表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/20

3

朝起きても桜子幼児バージョンだった。


 どうやら今の状況が現実であると認めなければいけないみたい。

辛い。



 ため息をつきつつ、ベッドを抜け出して顔を洗い、着替えようとクローゼットを開けるとそこには沢山の洋服が。


 うっわー!うっわー!懐かしい!


 思わず歓声を上げる。



 何せ、高校三年だった旧桜子の記憶が新しいものだから、小さい頃に着てた服なんてもう思い出の彼方だったんだよね。

 あ、この白いスカート家族で軽井沢に行った時に着てたのだ!

 こっちの紺色のワンピースお気に入りだったんだよ。身体が大きくなって着れなくなった時悲しすぎて泣いたもん。

 そうそう、そしたらお母様が良く似たワンピースをオーダーメイドで購入してくれたんだっけ。

 あ、この帽子は風で飛ばされて庭の木に引っかかっちゃって泣いてたら、春兄様がとってくれたんだっけ。あの時は10歳くらいでまだ仲悪くなかったもの。


 京極会長ずくしですっかり忘れてたけど、やっぱり思い出の物を見ると色々と思い出してくる。

 こういうことが起こるからやっぱり私が旧桜子だったのは現実みたい。




 コンコン、と扉がノックされた。


 「はい。」


 返事をすればひょっこりと顔を出したのは春兄様。

 ちょうど思い出してたとこだったから思わず帽子を手にとって春兄様に見せる。



 「春兄様、これご覧になって。昔、」


 ……ってあれ?

 あのハプニングってもう起こってるのかな?それとも今より未来?

 なんせ自分の今の正確な年齢が分からないのだから、知りようがない。

 春兄様に聞いてみてもしまだ起こってなかったら今度こそ確実に病院だ。

やばい。


 私を見ている春兄様に、曖昧にヘラっと笑う。

 その間に帽子はクローゼットへ逆戻り。



 「な、なんでもないです。勘違いでしたわ。」


 春兄様は困惑した表情だ。

 あれ、なんかバレた?




 「桜子、」

 「は、春兄様ど、うかなさったのですか?」


 動揺で声が揺れる。

 私誤魔化すの下手過ぎ!

 ツカツカと、春兄様が私に近づいた。思わずのけぞる。なになに。



 「桜子、」


 ガシッと肩を掴まれた。


 「昨日から何でそんなに他人行儀に話すの?本当に病院行かなくて平気?」



 …………。


 あ、そっちか。

 思わずホッとしてしまう。



 あ、でも病院は勘弁願いたい。普通にしないと。普通に。

でもあれ、この年頃の時私どんな話し方してたっけ?

……覚えてない。覚えてるわけない!

アニメにも出てこないし、話し方の記憶なんて京極会長と話す時の、「〜ですわ」、とか、

あのアニメの決め台詞「(ワタクシ)を誰だと思ってますの?星野宮家長女、星野宮桜子ですのよ!」とかしかない。

でも今これを言うわけにはいかないし〜



仕方ない。私は腹を括った。




「だ、大丈夫よ、春兄さま。」

「でも…」

「春兄さま、(ワタクシ)だっていつまでも子どもじゃないわ。話しかただってれでぃーらしくしますの。」


 肩を掴んでいる春兄様の手を若干無理矢理外す。

 ピシッと背筋を伸ばして立った。



 「春兄さま、これから桜子は立派なれでぃーになるため頑張るって決めたのです。ですからちょっと変でも大目に見てくださいな。」


 妹の奇天烈な言動に、春兄様は目を大きく見開き固まっている。

とても綺麗なお顔をしている春兄様は、そういう表情でも綺麗なまま。

なんて羨ましい。



 「…そっか。分かった、応援してるね。」

 「ありがとうございます。もうそろそろ朝食ですよね?(ワタクシ)着替えますわ。」

 「うん、先行ってるからゆっくり来なね。」



 春兄様は少し遠い目をしながらも優しく笑うと、私の頭を撫でて出て行った。

 ふぅ。何とか誤魔化せた?

 ちょっと春兄様眉が寄ってたから怪しまれてたかな?

 とはいえこれ以上何もできることはないし、それよりも朝ごはんたーべよっ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ