仲のいい姉弟
「あ、姉さん、もう行くの?」
朝食を終え、洗い物をしていた優が、自分の部屋に戻って着替えてカバンを背負って戻ってきた花音に声をかける。
「今日は早く行こうと思ってたから。あ、明日はお弁当よろしくね。」
「わかったー。夕飯のリクエストはある?」
「んー、じゃあカレーにしておいて!多分、咲も連れてくるから。」
「んー。わかった。何時くらいになりそう?帰ってくるの。」
「七時くらいだと思っておいて。」
そう言って優に近寄り、花音はその綺麗な唇を突き出す。
「んっ!」
それをジト目で見る優。
「……何してるの?姉さん。」
「行ってらっしゃいのキス!可愛い可愛い弟にせがんでるの!」
そう言って大きな目をうるうるさせる。
「……姉さん。おかしいから。普通の姉は弟にキスをせがんだりしないと思う。」
「普通の姉と普通の弟ならでしょ?私とゆーはとんでもなく可愛いから大丈夫よ!」
「自分でそれを言うの……?というか、可愛いって言わないで。」
そういって花音の頬をぷよぷよとつつく優。
「……うーん。これはこれでいいわね!」
そう言ってつつかれた所をさする花音。
それをまたジト目になって見る優。
そんな視線から逃れるようにドアの方へ振り向き、ドアノブに手をかける。
「じゃ、行ってきまーす。」
「ん。行ってらっしゃい。」
そう言って優に手を振りながら歩いていく花音。
そんな花音に手を振り返しつつ見送る優。
どこからどう見ても仲のいい姉弟であった。
その後、優もすぐに準備を始める。
白いワイシャツに袖を通し、紺色のズボンを履いてベルトをつけ、青いネクタイを締めその上に紺色のブレザーを羽織り、カバンに教科書を入れる。
そして、忘れ物がないことを確認して鍵を閉め、家を出る。
優が外に出ると、空は雲一つない晴天で、そろそろ梅雨に入ろうかというのにまだまだそれを感じさせない天気だった。
「じゃ、行ってきます。」
今は中に誰もいない自分の家に声をかけ、優は学校へ歩き出した。