復活
意識を取り戻すと、また例の石畳の上で寝ていた。
約2時間ぶりに感じたそのひんやりとした冷たさに、少し心地よさを覚えながらも、体を持ち上げる。
キョロキョロと周りを見回すと、
「……あれ?ナン……君?それに、姉さんと、さーちゃんも?」
自分を囲むように、ナンとカノンとサキが目を閉じて横たわっていた。
意識を失っているのか、ユウの声には誰も反応しない。
そんな三人のことが心配になり、つついて起こそうかと思うも、気持ちよく寝ているのなら起こすのも可哀想かとも思い、考えあぐねはじめたユウ。
そこで、ユウの頭の中に直接声が響く。
(……主様、その人たちは?)
「あ、そういえば説明してなかったね。この人たちはね……」
ユウがライムとランに、三人について説明し始める。
説明し終えた頃、ユウの耳に「んっ……!」と伸びをする声が聞こえた。
声がした方を振り向くと、ボーッと寝ぼけ眼でユウを見るサキがいた。
「おはよう、さーちゃん。」
そんなサキに微笑みながら声をかけるユウ。
「……おはよ、ゆーくん……。……どーん。」
律儀に返事をして、何故か効果音をつけながら、ユウに抱きつくサキ。
抱きついたまま、いつものように頬ずりを始める。
「ちょっ、さーちゃん!?」
サキの行動に、慌てたように手をわたわたさせ、声をあげるユウ。
サキの豊満な胸が押しつぶされて、その柔らかさを感じて赤くなるユウ。
「……あれ?」
そこでようやく意識が覚醒したのか、ぱっちりと目を見開いて至近距離でユウと顔を見合わせるサキ。
「……ゆー……くん?」
ユウが困った顔で頷くとサキの頬が一気に紅潮し、ユウをバッと突き放して悲鳴をあげたのだった。
余談だが、その声で寝ていたナンとカノンが起きたのだった。
「……ちゃうねん。ちゃいますねん。ゆーくん。」
正座して全身からしょんぼりという感じのオーラを出しながら、何故かエセ関西弁で言い訳がましいことを言い始めるサキ。
そんなサキを、かなり冷たい目で睨むユウ。
「いつも、抱き枕を使って寝てるから、それと勘違いしただけですねん。……だから、その目をやめてください。ゆー様。お願いします。」
「……さーちゃん、他の男の人にもこんなことしたりしてないよね?」
ユウが訝しげな声でそう聞くと、サキは首をとれるんじゃないかと思えるほどの勢いで横に振る。
「あんなことゆーくんにしかしないよ!まず、私に男友達なんかいないし……。」
「……あの、さーちゃん。ボクがいえたことじゃないけれど、せめてもう少し男友達を作った方がいいんじゃないの?」
ユウが今度は困ったような声音で言うと、サキはまた首をとれるんじゃないかと思えるほどの勢いで横に振る。
「ぜーったい、いや!私の男友達は、ゆーくんだけでいいもん!」
そう大声で宣言され、ユウは苦笑する。
そこで、疑問をもったナンが隣のカノンに質問する。
「あの二人の関係が、未だに俺、わからないんですけど。付き合ってるんですか……?」
質問されたカノンが、二人に聞こえない声でナンに話す。
「まさか。ユウにはあたしという嫁がいるからね……。」
「えっ!?カノンさんとユウって姉弟でしたよね!?」
「うふふ、禁断の愛よ……。気になるかしら?」
妖艶な雰囲気を纏わせてカノンがそう言うと、ナンは顔を少し赤くしつつ頷く。
ユウがその言葉を聞きつけて慌てて否定する。
「ちょっ!ナン君、騙されないで!?ボクと姉さんは普通の姉弟だから!」
「ゆーくん!さっきのカノンちゃんの話は本当なの!?」
「そんなわけないでしょ!?姉さん!冗談にしては悪質すぎるよ!」
「いつもね、ユウがあたしの体を求めるからね、あたしも仕方なくね……。」
「……ま、マジっすか。……やるな、ユウ。」
「だから違うってばーっ!」
ユウが誤解を解くのにはわりと時間がかかった。