二日目
「あのオンラインゲーム、超おもしろいらしいぜ。」
「私の友達もなんとか手に入れれたらしくってさ〜。」
「あぁ〜!もう一回募集しねえかな〜!」
お昼休み、そんな声がクラスのそこら中から聞こえる。
優はそんな声を小耳に挟みつつも、もぐもぐと自分の作ったお弁当を食べる。
(あぁ、早く家に帰ってやりたい!)
そんな気持ちを胸に、午後の授業ものんびりとやり過ごすのだった。
「よし、今日も頑張るぞ〜!」
頭の中に、「お〜っ!」とランの声が聞こえる。
ライムの控えめな声は、ランの声にかき消されてユウには聞こえなかった。
現在、午後8時。
夕食を食べ終えて、洗い物を終えたユウはすぐにログインした。
復活地点の白い教会の外に出ると、機能と変わることなく賑わいを見せている。
「すごいなぁ……。」
思わずユウはそんな声をもらす。
「約束まで割と時間あるし、どうしよっか。ライム、ラン。」
(そうだね。主様のクラスについて、まだわからないことが多いし、それについて調べてみない?)
(はい。私もそうすべきかと思います。)
「調べるって……。どうやって?」
(この町には、『図書館』ってところがあるらしくって、お金はかかるみたいだけどいろいろと役立つ情報があるみたいだよ?)
(入場料で500ゴルド。借りる本一冊につき、100ゴルドだそうです。)
「……なんで二人はそんな事知ってるの?」
(主様と契約した時に情報がたくさん頭に入ってきたんだよ。)
(私も同じくです。)
「うーん、その契約も、よくわかんないことばっかりだし、調べなきゃね。」
そう、体の中の二人と話しながら、マップに従って歩くユウ。
傍から見れば、ひとりでブツブツと独り言をつぶやきながら歩く少年を、周りのプレイヤー達、そしてNPCすらも不思議そうに見つめていた。
「……多くない?」
思わずユウはつぶやく。
膨大な量の本を前にして。
(全部読めるってわけでもなさそうだよ?主様。)
「え?どういうこと?」
(え〜と、御主人様の右の本棚の上から二段目の列の左から3番目の本を取ろうとしてみてください。)
「……?」
言われた通りに従うと、触れることは出来たが取ることは出来ない。
「見せかけ……ってこと?」
(いえ、多分まだご主人様では読めないだけだと思います。)
「……レベルが足りないってこと?」
(うん。それの右の本をとってみて?)
ランの指示に従い、右の本を取るユウ。
「なになに……『勇者マルスの冒険譚』?
なんか、ありきたりなタイトルだね……?」
(多分、その本は読めると思います。試しに読んでみたらどうです?)
ライムの勧めに従い、机に座って本を読み始める。
物語はごくごくありふれたファンタジーなストーリーだった。
主人公は生まれた直後から周りから疎まれ、蔑まれ、それでも挫けずに人を信じ、人を助け、世界を救い、平穏になった世界でヒロイン達と幸せに暮らす……。
とても王道で、悪くないなとユウは思う。
ハッピーエンドは好きだ。
みんなが幸せになれるなら、それが一番いい。
そんなことを考えていると、ライムがふと気づいた。
(主様、余韻に浸るのはいいけれど、約束の時間、大丈夫?)
「あっ。」
視界の右上のデジタル時計は21時58分を示していた。




