海を目指して
手を合わせて真剣に祈ってから川下へ向かう。川の終わりが見えてきたのは、ちょうど太陽が一番高くなる頃だった。
…て事は、あまり長居をするわけにはいかない。これから増える荷物を背負って、帰りつくまでにまた同じだけの距離を歩かなきゃいけないんだから。
時間が惜しい私は、この世界で初めて見る海への感動もそこそこに、早速川で使ったのと同じ罠をしかけた。
海と川の間にしかけてみたけど、これでいいのかははっきり言って分からない。何となく、海・川、両方の魚とかが漁れるんじゃないかと思っただけで根拠はないんだよね…。
お次は岩場の探索だ。
岩場は……お宝が満載だった!!
海苔っぽいのも生えてたし、カニっぽいのも巻き貝っぽいのも沢山いる!
人の気配がないこの海辺は手付かずの大自然で、私程度では取り切れないほどの食料(予定)があった。
潮溜まりを覗いたら、小さな魚やエビっぽいのもいたし、浜辺を少し掘るだけで大振りのアサリっぽい貝もふんだんに獲れた。
しかけていた罠にも魚やカニっぽいのがかかっていて、気がつけば今日だけで、保存さえできれば5日ほど暮らせそうな位の量が獲れていた。
…なんかもう、ここで暮らしていけるかも知れない…。
思わぬ大漁に、私は少し浮かれすぎていたんだろう。
帰るのがすっかり遅くなってしまった。薄暗くなって途端に私の歩みは遅くなる。
道しるべの入浴剤、蛍光オレンジのラインがかなり見え辛くなって、目をこらさないと見えなくなってきたからだ。
……ヤバい……!
気は急くのに、距離が稼げない。大漁過ぎた獲物に加え、塩を作るために汲んできた塩水がただただ重い。
やっぱり欲張り過ぎたかなぁ…。
反省しながら必死で歩いてはいるものの、私の今の動きは明らかに挙動不審だと思う。
だって、ザワザワした木の葉のざわめきが、何かが後ろにいるみたいに聞こえるんだもん。確かめずにはいられないよ…!
歩く速度が落ちるのが分かっちゃいるものの、後ろを振り返り振り帰り進んでいく。
そして。
木々のざわめきの中に、私はついに獣の唸り声を聞いた。
ヒュッ…と、自分の喉から音が聞こえる。息を呑んだ音なのか、自分でも分からない。
ただ、生命の危機を全身で感じていた。
どうしよう…
どうしよう…
どうしたら…
確実に何か獣が近くにいる。
走り出したくなる気持ちを抑え、私は必死で考えを巡らせた。