を教えてほしいんだけど……いいかな?」


「うん、いいよ?そのために、僕がいるわけだし。」


むしろ、それ以外の役目がなければ下の階のフードコートでアイスが食べたい間である。


「じゃ、じゃあ、えい!」


さーちゃんがカーテンを勢いよく開けて出てくる。

着ていた服は、おそらく寝間着だ。

……寝間着のはずなんだ。普通の、可愛い感じの寝間着のはずなんだけれど……

さーちゃんのスタイルの良さからか、すごく、その……エロく見える。


「……ど、どう……かな?」


顔を赤らめて、そう聞いてくるさーちゃん。

……どうって言われても、エロいって言えばいいの……?

いや、ダメだよね……?

……なんて答えよう?

う、うーん……よ、よし、コレだ!


「……す、すごく!そそられるネ!」


「えっ!?」


「……あれ?」


……もしかして、今、僕、爆弾発言、した?

あの、店員さん。その、「あちゃー」みたいな表情、やめてくれません?

いや、確かに今の僕の心情もそれだけどさ。あちゃーだけどさ。

…………やらかした。


「あ、え、あの、ち、違うんだ!なんか、すごくエロくて、襲いかかりたくなるほど可愛くてさ、その、あの!……あ。」


なんでさっきから僕はこんなことしか言えないんだぁぁぁ!


「そ、そっか……そそられるんだ……ゆーくんも。」


顔を真っ赤にして、ぼそぼそと呟くさーちゃん。

……ほんと、何を言ってるんだろう。僕は。


「……ごめんね、さーちゃん。」


「ううん、いいの。……ちょっと、嬉しい。」


「……はい?」


……エロいって言われて、嬉しい?

女の子って、よくわかんない……。


「こ、これ買ってくるね!」


「う、うん!分かった!」


買うんだ!?

店員さんも「えっ?マジで?」みたいな表情してるし!

周りからのお客さんからの視線が痛い!痛いよ!すごく!


「ゆーくん、行こっか。」


買い物を終え、僕の元に来るさーちゃん。

……やっぱりどこか、嬉しそうだ。


「……うん。」


手を繋いで、また歩き出す。

……まあ、さーちゃんが嬉しそうならいいか。










そのあと、ほかのお店も回って、いろんな服のさーちゃんを見せられて、ずっとドキドキしっぱなして疲れた僕は、フードコートで昼食にしない?と提案してみた。

そんなわけで、今僕はテーブルに突っ伏している。

……疲れた。精神的に。


「ゆーくん、どれにする?」


「うん?……何にしよっかな。」


なんかいろいろあるなぁ……

ラーメンとか、ハンバーガーとか、チキンとか。


「さーちゃんは何にするの?」


「私?……どうしようかな〜?」


そう言って、周りを見渡すさーちゃん。


「よし、私はハンバーガーにしよっと。ゆーくんはどうする?」


「うーん……じゃあ、僕もハンバーガーで。」


「分かった。じゃあ頼んでくるね。」


「え?いいよ。僕が頼んで……」


「ゆーくんは休んでて?このあともいろんなお店回るつもりだし。」


「……はい。」


お言葉に甘えさせてもらおう。

うーん、こうして二人で出かけるのはいつぶりだっけ?

いつも姉さんも含めて行くことが多かったし、なんだかんだ二人っきりは少ないかもしれない。

……そのおかげか、今日は可愛いさーちゃんがたくさん見れてる。

幸せだな……すごく。

だから、失うのが怖い。

こうしていられるのも、いつまでだろうか?

そう思うと、胸が苦しくなって……


「……ゆーくん?どうしたの?そんな顔して。」


気がつくと、僕の顔を覗き込むようにさーちゃんが顔を近づけていた。

すごく慌てそうになるけれど、必死に抑える。


「何でもないよ。さ、食べよっか?」


「……うん。」


少し訝しげな視線を向けつつも、さーちゃんはすぐに切り替えて満足げにハンバーガーを食べ始めた。

そんなさーちゃんを見ていると、元気が出る。

出来るなら、この関係がいつまでも続けば……

そんな思いを胸にしまいながら、僕はハンバーガーにかぶりついた。










「あ、さーちゃん、アイス食べない?」


ハンバーガーを食べ終わった後、なんとなくアイスクリーム屋さんの看板が目に入ったので、提案してみる。


「うん!食べよ!」


元気に頷いてくれるさーちゃん。


「じゃあ、今度は僕が買ってくるね?何がいい?」


「チョコミント!」


「分かった。」


アイスを受け取って戻ってくると、さーちゃんはやけににこやかな笑みを浮かべている。


「どうしたの?」


「小学校のときも、こうして一緒に食べたなーって。」


「……そうだね。」


そっか、最後にここに来たのは小学校の時か。

僕が小学校二年生で、さーちゃんが小学校五年生の時。

あの時は、さーちゃんのお母さんに引き連れられて来たんだったっけ?

で、さーちゃんのお母さんが用事を済ませている間、僕ら二人で一緒にアイスを食べたんだった。

あの時も、僕がストロベリーで、さーちゃんはチョコミントだった。


「……変わらないもんだね、もう、8年くらい経つのに。」


「変わらないよ。だって、私とゆーくんだもん。」


そう言って笑うさーちゃん。

……なんだか、僕のさっき思っていたことを見透かしているみたい。


「……あ、ゆーくん、それちょっと頂戴?」


「うん?はい、どうぞ。」


さーちゃんの申し出に従い、カップを差し出す僕。

でも、さーちゃんはなんだか不服そうだ。


「そこは『あ〜ん♡』でしょ?」


「……はいはい。」


そう言って、カップのアイスをすくってさーちゃんの口まで持っていってやる。


「あーん。」


「あ〜ん♡」


……うーん、これ、意外と楽しい。

相手がさーちゃんだからかな?


「じゃあ、私のもあげるね?はい、あ〜ん♡」


「あーん。」


……うん。美味しい。

やっぱチョコミントも美味しいね。でも僕はストロベリーが好きだからずっとこれだけど。


「……あ、……間接キス……だね。」


「ぶっ!?」


思わず吹き出しかけた。

……ちょ、そこ。顔を赤らめてもじもじするのやめなさい。僕まで恥ずかしくなるじゃないですか。あの。


「……どう?このネタ、一度はやってみたかったんだ♪」


「…………実験台に使われる僕の気持ちも少しは考えて欲しいです。」


「嬉しかった?」


「……ちょっとだけ。」


そう返すと、すこし頬を赤らめるさーちゃん。


「そ、そっか。……ふふっ。」


……そんな反応されたら、どう反応を返せばいいかわからなくなるじゃないか。

そう思って、僕は残りのアイスを口へ運んだ。










「すっかり遅くなっちゃったね〜。」


そう言って、夕暮れを眺めながら歩くさーちゃん。


「今日はありがと。お買い物に付き合ってくれて。」


「どういたしまして。久しぶりにさーちゃんと二人で過ごせて楽しかったよ。」


「そう言ってくれると嬉しいな。」


手を繋ぎながら笑い合う二人。

……ああ、やっぱり楽しいな。さーちゃんといるのは。


「……ゆーくん。あのさ。」


「……なに?さーちゃん。」


「…………今日の私、可愛かったかな?」


「…………そうだね、可愛かったよ。」


「…!………そっか。」


なんでこんなやりとりをしてるんだろう。

そう思いながら、ゆっくり歩く。

……よし、今度は僕から聞いてみよう。


「……なんでそんな質問するの?」


そう聞いてみると、さーちゃんは顔を赤くしながら答えてくれる。


「……ゆーくんはどうかわからないけれど、私、今日のお買い物は、デートだと思ってたからさ……可愛く思われてたら、嬉しいなって。」


そう答えてくれたさーちゃんがとても愛おしく思えて。

抱きしめたくなる衝動を必死に抑え。


「デート、楽しかったよ、さーちゃん、ありがと!」


今日一番の笑顔で、僕はさーちゃんにそう言った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ