表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

2

とりあえず冷静になることにした。


うん、慌ててたら分かるものも見落としちゃうかもだし、なにより、今の私の状

況は慌てて良くなるわけでもなさそうだ。




 寝かしつけられたベットの上で身を起こす。

ベッド脇の小さな棚の上にある、可愛い白ウサギのぬいぐるみと目が合った。

あ、これ春兄様が前にプレゼントしてくれたやつだ。大人しく寝てなくてごめんなさい春兄様。

 私はベッドからそろっと抜け出し、部屋の隅にある勉強机に座った。

 適当なノートを取り出し鉛筆を持つ。私はそんなに頭が良くないから、紙に書き出さないと上手く整理できないタイプだ。少なくとも西野美優は。



まず、記憶ついて。



 平凡な西野美優の記憶がある。

 物心つくころから高校二年生くらいまで。お父さんとお母さん、お兄ちゃんと妹も憶えてる。

さらにその時ハマっていたアニメ、『きみ☆ラブ』についてもバッチリ。

乙女ゲーム化されたのを購入して途中までプレイした。もちろん一番最初に狙った攻略キャラは京極会長だった。



 そして、これはすごーく認めたくないけど、星野宮桜子の記憶もある。これはちょっと不完全。小さい頃〜殺された高校三年までの記憶があるんだけど、所々曖昧。

 正直大半が京極会長とのことばかり。

 桜子、京極会長のこと大好き過ぎでしょう。



 つまり私は、

 西野美優の17年間の記憶+星野宮桜子の18年間の記憶(ほぼ京極会長)があるわけだ。

 そして順番的には、西野美優→星野宮桜子。


 これはつまり、

 西野美優が生まれ変わって星野宮桜子になったってこと?

 ま、まぁ、百歩譲って、生まれ変わるってこと自体はまだいいとする。

譲れないけど、いいとする。



だけれど、だ。


星野宮桜子っていうのは、西野美優にとってアニメのキャラ。

いやいやいや

あり得ないでしょう。二次元だよ?

これはあれかな。西野美優が見てる夢かな。

大好きなアニメの登場人物に夢の中でなりきっちゃってる的な?

なぜよりにもよって悪役令嬢なの、とは思うけど。



だがしかしここで問題が発生する。


私の意識的に、私イコール誰か、という話になると、かなりややこしいことになっているのだ。

まぁ、私=西野美優、というのは違和感がないのは当たり前なんだけど、なんと、私は星野宮桜子だ、という認識もあるのだ。




……私って二次元を現実だと思い込んじゃう痛い子だったの?

だけどあんまりにも意識も記憶も鮮明すぎる。

西野美優も星野宮桜子も。


そして今、私の姿は星野宮桜子で、しかも幼児。

単純に、時系列で考えるなら、西野美優が死んで星野宮桜子に生まれ変わったけ

ど殺されて、何故か幼児に逆戻り?


ちょっと人生が波乱万丈過ぎやしませんか。





ここまでノートに書いてボンヤリと眺めた。

上手く記憶を整理したとしても、西野美優に戻れる気がしない。

だとしたら、割り切って二度目の星野宮桜子の人生を生きるべきなのか。


一回目の桜子の人生をつらつら思い浮かべてみる。



…………。



うん、ろくな生き方してないよね。

我ながら愚かすぎて可哀想になるくらいだ。

恋に生きるってのもよいけどさ、一回目の……旧桜子の場合はそれに異常に執着し過ぎてる。

過ぎたるは及ばざるが如し。

何事もほどほどじゃないと!


とはいえ、恋に狂った先が殺害なんてちょっと酷くない?

アニメでは最後の断罪のシーンを最後に、その後の桜子については書かれてなかった。

でも、没落したとはいえ、その後一切登場しないことを考えると、アニメでも元々

殺される設定だったのかもしれない。


いくら悪役とはいえ、自分を好きだった女性が殺されたのに、京極会長はよく平然とヒロインとハッピーエンドを迎えられたよね。

ヒロインもいくら自分を苛めてたとはいえ、以下同文。




私は書いたノートのページを破って、勉強机の引き出しの中の、漢和辞典の中に挟んだ。


ここなら見つかるまい。


と、同時にため息が出る。

なんやかんやで取り敢えず生きていることは素晴らしいけれど、三回目?の人生、

刺されて死ぬ最期だけは勘弁だ。

だって、ものすっごーく、痛かったもの。

どうにかして生き残る道を探らないと。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ