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弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
1章 ~銀色の兄妹~
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間章 ~花音の苦労~

~6月6日 午後11時すぎ 星原家の一室にて~


「……うーん。」


……どうしたものかねぇ。

そう思いながら、目の前のディスプレイに書いた情報をもう一度見直す。

この情報をネットにあげたとして、どういう反応をされるのか考えてみる。


まず、この情報を鵜呑みにして王龍へ挑戦する無謀なプレイヤーが増えること間違いなしだろう。

……倒した時に落ちた装備もなかなか壊れ性能だったし。


あとは、デマと思って流すプレイヤーや嘲笑するプレイヤーもいるだろう。

……まあ、ドロップ品のスクショまで貼ってあるからそんなプレイヤーは極小数だろうけれど。


……はぁ。どうしたものかねぇ。

普通なら、単に情報を流すだけで済む。

しかし、今回の強欲龍(ファフニール)の出現は、出現条件がまだ全くわからない。

私の中の推論だと、おそらくあの子(ユウ)の存在が条件な気がする。

ランダムである可能性もあるし、ユニーククラスがパーティーに何人いるかという規定なのかもしれない。


……ただ、なんとなくうちの子のあの騎士の格好が脳裏にちらつくのだ。


……もしも、優のことをこの記事に書けば、おそらく優は引っ張りだこ間違いなしだろう。

しかし、次に出現する確証もないし、いらない軋轢を招くのも必然だろう。

となれば、あの子のことは伏せるべきだろう。

……やはり、一番はランダム出現ということにしておこう。

極力何が起きたのか、どうやってクリアしたのかは誤魔化して書く方向で。


そんなわけで、私は再びディスプレイに文字を打ち込み始めた。

んーと、記事のタイトルは……そうね。

「王龍に久しぶりに会いに行ったら凄いことになったんだけどwww」でいいわね。


記事をあげ終えると、どっと疲れが出てベッドに倒れ込んでしまう。

……そういえば、あの子はまだ起きてるだろうか。

少し気になったので、部屋まで行ってみよう。

そう思って、体を持ち上げる。

時刻は12時前。

……良い子は寝る時間だし、弟の管理も姉の仕事だものね。

なぜか心の中で妙な言い訳をしつつ、弟の部屋の前に立つ。

そーっと、ゆっくりと物音をたてないように入ってみると、もう既に弟はちゃんと寝ていた。

あどけないその寝顔を見ていると、微笑ましくなって胸が温まる。

……なんとなく、頬をつついてみる。


「……可愛い」


思わず呟いてしまった。

……こんな可愛い弟のために時間を費やせたなら、きっとそれは有意義な時間だろう。

そんな風に思えてしまう自分に少し呆れた。


「……ブラコン、なのかもねぇ。」


髪を撫でてやると、気持ちよさそうに頬を緩める。

……これはダメね。人をダメにする寝顔ね。

そんなどうでもいいことを考えながら周りを見渡すと、ふと携帯が目に入った。

携帯の電源はつけっぱなしで、なにやらメールの画面を開いたままだ。


うーんと、メールの内容は……ふむふむ。なるほどねぇ……。

咲ったら、なかなかやるじゃない。

携帯の電源を消して、再び優の頭をひと撫でしてから立ち上がる。

……これも、姉としての務め……かな?

そんなことを思いながら、優のクローゼットを開けた。




「……ふぅ。これでいいわね。」


自分のやったことに満足しつつ、優のベッドの前に再びへたり込む。

……可愛いなぁ。

弟の寝顔を眺めて和む。


「……お姉ちゃん、頑張ったから、あんたも頑張りなさいよ、優。」


そう呟いて、ゆっくりと立ち上がって、ドアを閉めた。











~三日後~


イブキ「皆様、こんにちは!アヴァロンゲート広報部のイブキです!」


モモタロー「おなじく、広報部のモモタローだ。」


キクチ「おなじく、広報部のキクチです。」


イブキ「さて!アヴァロンゲート速報のお時間なわけですが……今回も、一番話題のニュースは変わらずでした!」


モモタロー「《黒騎士》カノンの、強欲龍のニュース、だな。」


キクチ「現在、竜の渓谷にはたくさんのプレイヤーが溢れているそうですって。……そんなに強欲龍が見たいんでしょうか?」


イブキ「そりゃ、一度は戦ってみたいですよ?私だって。

……でも、何百という数のパーティーが挑んで、未だに出ていないからデマだったのでは?という噂も出始めていますね。」


モモタロー「あの《黒騎士》がそんな意味の無い嘘をつくとは思えん。……やはり、何らかの条件があるのではないか?」


キクチ「《黒騎士》さんはドロップ品の情報やボスのスクリーショットは公開しましたが、パーティーの内容に関しては何も語っていませんからね。」


イブキ「あ!《黒騎士》のパーティーで思い出しました!先日、《黒騎士》のパートナーとしてずっと動き続けていた《花巫女》に、彼氏がいるという噂が流れているそうですね!」


キクチ「へぇ……あの《花巫女》さんがですか?」


イブキ「ええ、男に触れられたくないからという理由で街中に雷落としたりする、あの《花巫女》さんにです!」


モモタロー「……そのプレイヤーの名前、教えてくれ。今すぐ殺しに……」


イブキ「モモタローさん!ダメですよ!そんなことしたら《花巫女》さんが悲しみますよ?」


モモタロー「うっ……。そうか。」


キクチ「モモタロー君、流石に男泣きはやめてくれないかな?ちょっと気持ち悪いよ?」


モモタロー「だ、だって……ひっぐ、あんな、かわ、いい、子に!……ひっぐ、彼氏……だ、なんて!」


イブキ「モモタローさん、とりあえず涙吹いてください。あと口調も直してくださいです。」


モモタロー「……そ、そうだな……」


キクチ「……噂だと、最近《黒騎士》と《最恐》の二人がよく模擬戦をしているらしいわよ?」


イブキ「……なんでですかね?」


キクチ「《黒騎士》は、現在最強といわれる《破壊神》にすら並ぶと言われるほどの実力の持ち主。プレイヤースキルだけなら、おそらく誰よりも強いと私は判断しているわ。」


イブキ「キクチさんがそんなに人を評価するなんて珍しいですね?」


キクチ「かくいう私も、あいつに決闘を挑んで負けた口だからね。……《黒騎士》は化物よ。あいつは本当に別格だと思うわ。」


モモタロー「……ならば、《最恐》が《黒騎士》と模擬戦をするのもありえないことではあるまい。」


イブキ「プレイヤースキル磨きのためっすかね?」


モモタロー「ああ。悔しいが、《黒騎士》の強さは本物だからな。」


キクチ「ちなみにその試合、《花巫女》が観戦してるみたいね。」


イブキ「あ、キクチさん余計なことを……」


モモタロー「……つまり、《最恐》が《花巫女》の彼氏……?ならば、《最恐》を殺せば……」


イブキ「こ、今回はここまでっす!ご視聴ありがとうございました!」


キクチ「ありがとうございました。また明日。」


モモタロー「……最恐コロス最恐コロス最恐コロスサイキョウコロス……」




この放送の後、ギンに挑戦しに来るプレイヤーが急増したとかしなかったとか……

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