少年の決意
「……何度言ったらわかるのかしら。ここは私のお店であって、我が物顔で入ってくるのは……」
諦めたようにため息を吐きながら頭を抱えるシャルさん。
なんだかすごく気持ちがわかる…………。
「シャルさん……被害者が僕だけじゃなくて安心しました……」
「……あんたもかなり苦労してるみたいね……」
テーブル越しにぐっと握手するシャルさんと僕。
ちなみに迷惑をかけてる本人はソファーにもたれかかって呑気にあくびしてます。
「……さて、じゃあ。ゆーくん、お願いします。」
さーちゃんの言葉に頷き、左手を前に突き出す。
「出てきて、ライム、ラン。」
そう言うと、魔法陣が机の上に発生し、光り輝く。
すこし眩しい光が部屋を照らした後、光が収まった後にはライムとランが出現していた。
「……うーんと、こんばんは?かな。」
「あ、こんばんは。主様。」
「こんばんは。ご主人様。」
僕が挨拶するときちんと挨拶を返してくれる。
「……なあ、ユウ。なんて言ってるんだ?この2匹。」
「……え?普通にこんばんはって返してくれてるよ?」
「私たちからだと、ラン君……だったっけ?が、鳴いてるようにしか聞こえないんだよ、ゆーくん。」
あー、やっぱりそうなんだ。
「当たり前だよ。主様しか契約してないんだし。」
ランがそう答えるも、やはりみんなには鳴いてるようにしか聞こえてない様子。
「……で、この子達は何かできるの?」
シャルさんがそう尋ねてくる。
「えーっと、ランの方はブレスを吐けたり爪で引っ掻けたり……かな?ライムは形を変形させたり出来るよ。」
「どんな形?やってみてくれる?」
シャルさんの指示に従い、昨日の戦闘でやった剣の形と盾の形を作ってみる。
「ふむふむ……粘着性は低く、さほど衝撃には強くない……ってところかしら。伸縮性は高そうね。」
シャルさんの下した評価に頷くさーちゃん。
「……盾としての利用はともかく、武器としてはちょっと扱いが難しそう。」
「そうね、衝撃で戦う武器、ハンマーやメイスなんかには変形しない方がいいかも。」
「うーん、普通に他の武器を使った方が威力が強そうに感じるっす。」
さーちゃんの意見に賛同する二人。
そこでようやく、ずっと黙っていた姉さんが口を開く。
「……ユウ。落ち着いて聞いて欲しいの。」
「……どしたの?姉さん。」
訝しげな視線を姉さんに向けると、いつになく真剣な顔で姉さんは口を開いた。
「……そのテイマーって職業なんだけれど……」
「うん。」
「……ユニーククラス史上、最弱だと思うわ。」
……そうなんだ。
まあ、さーちゃんのクラスはいろいろとおかしいし、ナン君のクラスも強そうだしね。
まあ、このクラスにはこのクラスなりの良さがあるんだと思う。
一応、ユニーククラスなわけだし。
「……あのね、ゆーくん。多分ゆーくんの想像してる最弱と、カノンちゃんが言ってる最弱は違うと思う……かな?」
僕の考えを見抜いたみたいにさーちゃんが言う。
「……ユニーククラスの中で、ってことじゃないの?」
……まさか、ユニーククラスの中でってことじゃなくて……
「……そう、そういう意味じゃなくてね……」
さーちゃんが顔を俯かせて、申し訳なさそうに言う。
……ちょっと待って、ということは……?
「現状だと、全クラス中、最弱かもしれないわ。そのクラス。」
姉さんの言葉で、頭が真っ白になった。
「……まずね、武器を持てない時点でプレイヤーが攻撃できない。ライム……だっけ?あの子を武器代わりで使えるのも限度がある。」
……その通りだと思う。
現に、あの騎士には通用しなかったし、あの剣で斬ろうと思ったら相当もろいモンスターしか切ることは出来ないと思う。
「……それに、呼びだせるモンスターも弱すぎるわ。ドラゴンはまだしも、スライムはあまりに弱い。……それに、ドラゴンもまだ幼いせいで、火力面が乏しいわ。」
姉さんの正論が胸に突き刺さる。
……その通りだ。ほかの職と比べれば、ランの火力なんてないにも等しい。
「街中でのモンスター召喚なんて、ただ目立つだけでなんの意味もない。かろうじて治癒魔法はあるみたいだけど、それも本家の回復職にくらべれば微々たるものでしょ?」
……確かにそうだ。街中で呼び出せる意味なんてない。治癒魔法だって、二匹を全快させることすらできない。
……でもさ。
「それに、その出会ったと言っていた騎士を仲間に出来たなら話は変わってくるけれど、出来なかったんでしょう?」
……そうだよ。仲間にできなかったよ……。
でも、でも!
「それに「もういい!」」
姉さんの言葉を遮る。
たとえ弱くても、それでも僕は!
「……僕はランとライムと一緒にこのクラスで強くなる!誰になんて言われても!」
そう叫んで立ち上がる。
二匹を抱き抱えて走り出す。
「あっ!ゆーくん待っ「シャロさんコーヒーごちそうさまです!」……」
さーちゃんの静止の声も今は耳に入らない。
品物を見ていたお客さん達の好奇の視線が突き刺さるがそれも今は気にならない。
二匹を抱えて、ドアを強引に開ける。
来る時と同じように、全力で走る。
周りのみんなが不思議な顔で見てくるけど、それも無視する。
ランとライムがなぜか体をぺしぺし叩いてくるけれど、それも無視だ。
「……絶対、諦めるもんかぁぁぁぁ!!」
大きな声で、大空へ叫んだ。
「……いいんすか?カノンさん。追いかけなくて。」
ユウが走り去った後、ナンがカノンに尋ねる。
「大丈夫よ。ナン君。今のあの子に何を言っても聞かないわ。……それにね。」
カノンは微笑む。弟には決して見せることのない美しい表情で。
「弟を信じるのも、姉の仕事なのよ。」
そう言っていつになく真剣な表情でナンの方を向く。
「ナン君、あの子とこれからも仲良くしてあげてね?」
「……はい、もちろんです。」
そう返事して、ナンは立ち上がる。
「……そろそろ俺も行きますね。ここまでありがとうございました。」
「どういたしまして。あたしもさっきから慌てふためいてるこの子を引き連れてそろそろ行くわ。」
そう言ってカノンはサキの襟元を掴む。
「じゃあね、ナン君、シャル。また今度。」
「はい。また今度。」
「二度と来るんじゃないわよ!」
シャルの返答に笑いながら、カノンはサキを引きずって出ていった。
「じゃ、シャルさん。俺もこれで。」
「わかったわ。……まあ、武器のメンテナンスくらいならしてあげるから、……また来なさい。」
「はい。それじゃ。」
そう言って、ナンも出ていった。
「……コーヒー、残ってるじゃない。」
一人残された少女は、そう呟いた。
作者「ハローです!最近、時間帯によって挨拶を使い分けるのが面倒くさくなって、「ハロー!」と言っておけば全部許されるんじゃないかと思えてきた一兄です!」
優「……そんな変人作者にツッコミを入れる星原優です。」
咲「そんな冷ややかな目で作者を見るゆーくんが大好きな久城咲です!」
花音「何この自己紹介。」
作者「まあ、冗談はここら辺にして、お知らせです!
せっかくのゴールデンウィーク!なのに予定が授業で埋まってる私ですが、別にそんな勉強するわけでもないので!
『ゴールデンウィーク中は毎日投稿』します!」
優「いや、勉強しようよ、受験生。」
作者「あー!あー!きーこーえーなーいー!」
そんなわけで、本日4月29日~5月5日まで、毎日投稿です!




