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弱虫テイマーは今日も頑張る。  作者: 一兄
1章 ~銀色の兄妹~
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第一章 第三話 ~問題を抱えた二人組~

ユニーククラス。

それはこの世界において、選ばれたプレイヤーである証。

そして同時に、孤高であることを余儀なくされた不幸なプレイヤーである証でもある。

ユニーククラスは全て、何かにおいて『最も優れた』才能を持つ。

普通のクラスでは到達することのできない高みまで、いともたやすく上り詰めることが出来てしまうクラス。

もちろん、その秀でている才能が必ずしもプラスであるとはいえないが……。


古来より、他者よりも強すぎる者は孤独だ。

絶対的強者に、仲間なんてものはいない。

ゆえに、ユニーククラスのプレイヤーは普通のクラスのプレイヤーと馴れ合うことはほぼ無い。


たった一つ、仲間を作る方法があるとするならば。

ユニーククラス同士が組むことしかないのかもしれない。


~『アヴァロンゲート速報』の記事の一部より抜粋~










~午前7時15分 第八の街の酒場にて~


青年の口から告げられた内容に、少し驚いたがどこか納得した。

僕と、同じ……かな。


「……今まで、ずっと二人でやってきたんですか?」


僕がそう聞くと、二人は少し気まずそうな顔になる。


「……いや、少し前まで俺とこいつは別々のパーティーを組んでいた。今一緒にやってるのは……まあ、利害の一致ってやつだ。」


「……え?」


パーティーを……組んでいた?


「俺達二人共、少し問題を引き起こしちまってな。それで、パーティーを脱退して今は二人で……借金返済してるようなもんだ。」


「借金……返済……?」


……ゲームの中の話だよね?


「……ダンジョン攻略も、その一環です。……私達は今、とにかくお金がいるんです。」


「んで、あのダンジョンのボスである『インセクトキマイラ』は、金稼ぎにはもってこいってわけだ。」


「……あんまり聞いちゃいけないのかも知れませんが、その、借金の額って、どのくらいなんですか?」


……インセクトキマイラの素材は、街中でも破格で取引されることが多い。

一体倒せば百万単位のゴールド分の素材が手に入るはずだ。

しかし、もちろんその分倒すのもかなり難しい。

現状最高レベルのレベル30のプレイヤー4人のパーティーで、なんとか倒せるレベルだ。

もちろん、その中にユニーククラスがいれば話は変わってくるけれど。

そんな奴を倒さなくちゃいけないほど、切羽詰る金額って……。


「…………俺が560万ゴールド。ユズは1000万ゴールドだ。」


「なっ……!」


1000万って……デタラメすぎる。


「……なんでこんなことになったのは、あまり、聞かないで欲しいです。」


「……わかりました。」


……嫌な予感がする。

関わっちゃいけない予感がすごくする。

……でも。


『ユウ様……』


ライムが心配そうに僕の名前を呼ぶ。

大丈夫。もう、僕のスタイルはずいぶんと前に決まってるから。


「僕の力でよければ、今回の話、受けさせてもらっていいですか?」


これでいい。

たとえその先に損しかなかったとしても。

人助けは、きっと自分のためになる。

僕はそう信じているから。


「本当かっ!?」


「ええ。僕の力でいいなら。ちょうどレベル上げもしたかったところですし。」


そう言って微笑むと、二人共喜んでくれた。


『それでこそ、私たちのユウ様です。』


そんな声が、僕の中で響いた。










~午前7時30分 涅槃の沼地にて~


「ラン!『竜の咆吼(ドラゴン・ロア)』!」


僕がそう命令すると、ランは頷いて大声で吼える。

ランの咆吼を聞いたモンスター達はスタン状態に陥り、少しだけ隙が生まれる。

その隙を見逃さず、再び命令を下す。


「ラン、『炎竜の吐息(ボルケーノ・ブレス)』。」


範囲魔法『炎竜の吐息』を喰らったモンスター達は、跡形もなく消えていく。

……ふぅ。


「ラン、お疲れ。」


そう言ってランの頭を撫でると、嬉しそうに鳴き声で返事をする。

そうやってランとじゃれていると、後ろから拍手が聞こえた。

振り向くと、銀髪の少女が手を叩いて微笑んでいる。

青年の方はなんだか不満そうだ。


「えーっと、これでいいですか?」


「申し分ないです。兄さんもそうでしょう?」


「……いんや?全然?俺のがもっと早く片付けられるからな。」


……そういえば、妹さんの方の名前はわかったけど、お兄さんの方の名前、まだ知らないな。


「あ、あの、一応自己紹介、しませんか?」


そう提案してみる。


「……ああ、まだしてなかったな。んじゃ、まずは俺から。

俺の名前はギンだ。クラスは狂戦士(バーサーカー)。ランクは30。一応ベータテスターだ。」


「バーサーカー……」


すこし考え込む。

バーサーカーという物騒な名前から察するに、近接型であることは確定だろう。

……なんとなくだけど、パーティー組めなかった理由がわかった気がする。


「……もしかしてですけど、ギンさん、そのクラスって戦闘時に暴走したりします?」


「……そのとおりだよ。このクラスは戦闘時に暴走して、敵味方無差別に攻撃を始めるわけさ。」


そう言ってため息を吐くギンさん。


「その代わり、大幅にステータスが伸びるって感じですか?」


「ああ。だいたい五倍くらいになる。」


「五倍っ!?」


思わず声を上げてしまう。

……理性を失うということを踏まえたら、対等な対価なのかな?


「……じゃあ、次は私ですね。ユズです。そこのバカ兄さんの妹です、一応。クラスは僧侶(クレリック)。レベルは27。私は正式版から。」


「バカとはなんだ、バカとは。」


「あなたの代名詞でしょう?兄さん。」


二人のそのやりとりに、思わず苦笑する。

……大方、ユズさんがギンさんに仕方なく付き合ってる感じだなぁ……。

兄妹ってそんなもんなんだろうか?

僕達姉弟も同じような感じだし……。


「んじゃ、次はお前な。」


「わ、わかりました。では……」


……改めて自己紹介するのって、なんか恥ずかしい。


「えーっと……ユウです。クラスは調教師(テイマー)。レベルは27です。正式版スタート勢です。」


「……テイマーか。」


召喚士(サモナー)とは違うんですか?」


ユズさんの質問に頷く。


「召喚士は規定のモンスターをレベルアップによって開放して、そのモンスター達をMP消費で呼び出します。モンスターはプレイヤーに無条件で従順で、使えるスキルも決まっています。

対して、調教師は仲良くなって契約を交わしたモンスター達をMP消費無しで呼び出せます。そして、このクラスがユニーククラスたる所以は、『モンスターの意思の存在』です。」


「「モンスターの意思?」」


「ええ。モンスター達は自分達の意向に反することはしませんし、プレイヤーの思惑通りに動くこともなく、基本的に自己判断で動きます。まあ、お願いしたら大抵聞いてもらえますけど、それはあくまでお願いであって強制力は無いんです。」


「……それって、命令が気に入らなければ自分の使役するモンスターにやられるなんてケースも……」


「ええ。普通にあると思います。僕は今のところありませんが。」


「……すごい微妙な職業ですね。」


ユズのその言葉に苦笑する。


「でも、僕はかなり気に入ってますよ。こうしてこの子達とすごすのは楽しいですし。」


そう言ってランを抱き上げる。


「……撫でてもいいですか?」


ユズがそう聞いてくる。

ラン、いいかい?


『うん。別にいいよ。』


「いいって言ってます。」


「え?意思疎通ができるんですか?」


「はい。これも調教師のスキルの一つです。」


「というか、できなきゃ仲良くなりようがないわな。」


ギンさんの言葉に頷く。

このスキルがなかったら、僕は多分このゲームをやめてた気がする。

孤独感に苛まれなかったのも、二匹のおかげだ。


「わ〜。なんか、生きてるって感じです〜。」


「いや、生きてますからね?」


ユズさんがランを撫でながら、そんなことを言う。

ランも撫でられて気持ちよさそうだ。

ギンさんがなんとなく撫でたそうにしている気がするけど、多分気のせいだと思う。うん。


「さ、自己紹介も終えたことですし、行きましょうか。」


「待て、最後に聞きたかったことがある。」


ギンさんの静止の声がかかる。


「……出会った時も聞いたことだが、その装備、どういうことか教えてもらおうか。」


……うん?装備?


「武器を持てないことですか?」


「いや、そっちじゃねぇ。そっちはなんとなくだが予想がついてた。俺も同じだからな。」


ええ?じゃあ他に何が……


「……その防具だよ!なんで初期防具の冒険者の服のままここまで来てるんだ!」


「……ああ〜」


なんだそのことか。

なんか、攻撃喰らうこともなかったし防具の存在をすっかり忘れてた。


「えーっとですね。防具、これしかつけれないんですよ。」


「……マジかよ。」


「マジです。」


しかも、強化すらできない。

これも、スキル《不器用》のせいだと思う。……不器用関係ない気が……

最初に知った時は悩んだけれど、『当たらなければどうということは無い』思考で戦えばどうにかなってきた。

というか久しくモンスター達の攻撃、喰らってないんだよね。基本避けてるし。


「……不便なクラスなんですね。あなたも。」


そう言ってユズさんが哀れんでくれる。

不便なんてあんまり感じたことないけど。


「でも、この子達が守ってくれるから大丈夫です。」


ライムが基本殲滅してくれるし、攻撃は避ければ問題ない。避けれない攻撃はライムが防いでくれるし。


「それじゃ、お前はいつも見物人なのか?」


「いや、治癒魔法で回復しつつ回避するっていう戦闘スタイルですね。」


おかげで治癒魔法に関しては最高レベルだ。今じゃ本職の回復職(ヒーラー)と遜色ないくらい回復できる。まあ、これ以上上がる可能性がないと考えれば本職には劣るけれど。


「んじゃ、お前はヒーラー兼アタッカーってわけか。……なんか、一人なのにパーティーみたいだな。」


「確かに、言えてますね。」


万能といえば聞こえはいいけれど、器用貧乏な感じがしなくもない。


「さて、じゃあそろそろもぐりましょうか?」


「おう。改めて、よろしくな、ユウ。」


「はい、よろしくお願いしますね、ギンさん。ランじゃ倒せない敵はすべてギンさんがメインで攻撃になりますから、大変ですよ?」


「雑魚処理しなくていいってだけで随分楽だ。回復職(ヒーラー)が二人もいれば、死ぬこともない。」


ギンさんが意地悪そうに笑う。


「ユウ、私からもよろしくお願いします。」


「はい、よろしくお願いしますね、ユズさん。僕も精一杯回復するので、ユズさんもお願いします。」


「……ユズでいいですよ。多分同い年でしょうし。」


「……そうですか?……なら、よろしくね。ゆ、ユズ。」


女の子を下の名前で呼ぶとか、さーちゃん以来だ。ちょっと緊張する。

そんな僕の心の声が聞こえたのか、ユズはクスリと笑った。


「ええ。よろしくお願いします、ユウ。」


そして、僕達は歩き出した。

暗い洞窟の中へ。

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