ライムとラン
状況を説明し終えたユウは、ドラゴンに通訳をしてもらいながら、スライムと会話していた。
「……つまり、亜種である君は、周りのスライムから忌み子みたいな感じで虐げられていたってこと?」
そのユウの言葉に応答するスライムの言葉を、ドラゴンが代弁する。
『そうですって言ってるよ。……僕も、仲間外れにされていたから、君の気持ちはよく分かるよ。』
「……そっか。ボクたち、似たもの同士なのかもね。」
そう言って、ユウは苦笑する。
そして、ドラゴンの方を向いて、気になっていたことを聞き始める。
「ドラゴンさん、聞きたいことが沢山あるんだ。」
『分かったよ。僕が答えられる範囲なら、何でも答えよう。』
「まず、この紋章。これは何?」
『それについては、主様もわからない。ただ、ひとつだけ分かるのは、君が僕の主人になったことだけ。君の方で、心当たりはないの?』
「……僕のクラスのせいかも。というか、それしか要因が見当たらないし。」
『ああ、主様のクラスはテイマーだったね。……とりあえず、次の質問にしようか。この質問は、まだわからないことが多すぎる。』
「分かった。じゃあ次。僕の、力って?」
『……明確な理由があるわけじゃない。けれど、君から感じられる何かが、僕達にそう思わせるんだよ。』
「……そう?」
そう言われて、手を開いたり握ったりするユウ。
まあそんなことでわかるわけもなく諦める。
『スライムさんも、気になってたみたい。主様は、分からないでしょ?』
「うん。さっぱり分かんない。……で、とりあえず最後の質問。君の名前を……とか言ってたけど、君たちには名前は無いの?」
『うん。魔物には基本的に名前はないよ。それこそ、ある程度の上位存在にならないと。』
「ふーん……。なるほど……。スライムさんの方は、質問、ある?」
ユウがそう聞くと、ふるふると体を震わせるスライム。
『なんだか、力になりたいって言ってるよ?』
「え?力に?」
『……僕達が助けたことに対して、恩義を感じてるんだって。迷惑じゃなければ、配下にして欲しいって。』
「……うーん。」
スライムの言葉に、少し悩むユウ。
スライムの強さ云々は関係なく、契約のメリットもデメリットもわからない状況で、新しい契約をしてもいいのか悩んでいた。
目の前に出ている、先ほどのドラゴンと同じメニューウィンドウを見つめて、悩みに悩むが、結局押したのは、YESボタンだった。
『ありがとうございます!これから誠心誠意、やらせていただきますので、よろしくお願いします!御主人様!』
そう言って、ぷるるんと、体を震わせるスライム。
「そんなに気張らなくてもいいよ。特に何かしたいわけでもないし、気ままに行こうよ。気ままに。」
そう言って苦笑するユウ。
そこでドラゴンが声を上げる。
『主様、名前、つけてくれない?』
「……自慢じゃないけど、ネーミングセンスに自信はないよ?」
『お願い!適当でもいいから!』
そう言って頼み込むドラゴン。
そんなドラゴンをジッと見つめて、思案し始めるユウ。
「……ラン。ランなんて、どうかな?」
ユウはそう言ってドラゴンに対してほほ笑みかける。
『ラン……。いいね!これからはランと名乗らせてもらうことにするよ!ありがとう!主様!』
元気に声を上げ、ユウの胸に飛びつくドラゴン。
それを苦笑しつつも受け止めるユウ。
すると、スライムがそれを羨ましそうな目で見る。
『……私も、名前欲しいです。』
「え?んー、じゃあ……ライム、なんてどう?」
少し悩んで、決めた名前に、スライムは感動したように目を輝かせる。
『ライム……!ありがとうございます!ご主人様!』
そう言って、ポヨンと跳ねて、ユウの頭に乗るスライム。
ひんやりとした感覚が、ユウの頭を包む。
ほのぼのとした光景が、少し薄暗い洞窟の中に広がっているのだった。




