第一章 エピローグ
6月8日 月曜日。
私の心をあらわしたような雨降りだった。
傘をさしながら、ゆっくり歩いて学校へ向かう。
なんであの時の私はあんな事言っちゃったんですかね……?
過ぎたことを内心でぼやく。
……後悔しても、仕方ない、か。
そう思って、前を向く。
もう見慣れた学校を視界に見据えて、私は校門を踏み越えたのだった。
昨日は、ユウがリアルの方で「大事な約束」があると言っていたので、私と兄さんの二人でひたすら虫の巣窟に潜っていました。
お金を渡してしまったことで、かなりお財布が軽くなってしまったので、再びお金稼ぎです。
……私の分だけ多く持たせるように指示したユウのお姉さんは、こうなることを見抜いていたのでしょうかね?
そんなことを頭の片隅で考えつつ、回復魔法を兄さんにかけます。
昨日の王龍戦以来、兄さんはどうやらプレイヤースキルを磨くことを決意したようです。
……兄さんは近接職なのに、何故か攻撃スキルを使いません。
本人曰く、「対人戦じゃスキルは使い物にならねぇし、狂化状態で使えねぇ。」だそうです。
明らかにそっちの方が効率上がりそうですし……
というか対人戦前提って怖いんですけど。
我が兄は一体どういう方向へ進もうとしているんでしょうか……?
そんなわけで、一昨日の祝勝会中に、ユウのお姉さんに特訓を頼み込んでいたそうです。
なんとかお願いを聞いてもらえたみたいで、喜んでいました。
私ですか?私は対人戦なんて出来ませんよ。僧侶ですし。
閑話休題。
出来ることなら、昨日に戻りたいものです。
というか、一生昨日みたいな日が続けばいいのに。
そんなどうでもいいことを考えながら靴を履き替えます。
「……はぁ。」
……どうしましょうかねぇ。
悩みを抱えながら、階段を一段のぼるたびに、足が重くなります。
下を向いて、ゆっくりと階段をのぼります。
……私の輝かしい高校生活は、入学二ヶ月で終わりを迎えたんですね。
元から輝いていたわけじゃないので、あまり変わらないかも知れませんけれど。
そんなことを考えながら歩いていたから、前から来る足音に気が付きませんでした。
「……え?」
気づいた時にはもう遅く。
「ふげっ!」
向こうも前を見ていなかったのか、私の胸のあたりに顔をぶつけて、変な声を上げました。
私は体勢を維持できずに、後ろ向きに尻もちをついてしまいます。
結果、目の前から来た子に、押し倒されてしまう形になってしまいました。
……私は身長が高いほうなので、その子が抱きついているようにしか見えないのですが。
こんな状況を冷静に分析しているあたり、私も少しおかしくなってるんですかね、ストレスで。
「大丈夫ですか……?」
そう声をかけると、その子は状況が飲み込めていなかったみたいで、混乱して慌てだします。
「あ、あの、ご、ごごご!」
……あれ?この声、どこかで聞いたことがあるような……?
「ごめんなさい!ユズ!」
……え?
なんで、ここでその名前が出てくるの……?
呆けた私の顔を見て、自分の失言に気がついたのか、その子がまた慌てだします。
「……あ、これは、えっと、色々ちがくて!そ、その……」
ようやく前髪で隠れていたその子の顔が見えました。
その瞬間、思わず固まってしまいました。
……いや、運命的すぎませんかね?だって、だって……
「……ユウ?」
こんなところで友達と出会うなんて。
~第一章 銀色の兄妹 完~




