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弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
1章 ~銀色の兄妹~
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第一章 第七話 ~そして少年は始まりを超える~

~午前8時45分 始まりの森にて~


僕は二人と別れ、第一の街へと転移した後、すぐにある場所へと向かった。

そこは僕にとって始まりの地。

ランとライムに出会った場所。

プレイヤーとして初めて戦った場所。

そして……最初に死んだ場所。


あの洞穴へ、再び僕らはおもむく。

それは今まで積み重ねてきた僕らの努力を証明するため。

そして、自分の中で決めた約束を守るため。

なにより、乗り越えて、みんなで(・・・・)強くなるため。


「……行こう。」


『うん。』『はい。』


薄暗い洞穴の中へ、僕らは足を踏み入れた。


洞穴の中は相変わらずで、少しひんやりとした風が吹き抜ける。

奥へ進むと、僕らの目的のモンスターは、ちゃんと変わらず鎮座していた。


『……ようやく、来たか。』


純白の鎧の騎士が、仮面の下の真紅に輝く瞳で僕らを見る。

……恐れるな、僕は一人じゃない。僕一人で倒しに来たんじゃない。ライムとランも、一緒だ。


「……もう一人、いませんでしたか?騎士さん。」


『生憎、相方は世界の修正力によって消されてしまってな。汝らの相手は我が努めさせてもらう。』


「……分かりました。」


そう言って、ランを呼び出す。

念のため、ライムは待機だ。


『……いい目だ。』


そう言って立ち上がる神聖騎士。


『問おう、汝の望みを。』


……僕の望みは、決まっている。

神聖騎士(コイツ)に倒された時から!


「……僕達に、力を貸してください!」


そう、僕の望みはたった一つ。

この騎士(モンスター)を、仲間にすること!

神聖騎士(コイツ)を仲間にして、僕らはもっと強くなる!


『……いいだろう!ならば、我にそれだけの実力があるか、示すが良い!』


そう言って、腰につけていた白い両刃の大剣を僕らに向ける。

甲冑の下から見える真紅の赤い光は僕達を見据える。


「……行こう!ラン!」


『うん!』


超えるんだ、最初の壁を!


「ラン、《炎竜の爪撃(ボルケーノ・クロー)!》」


そう命じると、ランの小さな手に真っ赤な豪炎がまとわりつく。

その手を振り下ろすと、炎の斬撃が神聖騎士へとまっすぐ飛んでいった。

もちろん、それでも始末できるわけもなく、神聖騎士は己のスキルを叫ぶ。


『《聖なる剣(ディバインソード)》ッ!』


そう叫んで振り下ろされた純白の大剣から、巨大な光の斬撃が飛んでくる。

その強大な威力にランの爪撃が押し負け、こちらにその斬撃が飛んでくる。

威力が弱められているとはいえ、僕の体力ではおそらく即死。

でも、こういうエネルギー攻撃に対してなら、僕は無傷で耐える方法を持っている。


「ライム!」


『分かっています。』


左手を前に出すと、手の甲の紋章が輝いて手の平から薄いピンク色のジェル状の液体が花のように開く。


『ほう……』


これに関しては神聖騎士も思わず感心したようだ。


「《吸収(アブソーブ)》ッ!」


僕がそう叫ぶと、光の斬撃は花びらに包まれて消えた。


『……現在、充填率22%。まだまだ行けます。』


……ライム、多分ここからは近接戦闘になると思う。でも、あの騎士は追い詰められたらあの光の斬撃をまた飛ばしてくるだろうから、その時まで準備しておいて。


『了解しました。』


ラン、多分相手は闇属性特攻を持っているだろうから、光属性で攻めるよ。


『了解!』


「《モード:光竜(シャイン)》!」


僕の声に合わせて、ライムの体が輝く。

元の幼竜の姿から、僕と同じくらいの背丈の白い竜に姿を変える。


「《光竜の爪撃(シャイン・クロー)》!」


ランの両手を白い光が覆う。

神聖騎士も少し身構えた。


『ふむ……ただ放つわけではないのか。』


「ええ。こっちが本来の形です。」


『説明感謝する。』


そう言って神聖騎士も剣を構えた。


『さあ、始めようではないか。』


「ええ。行け!ラン!」


そう命令すると、ランが飛び出す。

距離を詰めたランが、光り続けるその白い腕を振り下ろす。

しかし、神聖騎士がそれをまともに受けるはずもなく、大剣で受け止めてランの隙のできた腹に蹴りを入れて吹き飛ばす。

そのまるで生きているかのような動きに驚きつつ、ランに治癒魔法を行使する。


いや、生きているのだろう、この騎士は。

肉体は果てようとも、その強靭なる精神をもって主との誓いを果たすべく現世へと復活したこの騎士は。

今、僕の目の前で構え続けるこの騎士は、その強き意思と卓越した剣技、そして生きようとし続ける力を何一つ色褪せることなく持ち続けている。

……だからこそ、だからこそ僕達は。


この誇り高き騎士に認めてもらいたい!


その思いを胸に、もう一度神聖騎士と向き直る。


「ラン!」


名前を呼ぶだけでランは接近してもう一度攻撃を始める。

振り下ろした右手は大剣で弾かれ。

弾かれた反動を利用して繰り出した左手も大剣の振り下ろしで防がれる。

そうして隙のできたランに向けて大剣を斬りあげる。

咄嗟にランは両腕を胸の前で交差させて攻撃をなんとか防ぐ。

しかし、そこで出来てしまった隙を見逃すわけもなく、騎士は大剣を再び振りかぶった。


『《聖なる剣(ディバインソード)》!』


「ッ!《吸収(アブソーブ)》!」


神聖騎士の振り下ろされた光の斬撃が当たる前に、ライムをランの前に呼び出して先ほどと同じように防ぐ。

今回は威力を軽減せずに受けたが、花びらの盾は壊れることなく包み込んでくれた。


『充填率52%。ユウ様!』


分かってる!これで決めよう!


「《倍返し(フルカウンター)》!」


僕の声と同時に、僕の紋章が光り輝き、突き出した右手からピンク色のつぼみが出現する。

そして、つぼみは開花する。

美しい花びらは回転し、その中心から巨大な光の奔流が放たれた。


『……ムッ!』


流石の神聖騎士も焦ったのか、剣を振りかぶる。

しかし、もう遅い。

光が、薄暗い洞窟を塗りつぶす。

僕も、ランも思わず目を閉じてしまうほど強い光。

これは勝ったと確信した。


しかし、神聖騎士はやはり一筋縄では行かなかった。

開いた目に映る後継に思わず絶句してしまう。

あれほどの威力の攻撃をしても、神聖騎士は左腕を犠牲にしただけで済んでいた。

……おそらく盾をとっさに取り出したんだろう。足元に破片が少しだけ残ってる。

思わず歯噛みしてしまう。

強い。想像以上だった。

……でも、だからこそ、この騎士に勝ちたい!

そう思って、再び身構える。

しかし、神聖騎士はこちらに攻撃をしてくることなく剣を地面へと突き立てた。


『……汝に問おう!汝が望む王の姿とは何だ!』


いきなり問われたその質問に、最初は疑問符が飛び交う。


『昔の我が王は、民を導き、たとえその身を犠牲にしてでも配下を守り抜いた、王の中の王であった!

汝は、民のために、配下のために己を犠牲にできるか?』


……自分を犠牲にして、配下を助ける……か。


「……僕には、そんなことはできません。」


『……取り繕わないのだな。』


「僕には、そんな力はありません。それに、僕はそんな人になりたくないですし。」


『……ほう?では問おう。

汝の理想の王とは、何だ?』


……理想の王。それは、きっと……


「みんなで強くなって、みんなで泣いて、みんなで笑って、みんなで負けて……そんな、常にみんなの隣にいつづけられる王様が、僕の理想です。」


そう、自信をもって答える。

そう、これが僕のなりたい王様。

ランとライムの主として、僕はなれるなら、そんな王様になりたいんだ。


『……フッ。それもまた、面白い。』


そう呟いて、赤い目を僕に向ける神聖騎士。


『……よかろう!汝の理想、叶える力をくれてやろう!』


そう言って、左手を出す神聖騎士。


「……え?……いいんですか?僕達、あなたに勝ててませんけど。」


『フハハハハ!勝てると思われていたとはな!元から負ける気なんぞ甚だ無かったわ!』



その言葉に思わず苦笑する。

強いなぁ……まだ僕らじゃ敵わない。

神聖騎士の左手に、僕の左手を重ねる。


『……契約は完了した。これより、我は汝の剣だ。汝の鎧だ。汝の盾だ。……自由に使うが良い。』


そういうと、神聖騎士は紋章の中に吸い込まれるように収まった。

すると、ログにすごい勢いでメッセージが流れ出す。


《神聖騎士が仲間になりました》

《神聖騎士の名前が変更可能です》

《神聖騎士の初討伐報酬が選択可能です》

《使役獣ライムのレベルが上がりました!28→29》

《使役獣ランのレベルが上がりました!29→30(MAX)》

《使役獣ライムがスキル《擬人化》を使用可能になりました》

《レベルアップ!27→29》

《未振り分けのステータスポイントが66ポイントあります》

《一件のメッセージが届きました》


……えーっと、とりあえず。


「お疲れ様、ラン、ライム。」


二匹にそう声をかける。今回も無理させてごめんね。


『ユウもお疲れ〜。僕はちょっと中で休むね。』

『ユウ様、お疲れ様でした。少し休憩なさったらいかがですか?』


うん、そのつもりだよ、ライム。

そんなわけでその場に座り込む。

それと同時に、ランも紋章の中に入り込む。


「とりあえず、騎士さんの名前、決めなきゃね。」


『うむ。我に似合う格好いい名前を頼むぞ!』


「……ぜ、善処します。」


うーん、ランもライムも割と安直だしなー。

うーん……


「あ、ディーなんてどうかな?」


カタカナ表記だとディバインナイトだから、ディー。


『……安直ではあるが、まあ、良いだろう。

これから我の名前はディーだ。よろしく頼むぞ、ユウ……殿。』


うん、よろしく、ディー……さん。

さて、次は討伐報酬だけど……


「うーん……これは後で決めよう。」


色々と面白そうなのばっかりだし。

……っと、メッセージが届いてる。

《擬人化》ってスキル、すごく興味をそそられるけれど、とりあえず、一旦無視の方向で。


メッセージを開くと、先ほどメッセージを送った相手からだった。

メールの本文は、「乗った。」としか書かれていない。

でも、それだけで満足だ。

これで竜の渓谷も攻略可能だろう。


……さて。

視界の右上に映るデジタル時計の時間は9時02分。

……ライムの擬人化、試してみようか。

そう思って、少年は洞穴の暗闇の中、スキルを発動させるのだった……

ハローです。作者です。一兄さんです。

そんなわけで、本編の方ではようやくディーさんを仲間にしたわけですが。

ここでは、感謝の言葉を述べさせてもらいます。


祝、1000pt突破〜!


とてもありがたいです。

ありがたすぎてドライフルーツのパイナップルがとても美味しく感じます。

美味しいですよね、アレ。


本当は10万PV突破と合わせて報告させていただこうと思ったのですが、こちらの方が先に達成してしまったので、先に報告させてもらおうと思います。

他の方の作品と比べられると、かなり低い数値かも知れませんが、それでもやっぱり嬉しいです。

これから先も、応援していただければ幸いです♪

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