森から帰ってきてみれば
危険そうな獣に会わなかった事に感謝しつつ、蛍光ピンクの線をドキドキしながら辿って戻っていくと……ユニットバス、あったーーーーーー!!!
良かった!
本当に良かった!!!!
知らず知らず猛ダッシュで扉に駆け寄る。一刻も早く扉の中に入ってしまいたかったからだ。
「ただいまぁ!!!」
勢い良く扉を開けた私は、一瞬固まった後…そっと扉を閉める。もちろん歯止めのシャンプーボトルのせいで完全には閉まらないけど、私には現状を把握するための時間が必要だと思う。
歯止めのシャンプーボトルで空いた隙間から、そっと中を覗き込む。
……やっぱり、いるよねぇ……。
この隙間から入り込んだのか、ユニットバスの中に蛇っぽい何かがいる。結構デカい…直径は3~4cmくらいだと思うけど、長さは1mくらいあるかも。しかもヤツは既に臨戦態勢でこちらを睨みつけつつ、飛びかかる隙を窺っているという、最悪の状況だ。
何とか穏便に、外に出て行ってはくれないだろうか。
彼がお外に出るのに邪魔なシャンプーボトルを除けたら、出て行ってくれる…かも?一縷の望みをかけてシャンプーボトルを除けてみた。
その瞬間。
飛びかかって来た!!!
「ひえぇえええぇぇ!!!?」
咄嗟に全力で扉を閉めた。
ひょええ!危ないっ!頭だけ扉から出てきてるぅ!もうちょっとだけ閉めるのが遅かったら完全にアウトだった!
扉の向こうで蛇っぽい体が猛烈に暴れているのが、激しい振動と音で伝わってくる。
怖い!
気が付けば、扉に全体重をかけていた。扉が閉まってしまう恐怖より、今現在襲われている恐怖が優ってしまったらしい。
どれくらいの時間がたったのか混乱していてわからないけど、いつの間にか蛇っぽいのが大人しくなっていた。
扉を抑えたまま、落としてしまっていた突っ張り棒を拾って蛇っぽいのの頭をつついてみる。
……動かない。
力を緩めると、蛇っぽいのは力なく床に落ちた。慌てて突っ張り棒で蛇っぽいのをユニットバスから放り出し、番人がいなくなったユニットバスに漸く帰還する事が出来た。
扉を閉めて、へたり込む。
しばらく放心していたんだと思うけど、キュルゥ~~~…という、なんとも物悲しい音で我に返った。
余りの事に忘れてたけど、そういえばゆうべから固形物は何も食べていない。とりあえず、採取して来たものを食べるか…。




