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ユニットバスから出たら、そこは異世界でした。  作者: 真弓りの


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8/14

一日の疲れを癒すのは

どんなにこだわった可愛い物で溢れた空間だとしても、蛇とかぶら下がってちゃ台無しだよ…。


乾いた笑いを漏らしながら、お風呂に入る。


シャンプー、リンス、洗顔を終え、体もいつもより念入りに洗った。絶対に会社に通って普通に生活してたより、普通に汗かいたし嫌な汗もかいたからね。


湯船にゆったりと体を沈め、どれにしようか…と入浴剤の前でちょっと悩む。


今日は私、すっごく頑張ったから特別な入浴剤にしようかなぁ。


薔薇の形の可愛らしい入浴剤を選んで湯船に浮かべ、花びらがほころんでお湯に溶けていくのを楽しんだ後、水に浮かぶアロマキャンドルに火をつける。


残念ながら電気が消せないから雰囲気だけだけど、ゆらゆらと揺らめく炎とじんわりと肌を温めてくれるぬるめのお湯に、それでも充分に心が癒されていくのを感じた。


ローズの芳醇な香りに包まれながら、つらつらと今日一日の事を思い返していたら、何故か突然涙が溢れてくる。


重たい荷物を背負って何があるか、何がいるかわからない鬱蒼とした森に挑んだ。こんなに歩いたの久しぶりだし、そもそもスリッパなんていう、長距離移動に全然向いていない履物で…よく頑張ったよ、私。


しかもやっと愛するユニットバスに戻ってきたと思ったら、あの蛇もどき騒動だし。



こんな状況の中で、お風呂にゆっくり入れるなんて、それだけは本当に恵まれている。


今だけは、ここだけは、絶対に安全なんだという安心感。一方で、なんでこんな目にあっているのかという割り切れない思い。純粋な恐怖を味わった事による疲れ。


色んなものがない交ぜになって、なんだか自分でもよく分からないけど、涙が次から次に溢れてきて止まらない。


泣いているうちに、どんどん不安だけが増大していく。


もう元の世界に帰れないかもしれない。こんなに大変な目に遭っているというのに、きっと誰も気付いていないだろう。


だって、一人暮らしだったし。

家族とは大型連休で帰省する以外は月に一度程度、電話で話すくらいだし。時の流れが同じなら、今日は土曜だから、少なくとも会社の同僚にだって月曜にならないと異変にすら気付いてもらえない。


親友のハルにも、ちょっといいなって思ってた有田君にも、もう会えないのかな…。


何をどうやれば元の世界に帰れるのか見当もつかないこの状況が、温かい湯船の中で急に現実感を持って私を苛んだ。


泣いて、泣いて…。


お風呂からあがったのはなんと2時間も経ってからの事だった。


ぬる風呂の半身浴で2時間。

風邪をひいても薬もないのに、私ってバカだな。

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