初契約
現実時刻ではもう夜中なのだが、ゲーム内時間である現在、日は一番高い所にある時間帯で、始まりの森にも明るいひざしが注がれていた。
そんな中、喧嘩を始める2人の女性プレイヤー。
それを宥める1人の男性プレイヤー。
その喧嘩の内容は、こんな感じであった。
「なんで真っ先にフレンド登録したら?って言わなかったの!カノンちゃんはいっつもそうだよね!普段は頭がいいくせにたまーにポンコツになるよね!」
「ポンコツ!?酷い言われようじゃない!雷降らして隕石落とした挙句、カエルを呼び出した巫女には言われたくないわよ!だいたい!ユウの監視役は元々あんたの責任でしょうが!」
「あ、あのー。サキさん、カノンさん。とりあえず今は喧嘩するよりもユウを探した方が……」
「「ナン君は黙ってて!」」
「りょ、了解っす!」
二人の口喧嘩は、かなり長い時間続いたそうだ。
サキとカノンの口喧嘩が始まった頃。
ユウは、始まりの森の中を、ビクビクしながら歩いていた。
始まりの森は、この「アヴァロン・ゲート・オンライン」の中でも、かなり大規模なマップで、迷う初心者プレイヤーが後を絶たないそうだ。
ユウも、その1人であった。
3人とはぐれて15分と少したった頃。
ユウの耳に、聞きなれない音が聞こえた。
プヨンプヨンというスライムが跳ねるような音と共に、ダメージ判定音が聞こえる。
音がする方向を向くと、そこには。
緑色のスライム五体が、ピンク色のスライム一体をボコボコにしている光景があった。
ユウは、最初その光景を見て、疑問を隠せなかった。
(……モンスター同士がなんで戦ってるんだろ?)
近くの茂みに隠れて、スライム達が襲われている光景を見つめて考え込んでいると、不意に初期装備の服の袖を引かれる感触を感じた。
ユウが下を見ると、そこにいたのは……、
「わっ!?うぇっ!?ドラゴ……ン?」
小さな、紫色のドラゴンだった。
思わず声を出し、あわてて口を塞ぐユウ。
幸い、スライムたちはこちらに気づいておらず、ドラゴンにも敵対意思はないと感じられて、ホッと胸をなで下ろす。
「……脅かさないでよぉ……。」
涙目で抗議するも、ドラゴンはそんな事を気にもかけないで、袖を引っ張り続ける。
たまに首をくいっとスライム達へ向けるあたり、助けてやれって言いたいんだろうな……。なんて思いながら、ドラゴンに語りかける。
「……ごめんよ。今のボクには、スライムを倒す力すらないんだよ。」
そう言って、引かれていない方の手で頭を撫でると、ドラゴンが悲しそうな表情をする。
そして、何かを思いついたかのように表情をパッと輝かせ、ドラゴンは目を瞑る。
その光景を眺めていると、ユウの頭の中に少し高めの、どこか幼さを感じさせる声が聞こえ始める。
『……聞こえる?』
「え、え?き、聞こえるよ?」
思わず、声を上げて返事をしてしまうユウ。
『こっち、こっちだよ。僕の方を見て。』
そんな声がまた頭の中で響くと同時に、袖を引かれるユウ。
袖を引かれた方を見るとドラゴンがまた必死に引っ張っていた。
「……もしかして、これ、キミがやってるの?」
そうドラゴンに問いかける。
『そうだよ。僕が君に、念話を飛ばしてるんだよ。……僕のお願い、聞いてくれない?』
首をかしげるドラゴン。
その状況に困惑しつつ、ユウは頷く。
『あのスライムを、助けたいんだ。だから、僕に力を貸して。』
「力を貸してって言っても……。ボク、何も出来ないよ?」
すると、ドラゴンは頭を振る。
『君には、その力があるよ。救えるだけの力が、ちゃんと。』
「……?」
今度はユウが首をかしげる。
『そんなことより、今は、あの子を助けなきゃ。僕の力を、君に貸すから。……使って?』
ドラゴンが、そう念話を送ると同時に、ユウの目の前にメニューウィンドウが出てくる。
そこには、
「ドラゴン(幼竜)が仲間になりたがっています。仲間にしますか? YES or NO」
と書かれていた。
迷いなくYESボタンを押すユウ。
すると、ユウの左手の手の甲に黒い線で紋章が描かれる。
『契約完了だね、主様。僕の名前の決定は後にして、今はスライムたちをなぎ払おう!』
「ちょ、ちょっと待って。状況が飲み込めてないんだけど……」
『そんなのあとにして!今は急いで助けないと!』
そう言ってドラゴンがスライムたちに近づく。
気配を察知したスライムたちは、攻撃をやめてこちらを向く。
つぶらな瞳を細め、睨むようにこちらを見る五体の緑色のスライム。
すると、襲われていたピンク色のスライムがこちらを見上げる。
ユウは、そのピンク色のスライムと目が合う。
その目を見て、ユウは直感した。
「行こう!ドラゴンさん!」
(この目は、助けて欲しい時の目だ!)
そう思いながらドラゴンと走り出す。
「ドラゴンさん、お願い!」
『分かった!幼竜の鉤爪!』
そう叫び、ドラゴンは左手を振り下ろす。
その左手は、一撃でスライム2体のHPを全損させ、2体のスライムは白く淡い光になって消えた。
すると、怒ったように残りの3体のスライムがドラゴンに襲いかかってくる。
「ドラゴンさん!」
『幼竜の咆哮!』
ドラゴンの口から放たれた白い霧のようなブレスによって、残りの三体のスライムのHPもギリギリまで削られる。
スライム達は、恐れをなしたのか逃げていく。
それを追う気もなく、ユウとドラゴンはピンク色のスライムに近づく。
スライムは、怯えたような目でユウとドラゴンを見る。
「大丈夫。ボク達はお前を攻撃したりしないよ。」
そう言いつつ、何か出来ることはないかと自分のスキル欄を見るユウ。
「……あ、これがあった!治癒魔法!」
ユウが言葉を発すると、スライムの方へかざした右手から白く淡い光が出て、徐々にスライムのHPバーが回復していく。
すると、スライムの所々にあった傷が少しずつではあるが消え始める。
「……これでよし、と。」
HPを回復し終えると、スライムが困惑したような目をユウに向ける。
「……えーと、とりあえずお互いに状況を把握しよっか。」
3人、もとい、1人と2匹は、近くにあった洞穴の中に入っていくのであった。
活動報告の方でも報告させて頂きましたが、Twitter、始めました。
一兄@茄子推しで検索していただければ出るので、よければ定期的に見ていただけると嬉しいです。
ユウくんの初契約の相手は、ドラゴンでした。
……テンプレすぎる気もしますが、やっぱり、従魔といえば、ドラゴンですよね!




